私のバンフ・ジャスパー旅小ネタ集

バンフ・ジャスパー旅小ネタ集
引地 孝典(トロント日本国総領事館)

ジャスパーダウンタウン付近の現在の森林の様子

今夏に、かねてから行きたいと思っていたバンフとジャスパーに行ってきました。最初はトロントからVia Railでバンクーバーまで行き、その後バンフとジャスパーに行くというカナダをほぼ1.5往復するくらいの大移動になりましたが、記憶に残るとてもいい思い出になりました。

今回は、バンフとジャスパーを訪れた際にガイドさんから、「へぇ」と脳の形をしたボタンを押したくなるような小ネタをいくつかお聞きしたので、ご紹介したいと思います。

聞きかじりの小ネタ集にはなりますが、ご覧ください。

◆自らを燃やして子孫を残す木

バンフやジャスパーの森林は、主にロッジポールパイン(ロッジのポールによく使われていたことから命名)という陽樹とスプルースという陰樹が大層を占めています。このうち、ロッジポールパインの寿命は約200年と樹木の中では比較的短命であり、今バンフやジャスパーに生えている木々はまもなく寿命を迎えるものが多く、世代交代が必要とのことでした。

ではどのようにして世代交代するのでしょうか?ロッジポールパインには燃えやすい松ヤニが含まれており、木々が風などでこすれ合った際に着火して自ら山火事を起こすことで世代交代を促すようです。ロッジポールパインは、気温が50℃以上で樹脂が溶けて松かさが開く山火事用の松ぼっくりを兼ね備えており、山火事の時には火災の上昇気流に乗って種が上空へ舞い上がり、火事が落ち着いた頃に着地して発芽します。

陽樹であるロッジポールパインの成長には日光が不可欠で、まさに山火事後の焼け野原は日光を遮るものがなく彼らにとっては整った環境という訳です。自ら火事を起こして子孫を残すその大胆な戦略に驚きました。

◆実はバスロマンの色は…

8月上旬のペイト・レイク

バスロマンと言えば青みがかった入浴剤で有名ですが、その色のモデルとなったのがペイト・レイクの色だったという話があるようです。当時のアース製薬の社長がカナダを旅行した際にペイト・レイクを訪れ、その美しいエメラルドグリーンの水面に着想を得て今のバスロマンが出来たそうです。

ペイト・レイクのような氷河湖はロックフラワー(氷河が動く際に削り出される岩の粉)の含有量によって色が変化し、氷河が溶け出す6月から9月にかけて真っ青なスカイブルーから幻想的なエメラルドグリーンに変化していきます。社長が春や冬に訪れていたら、今のバスロマンは無かったかも…?

◆もしもカナダで野生の熊に出会ったら

ジャスパーのマスコットベア

日本では、野生の熊と遭遇した際には背中を見せないでゆっくりと離れる対処法が一般的ですが、カナダ政府が案内する対処法が秀逸でした。ご存じのとおりカナダにはグリズリーとブラックベアの二種類が生息しており、基本的な対処法は日本のそれと同じですが、攻撃されたときの対処法が異なります。なんと「死んだふり」をするとのこと!その後、熊が離れるまでじっと耐え忍びます。それでも熊が攻撃をやめない場合は、近くにある木や石を使って反撃し、熊の顔と鼻に蹴りと打撃を集中させて撃退するようです。

バンフとジャスパーには鮭が遡上して来られず、そこに生息する熊たちは主にタンポポやベリーを食べて暮らしていて慢性的な栄養失調状態のようで(ちょっとかわいそう…)、日本の熊より相対的に小さいようですが、ガイドさん曰く、ブラックベアについては大型犬くらいのサイズらしいので、ギリ勝てるとのことでした。一方で、グリズリーはさすがに難しいとのこと…。まずは、熊鈴をつけて出会わないようにしたいですね。ちなみにバンフとジャスパーでは、6月から7月にかけて熊の出現率が高めとのことです。

◆アメリカ大統領の名前が付いた山

キャッスル・マウンテン

カナディアン・ロッキーを代表する山の一つである「キャッスル・マウンテン」。一時期は、アメリカ大統領であったアイゼンハワーの名前をとって「アイゼンハワー・マウンテン」と呼ばれていた時期がありました。これは、第二次世界大戦で功績を残したアイゼンハワーが終戦後にカナダを訪れたことを記念して名付けられました。

しかし、アイゼンハワーの名前をつけるための式典が開かれた時に、主役のアイゼンハワーは大好きなゴルフに興じおり式典に参加しなかったため、その後、地元住民の強い要望のもとキャッスル・マウンテンの名前に戻ったようです。よほどカナダのゴルフコースが気に入ったのでしょうか。なお、今でも山頂は「アイゼンハワーピーク」と呼ばれその名残があるようです。

ちなみに、キャッスル・マウンテンは見る角度によってその形が変わり目印にすると迷子になってしまうことから、先住民からは「迷子の山」と呼ばれているそうです。