新代表者紹介インタビュー Honda Canada Inc. 深見香織氏

Honda Canada Inc.
Vice President  深見香織氏

honda vp

Honda Canada Inc.の深見香織氏へインタビューをしました。1969年設立以来、自動車・二輪車・パワープロダクツの販売を展開し、品質評価の高いCR-VやCivicを生産する同社。全国200以上のディーラー網やオンライン対応、認定中古車プログラムで多様な顧客ニーズに応え、EV関連の生産体制強化や地域貢献活動にも積極的に取り組んでいます。CR-Vは今年10月に生誕30年を迎えました。学生時代はスポーツや武道に励み、バイク好きが高じてホンダへ入社した深見氏は、購買部門で多様な経験を積み、国内外の製造業に触れる中、2024年にカナダへ着任しました。また、今期商工会理事としてご活躍いただいています。

御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。
Honda Canada Inc.は、1969年に自動車・二輪車・パワープロダクツの販売を開始し、1986年にはオンタリオ州アリストンに製造工場を開設しました。現在は、営業やサービスを担うマーカムの拠点に約500名、アリストンの製造工場に約4,200名の従業員が勤務し、製造・販売・サービスが力を合わせ、カナダや北米のお客様に「自由な移動の喜び」をお届けできるよう挑戦を続けています。

アリストン工場では、CivicとCR-Vを生産し、年間約42万台の生産能力を備えています。今年、初代モデル発売から30周年を迎えたCR-Vを生産する第2工場は、外部の品質調査でも特に高い評価を受けており、安定した品質を維持しています。部品や関連産業を含めると、3万以上の雇用を支え、地域経済にも貢献しています。

販売・サービス面では、全国に200以上のディーラー網を展開し、地域に根ざしたサービスを提供しています。さらにオンライン対応を強化し、認定中古車プログラムや柔軟なローンやリースプランを通じて、お客様の多様なニーズに応えています。

将来に向けては、Hondaはカナダでの電動化に向けた取り組みを進めています。EV関連の生産体制強化を検討しており、完成車、バッテリー、部品の製造を含むバリューチェーン構築に向けた計画をオンタリオ州を中心に段階的に進めています。
また、Honda Canada Foundationを通じて、年間約200万カナダドルを地域の慈善団体に寄付するなど、医療、教育、環境など幅広い分野で社会貢献活動を積極的に行っています。

CRV生誕30年の節目に立ち会われて、どのようなお気持ちでしょうか?
CR-Vの生誕30年という大きな節目に立ち会うことができ、大変光栄に感じています。まず何よりも、この30年間、CR-Vを選び、日々の生活の頼れる相棒として育ててくださったお客さまに、心より感謝申し上げます。皆さまのご期待とご愛顧が、私たちのものづくりを前に進める力であり、CR-Vの価値を磨き続ける原動力でした。

一方で、品質に対する責任感はこれまで以上に強く抱いております。30年間、お客さまに支えていただいたことに加え、品質こそが信頼の礎であるという思いを改めて胸に刻み、気を引き締めて取り組んでまいります。これからも、安全・安心、且つ操る喜びが得られる価値を磨き上げ、期待を超える体験をお届けできるよう、不断の改善を続けていきたいと思っています。

今後特に力をいれていきたいことについて、お聞かせください。
オールホンダの力を結集し、日々の業務に真摯に取り組んでいます。「移動」と「暮らし」の進化を通じて、世界中の皆様に新たな価値を届けることを目指し、ここカナダでも、皆様の生活を支える存在となれるよう努めていきたいと思っております。

特筆すべきニュースはありますか。
CR-VとCivicは、オンタリオ州アリストンにある工場で生産されています。カナダの街を走る多くのCR-VやCivicは、ここカナダで生まれたクルマです。HondaブランドではCR-VのTrail Sport Hybridが新たに登場しました。Acuraブランドでは、今年新型モデル<ADX>をリリースし、革新と洗練を追求した一台として、注目いただいております。

2026 Honda CR-V TrailSport
2026 Honda CR-V TrailSport
2025 Acura ADX A-Spec 2
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2025 Honda Gold Wing Tour 50th Anniversary
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TRX

また、二輪事業では子どもから大人まで楽しめる幅広いラインアップを展開、パワープロダクツ事業では、除雪機や発電機など、暮らしを支える製品を提供しています。
2025年のCanadian Superbike Championship (CSBK)では、ホンダが11年ぶりの年間チャンピオンに輝きました。

ご出身とご経歴について、お聞かせください。
私は大学卒業まで大阪府高槻市で育ちました。中学ではバスケットボール部、高校ではハンドボール部に所属し、球技を中心に活動していました。大学では「一人の力でどこまでできるか挑戦したい」という思いから、古武道部に入部し、特に居合と鎖術に力を入れ、武道に励んでいました。

ホンダに入社した理由はバイクに携わる仕事がしたかったからです。本当にバイクが好きで、大学4年生の時には、大阪から四国・九州・中国地方を一周するツーリングを敢行しました。ツーリング中に出会った方々との交流は旅の後も続き、非常に貴重な経験となりました。就職活動では特に二輪車を生産している企業を中心に就職活動を行っていました。

電機メーカーに勤めていた父が、テレビの部品を調達する購買の仕事をしており、ドイツや中国など海外出張に出かける姿に憧れを抱いていたことも、購買という仕事に興味を持ったきっかけです。「来年から一緒に働きませんか?」という内定の電話をいただいた時の喜びは、今でも鮮明に記憶しています。

入社後は、四輪事業・二輪事業・パワープロダクツ事業と、ホンダの多様な領域で購買業務に携わってきました。また、日本ではお取引先に出向させていただき、出向先の購買部門が取引している企業にも訪問する機会をいただきました。その経験を通じて、日本の製造業が国内外の製品を支えているという事実を肌で感じることができ、非常に貴重な学びとなりました。

1999年の入社以来、2024年3月まで購買部門に所属しておりましたが、カナダへの赴任を機に営業部門へ異動となりました。現在は営業業務を中心に、関係部門やディーラーの皆様と連携しながら、カナダ市場における販売活動に日々取り組んでおります。

バイクに魅了されたきっかけは何ですか?
高校時代から、いつの間にか「自分はバイクに乗るものだ」と自然に思うようになりました。気軽に乗れて、風を肌で感じながら移動できる心地よさがまず魅力でした。さらに、バイクは自分の操作に瞬時に応えてくれ、思いどおりに動く――その“操る楽しさ”に惹かれました。どこへでも行ける機動力と自由さ、そして車とは異なる独自の楽しみ方があることも、私がバイクに魅了された大きな理由です。

カナダ駐在前のご経験についてお聞かせください。
カナダ赴任前には、アメリカのオハイオ州に駐在していた経験があります。当時、私は購買部門に所属しており、日本で新潟県中越沖地震が発生した時期でした。被災されたお取引先の負担を少しでも軽減するため、日本国内では支援活動が始まり、急遽アメリカから製品を送る対応を決定しました。協力メーカーや関係部門との緊密な連携により、地震発生当日に北米から製品を出荷することができたことは、私にとっても大きな転機となりました。

また、近年ではコロナ禍における半導体不足も私の仕事に対する考え方に大きな変化を与えるきっかけになりました。徹夜が続く日々の中で、自動車メーカーとしてのサプライチェーンの在り方を根本から見直す必要があると痛感しました。特に、半導体の供給不足を改善するための活動は、会社全体が一丸となって取り組んだものであり、生産工程が複雑な半導体に対して生産性を高める取り組みを通じて、さまざまな知識と経験を得ることができました。

このような活動を計画通りに達成できた背景には、グローバルホンダのチームプレーがあり、その根幹には、オハイオ駐在時代に培った経験が活かされていたと、今でも強く感じています。

お仕事を進める上で大切にしていることは何ですか。
今年で入社26年になりますが、仕事をする中ではさまざまな局面に直面することがあります。そんな時、私は「今の自分の行動や判断が、お客様にとって本当に価値あるものにつながっているか?」という視点を大切にしています。一見当たり前のように思えることですが、実際には意識し続けるのが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。時には部門ごとの調整や、周囲との足並みを揃えることが求められる場面もあります。そうした中で、お客様からの信頼が損なわれることのないようにすることこそが、ホンダのフィロソフィーだと私は考えています。

もちろん、各部門がそれぞれ「お客様にとって価値がある」と信じて議論しているからこそ、意見の違いが生まれるのだと思います。ホンダの文化である「ワイガヤ」(色々な意見を否定するのではなく、色々な思いとしてざっくばらんに話し合う)を通じて、お互いの考えを納得いくまで話し合うことがとても重要です。その積み重ねが、より良い製品やサービスにつながっていくと信じています。

mountain in winter
冬のトレイル「晴れていると青空と白い雪のコントラストが綺麗」

ご趣味や休日の過ごし方などについてお聞かせください。
趣味は山登り、旅行、そして音楽です。日本にいる頃から自然が大好きで、近くの山に登ることが日常でした。特に福島県の一切経山や安達太良連峰からの景色が大好きで、何度も足を運びました。カナダに来てからもその趣味は変わらず、春夏秋冬、土曜日には仲間と一緒にトレイルを楽しんでいます。

オンタリオには標高の高い山は少ないですが、美しい湖や豊かな森がたくさんあります。ムース、ビーバー、狼、ブルージェイズなど、まさに「カナダらしい」動物たちに遭遇することもできました。カナダは水が豊富で、自然の力が人の暮らしに深く関わっていることを実感できる場所です。この自然は、次の世代へと受け継いでいくべき大切なものだと、日々感じています。

カナダに来てから、長年憧れていたアイスランドを訪れる事もできました。トロントから約5時間のフライトで到着した地は、まるで別世界。本当に短い滞在だったのですが、自然の力強さと静けさが共存する風景は、人生で忘れられない体験となりました。火山の国でありながら水が豊かで、短い夏には花が咲き誇り緑が広がり、そして一年のほとんどは雪に覆われる。その神秘的なコントラストに強く惹かれました。

アイスランド
2025年6月に訪れたアイスランド

音楽はジャンルを問わず幅広く楽しんでいます。トロントではコンサートやミュージカルに触れる機会も多く、良い気分転換になっています。幼少期からピアノを習っていたので、日本ではよく弾いていましたが、こちらでもまた始めたいと思っています。

商工会会員へのメッセージをお願いいたします。
営業業務を中心にディーラーの皆様や関連部門と連携しながら、カナダ市場での販売活動に取り組んでおります。週末には仲間とトレイルを歩き、豊かな自然に触れる時間を大切にしています。

この地で得られる気づきや人とのつながりを、日々の業務にも活かしながら、商工会の活動を通じてカナダ社会への貢献につなげていければと考えていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。