新代表者紹介インタビュー Mizuho Bank Ltd., Canada Branch 阪本晃一氏

Mizuho Bank Ltd., Canada Branch
Managing Director & Country Head 阪本晃一 氏

今回はみずほ銀行カナダ支店長、 阪本晃一氏へお話を伺って参りました。

日本・アジアの強みを活かし北米市場での存在感を拡大、現地チームと米国拠点、グループ会社が連携して総合金融サービスを提供します。M&A分野ではGreenhill社買収で専門性を増強、日系・非日系企業の成長支援を強化し、さらなるビジネス機会を広げています。ニューヨークやシンガポールなど、海外での豊富な経験をお持ちの阪本氏。趣味はロードバイクやランニングで、週末には長距離サイクリングやランニングイベントにも積極的に参加されています。そのアクティブなライフスタイルは、日々の業務もエネルギッシュに取り組まれる姿勢へとつながっています。2024年5月にカナダ支店に着任されました。

-御行の事業内容のご紹介をお願いいたします。

当行は、1982年に当地カナダで銀行業務を開始して以来、40年以上に亘って企業顧客向けのビジネスを行っています。もともとは日系企業とのビジネスから始まりましたが、近年は非日系のカナダ企業との関係も大きく広がり、現在はトロントとカルガリーの2オフィスにて、日本でお取引のある日系企業とそのグループ会社、非日系企業では幅広いセクターのカナダ地場トップ企業やグローバル企業とお取引させていただいています。

さらに、みずほ銀行カナダ支店としての銀行業務に加え、グループ内にあるみずほセキュリティーズカナダなどとも連携し、銀行商品にとどまらず証券商品も含めた幅広いサービスを「みずほフィナンシャルグループ」として提供しています。

-御行の強みについて、お聞かせください。

我々みずほカナダの強みは、Mizuho Americasと一体となった強力なフィナンシャルプロダクツとソリューション提供力、各事業セクターを担当するトップバンカー達の専門的知見、日本とカナダ両国に亘る強固な顧客ネットワーク、そしてクロスボーダーの連携体制です。

特にこの10年、伝統的な商業銀行業務に加えて、投資銀行業務、いわゆるインベストメントバンキング業務の強化を図ってきていて、Mizuho Americasやそのグループ会社みずほセキュリティーズカナダ、米国みずほ証券、2023年12月にみずほグループに加わったGreenhillなどと連携しながら、お客様により幅広い金融ソリューションを提供することで、マーケットにおける我々みずほのポジションを大きく引き上げることに成功しました。

私自身が十数年前にニューヨークにいた頃にはみずほのカナダにおけるプレゼンスはまだそこまでの位置にはありませんでしたが、米国とカナダが一体となって優秀な人材の採用も含めて投資銀行業務の強化に注力してきた結果、現在の地位を築くことができたと感じています。

-今後特に力を入れて行きたいこと、目標や展望についてお聞かせください。

日本やアジアに強みを持つ銀行として成長してきましたが、現在はその基盤を生かしながらカナダでの存在感を高めているところです。私自身、シンガポールで4年間勤務した後にカナダへ赴任してきました。その経験からも、私自身の使命は、カナダ支店長としてカナダでのみずほのビジネスを牽引することに加えて、日本やアジアとカナダとの架け橋となって、お客様に新たなビジネス機会をご紹介したり、地域をまたぐ取り組みを支援していくことを通じて、より大きな価値を提供していくことだと考えています。

-特筆すべきニュースはございますか。

Mizuho Americasは2023年12月にM&A分野に特化したファームであるGreenhill社を買収し、それ以来、約一年半をかけてインテグレーション(統合)を進めてきました。カナダでも強力なチームが加わり、日系・カナダ系の両方のお客様に対してM&A関連のサービスをより広く提供できるようになりました。

最近では、カナダ企業によるアメリカでの大規模買収ファイナンス案件をGreenhillと連携してリードするなど、ビジネスを急速に拡大しています。これにより、当行のプロダクトラインナップが充実し、大きな強みとなっています。

-最近オフィスを移転されたそうですが、今回の買収が新オフィスへ移転されたきっかけですか?

私どもの旧トロントオフィスは30年以上に亘り長く使ってきた愛着のあるものでしたが、伝統的な銀行業務から投資銀行業務へとビジネスの軸足が移っていく中で、投資銀行業務に適した働き方ができるオフィス環境が重要となり、また若手社員も増える中で、優秀な人材を採用・リテインしていく観点からも、新しいオフィスへの移転を決断しました。また、ちょうど同じ時期にGreenhill社の合流が決まったため、両社が同じ場所に集まり、一体的な運営ができるよう新オフィスでの活動を2025年6月よりスタートしました。

-新たなスタートですね。ここから阪本さんご自身についてお伺いしたいと思います。ご出身、ご経歴についてお聞かせください。

東京出身です。90年代後半に銀行に入社してからの最初の10年間は、日本国内の大企業を担当する営業に従事しました。銀行業界に入ったのも日本の大企業のお客様向けの営業業務を希望してのことでしたので、この10年間はとても充実した幸せな時間だったと思います。

その後節目となる入社10年目を迎えたとき、「次の10年は非連続的にキャリアの幅を広げたい」という思いが芽生え、社内制度を利用して米国ロースクールへの留学の機会を得ることができました。30代半ばでの留学は、海外出張すら未経験、英語もほとんど使ったことがない状態での挑戦でしたが、この経験によって、自分のキャリアを大きく広げるきっかけになったと感じています。

留学期間は2008年から2010年で、ちょうどリーマン・ショックとも呼ばれる世界的な金融危機の真っただ中でした。我々みずほグループも含めて世界中の大手金融機関が大きな痛みを経験した時期でしたが、まさにこのタイミングで、当時のオバマ政権の新金融規制導入プロジェクトに参画していた教授から米国の銀行法や新たな金融規制の動向を直接学ぶことができたことは幸運でした。

留学後はニューヨークオフィスに配属されることになり、ロースクールで学んだ知識も活かしながら、現地金融当局対応や新しい米ドル調達スキーム構築、金融危機をきっかけに米国事業で生じた大きな不良資産の最終処理プロジェクト、メキシコ・チリでの拠点立上げプロジェクトなどに従事しました。金融危機直後の厳しい時期ではありましたが、留学と実務の両面で得た経験は、私にとって大きな財産となりました。

ニューヨークでの5年半の勤務の後、日本へ戻り、持株会社の人事部に配属されました。人事部では様々な業務に携わりましたが、特に中心となったのはグローバル関連の業務です。私の帰国と前後して、みずほグループ全体で優秀な人材の発掘や育成をグローバルに推進する動きが始まり、私は特に海外人材についての発掘や育成に携わりました。人事と組織のグローバル化は簡単なものではなく、試行錯誤を繰り返しながら取り組んだ日々でしたが、振り返ってみると、その後の海外でのマネジメントや人材育成にも大いに活きる貴重な期間となりました。

その後、再び海外赴任することになり、シンガポールにて4年間、非日系のお客様を対象とした営業活動に従事しました。勤務地はシンガポールでしたが、アセアン諸国や南アジア地域の非日系ビジネスを推進する部署で、先進国のシンガポールに加え、急成長を遂げるインドや、成長途上のバングラデシュなど、多様なマーケットでビジネスチャンスを探りました。

特に、金融制度が未整備な国でのビジネスは挑戦的でありながらも、成熟した北米市場とはまた違ったアジアの熱量は非常に刺激的で、今後もアジアで働き続けたいという気持ちが高まった時期でもありましたが、その後、カナダへの赴任が決まり、昨年5月に赴任してまいりました。

-様々な分野で活躍されていますね。カナダへ着任され1年経ちますが、カナダはいかがですか。

北米勤務は2回目ですが、正直、今回カナダに赴任してくるまで、ビジネス面も含めてカナダについて深く考える機会は殆どありませんでした。アメリカの金融マーケットが圧倒的に大きいことも理由の一つだったのだと思いますが、カナダに赴任してきて、その魅力的なビジネス環境と可能性を目にし、自身の無知を恥じたことを覚えています。

カナダは豊富な資源に恵まれていることに加え先進国として法制度も安定しているので、外国企業として投資をし根を張ってビジネスを続けていきやすい国ですし、我々金融機関としても、カナダの金融法制は洗練されていて透明性と安定性が高く、グローバルスタンダードとも合致しているので、安心してビジネスを行うことができます。

人材も優秀で、更にアメリカのリソースを活用しやすいという点も大きな強みです。自然も豊かですし、東西に広い分だけ街ごとに異なる文化的背景と地理、気候を持ち、飽きさせません。仕事の面でもプライベートの面でも大好きな国になりました。

-今も印象に残っているのはどんなプロジェクトでしょうか。

これまで各国で様々なプロジェクトに携わり、いずれも忘れられない経験ですが、強いて挙げるとすると、米国とシンガポールでそれぞれ取り組んだ不良資産や係争案件の最終処理プロジェクトでしょうか。こうした後処理プロジェクトは決して華々しい仕事ではありませんが、誰かが責任をもって取り組まなければならない重要な業務なので、手を挙げてプロジェクトリーダーとして参画しました。

いずれの案件も契約関係や法規制が複雑に絡み、また高度な金融プロダクツ知識も求められるものでしたので、自身の経験値を大きく引き上げる貴重な機会となりましたが、何より、私の思いに賛同してプロジェクトに参画してくれたスタッフ達と辛苦を共にした日々は大切な思い出となっています。

-趣味についてお聞かせください。

シンガポール赴任時代に社外の知り合いから勧められてロードバイクを始めました。当時既に40代後半で、最初は年齢的にも気後れしていましたが、勧められるがまま地元のチームに所属し、毎週土曜朝6時前に集まって100キロほど走りブランチ後に解散、という生活を続けていたらすっかりとハマってしまいました。

以来、観光も兼ねて各地に足を伸ばしてロードレース大会に出場したりしています。シンガポール時代は隣国のマレーシアやインドネシア、カナダに来てからはカルガリーや米国フロリダの大会にも参加しました。

triathlon

-イベントなどレースではどれくらの距離を走るのですか?

イベント毎に異なりますが、100kmから150kmくらいのものが多いですね。カルガリーで昨年、今年と2年続けて参加したチャリティライドイベントでは、現地の同僚と一緒に土日2日間で計260km走りました。トロントで参加したガーディナーからドンバレーにかけて高速道路上を走るライドイベントは少し短めの70kmほどでした。

また、レースではありませんが、先日トロントからオンタリオ湖沿いにナイアガラまで片道150kmを走ってきました。これまで何度も訪れたことのあるナイアガラでしたが、6時間かけて辿り着いて目にする瀑布はまた格別でしたね。

-とてもアクティブですね。自転車以外ではいかがですか?

実はカナダに来てから、支店のスタッフに勧められてランニングを始め、昨年10月に「トロント・ウォーターフロント・マラソン」で人生初のフルマラソンにチャレンジしました。50歳を超えてからの初めての挑戦でしたが、素晴らしいトロントの街並みと沿道からの温かい声援に力をもらいながら走り抜くことができ、忘れられない経験となりました。

running team

以来、ランニングを続けていますが、私のチャレンジを知ったランニングを趣味とする若手スタッフ達から「みずほでランニングチームを作って大会に出よう」という声が上がり、今年5月に開催された「トロントマラソン」にみずほチームとして参加しました。お揃いのチームTシャツを着たランナー25人ほどが、5km、10km、ハーフマラソン、フルマラソンと各自の体力に合わせた距離を走り、ゴール後は家族も交えて皆でランチを楽しむなど、よいチームビルディングイベントになりました。

自転車もランニングも、知人や同僚に誘われたのがきっかけでしたが、良い機会なのでと挑戦してみたところ、どんどん楽しさを見つけることができました。また、始めてから知ったのですが、ロードバイクやマラソンを趣味にしているエグゼクティブ層は意外に多く、仕事上のネットワークを社内外に広げていく上でも思いがけず役に立っています。

-お仕事を進める上で大切にされていることについて、お聞かせください。

趣味と同様、何事にも興味を持って新しいチャレンジをしてみる「Do Something New」ということを心掛けています。毎週、毎月、毎年、自分は何か新しいことに取り組めたか、ということを意識するようにしているのですが、もちろん、毎週のレベルで新たに取り組めることには限りはあります。それでも、どんな小さいことでも新しいことにチャレンジしてみる、という意識が、新しい出会いや発想、そして新しいビジネスにつながるのではないかと考えています。

-先程、ロードバイクやマラソンのお話を伺いましたが、新たに始めてみたいことはありますか?

自転車、マラソン、ときたので、いつかトライアスロンにチャレンジするのが夢です。残る種目の水泳はこれまで殆どやったことがないので、大会に出られるまでになるのは随分と先になりそうですが、人生は一度きりなので、できる範囲で挑戦を続けていきたいと考えています。

-アスリートですね!では最後に商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。

water front marathon

ダウンタウン方面にお越しの際は、是非私どものオフィスに足をお運びください。仕事のお話でも趣味のお話でも、何か新しく取り組んでいらっしゃることがありましたら、是非お誘いいただけるとうれしいです。

<追伸> 

10月19日にトロントウォーターフロントマラソンに参加し、3度目のチャレンジで初めて3時間半切りを達成することができました。途中、和太鼓の応援で涙が出てきたのには驚きましたが、大いに勇気づけられ一分一秒を削り出すことができました。応援どうもありがとうございました!