「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第260回>Telehouse Canada Inc. President,
CEO 足立 智

president

今回は、Telehouse Canada Inc. 足立智氏にお話を伺いました。世界トップクラスの接続数を誇り、世界45拠点以上でグローバルな接続インフラを強化されている同社。昨年、カナダでもトップクラスのコネクティビティデータセンターを取得し、カナダへ進出されました。普段なかなか耳にすることがないデータセンターですが、私たちの暮らしを豊かにするために欠かせない役割を担っています。その役割から事業内容をはじめ、更には廃熱を利用したエコ事業も実際に拝見させていただき、詳しくご説明いただきました。プライベートでは、サーフィンとキャンプをこよなく愛する足立氏は、2023年10月に着任されました。

事業内容についてお聞かせ下さい。

データセンター事業を中心に、今巷でいろいろ取り沙汰されているDX(デジタルトランスフォーメーション)事業を推進しております。具体的には、今いらっしゃるデータセンターのビルでお客様のコンピューターに対するインフラ、賃貸業務を行っております。お客様のセグメントとしては、通信キャリアさん、インターネットサービスプロバイダーさん、クラウドプロバイダー各社様を中心に展開させて頂いております。

要は地場地場でいるローカルのキャリアさんや、ハイパースケーラーと言われるコンテンツのプロバイダーさん に我々のデータセンターはスペースや電気空調やセキュリティといったインフラをお貸し出しさせて頂き、そういった通信が遅滞なく動くサポートを陰ながらさせて頂いている、と思ってくださればと存じます。

例えば、万が一、自宅の電気や空調が止まり、コンピューターがダウンしてしまうと、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディアへのアクセスができなくなります。もしくは、その途中にある通信会社のモバイル回線の裏の設備が落ちてしまうと、繋がりません。だからこそ安定して電源やコンピューターが動き続けられる環境が必要となりますので、それを我々が提供しています。

昔からある事業ですが、昨今のAIなどの進化により、ますます重要になってきましたので、今回、当社としてカナダへの進出を決めました。

カナダへ進出されたきっかけ、御社の強みについてお聞かせ下さい。

世界トップクラスの接続数を誇る「Telehouse」ブランドのデータセンター運営です。世界45拠点以上に展開しており、ロンドン、パリ、バンコクに加え、カナダでもトップクラスのコネクティビティデータセンターを取得し、グローバルな接続インフラを強化しています。

今回、トロントのアセットが我々の戦略、強みにとてもマッチしているため、一年前に投資をして、こちらの151ビルおよび二つのビルを買収しました。災害に備えて複数のデータセンターを設置することで、リスク分散をすることが可能となります。通信キャリアさんやコンテンツプロバイダーさんが最も集まってつながりあっているカナダ最大のデータセンターです。

date center
3つのデータセンター

データセンターの役割について、もう少し詳しくお聞かせ下さい。

例えば、テレビゲームをモバイルで遊びたいという時には、サーバーと呼ばれるプログラミングされたコンピューターへアクセスします。このコンピューターにアクセスするためには、モバイル業者が介入し、回線を届けるアクセスインフラを通り、アクセスします。

コンピューターをつなげるためには当然電源が必要となり、電源を提供するのがプライマリーのデータセンターの使命です。電源が落ちてしまうと、コンピューターも落ちてしまうので、停電なんて許されません。万が一停電したとしても、自家発電機で必ずセーブする、瞬断もさせないことを使命として、35年程前から事業をしております。

それをするためには、職人的な運用が必要となります。停電が起きたら自家発電に瞬断なく切り替えるというメカニズムを知り、給油が足りなかった場合の持続時間など、掘り下げるとかなりの職人作業が必要となります。弊社は、世界展開していく中で、運用ノウハウをつけながら、エクスパンドをしてきました。

現在、どれくらいのエリアをカバーされていますか。

今のところ、トロント、特にダウンタウンを中心にカバーしております。他の二拠点も近くにあり、一つははす向かいにあるにあるCBCさんが保有しているビルを間借りさせていただき、使わないビルをデータセンター専用構造に変えさせていただいて事業運営しております。もう一か所も同じようなスタイルで運用をしています。ちなみに、こちらの151ビルディングは、カナダの通信の発祥地であり、北米のインターネットに関わってるいらっしゃる殆どの方に知られている由緒あるビルとして有名です。

加えて、昨今の環境保全のため、データセンターの空調はコンピューターをオペレーションするために、必要なインフラの技術となっております。我々はチラーのような冷却重機を用いず、Enwaveさんと提携して、湖水冷却システムを導入しており、運営で発生した熱はトロント市の飲料水加熱に再利用されております。

トロントの飲料水はオンタリオ湖が元となっています。特に綺麗な水は下にあり、これがとても冷たいんですよ。水の比重が一番重くなる温度というのが4度ですので、-20°になっても表面は固まりますが、湖水の一番深層部分は、4度で安定しています。この水を引き上げてトロントの住人の皆さんに供給されています。

Enwaveさんはこれを、トロント市とともにされています。実は4度の水って飲むことができないくらい冷たいんです。私達が普通に冷たいと感じる温度は12度くらいですので、水を温めるための熱が必要となります。我々は多くの廃熱を出していますので、それを無料でEnwaveさんへ提供し、トロントの皆さんへ供給される水を温める事業をしております。

これを実施しているデータセンターというのは、実はかなり少なく、基本的には冷房を電気で起こして、エネルギーを費やして冷却しております。ありがたいことに、オンタリオ湖の湖水があるので、それを有効利用させていただいております。念のため言いますと、直接温めている訳ではありませんので、ご安心ください。データセンター事業だけではなく、エコも一緒になっているアセットということも決め手になりました。

カナダ国内の通信インフラを支える拠点として、データセンターの接続性を強化し、顧客ニーズに応じた最適なソリューションを提供し、更なる拡張を目指しています。

コンピューターの廃熱が、私達の生活に水に関わっているなんて、まったく予想もつきませんでした。今後、拡張をされていくということですが、建物はデータセンター専用の設計が必要になりますか?

そうですね、専用にしていないと効率が悪くなります。こちらのビルも天井がすごく高く、空調が冷やせる体積が大きいと空調効率がよくなり、データセンターに必要な一つの要素となります。古いビルは天井が高く設計されているので、逆にいいといえますので、そちらも考慮して買収をしていく必要があります。

足立さんご自身についてですが、ご出身と、ご経歴についてお聞かせ下さい。

KDDI本社の出向として、テレハウスカナダの社長、そして北米の統括拠点(ニューヨーク本社)であるKDDIアメリカの副社長を兼任しております。

家族構成は妻と、9歳の娘と7歳の息子の4人家族です。 出身は九州の大分県です。田舎ですが海が近いので、サーフィンをかれこれ30年程しています。地元の友人とも帰省の折には必ず一緒に海に入ります。アメリカでも中南米カリブには、エルサルバドルやバルバドスとサーフィンで有名なところが多いので、何回も行きました。

surfing
中米ドミニカ共和国でのサーフィン

2000年に当時の国際電信電話という会社に入社しました。 実は、内定が終わった後、合併しKDDIとなり、そこから今年で入社25年目となります。2003年に海外トレーニングの経験をシンガポールで一年間させていただいた後、海外で日系企業様メインのデータセンターやオフィスのセットアップのためのネットワークインフラをサポートする本社企画部門に4年程、携わりました。

その後、2008年テレハウスアメリカの副社長の経験を8年間ニューヨークでさせていただきまして技術以外のビジネス及びコーポレート系を見る役割を担いました。その後一年日本へ帰任し、世界のデータセンターの企画に携わっておりました。

弊社は、新しいビジネス展開に結構アグレッシブで、色々と事業展開をしています。IoT(インターネット・オブ・シングス)、モノのインターネットとして、車にSIMカードを挿しコンシェルジュに電話をする、音声を認識させて行きたい場所をポップアップさせるといったコネクティッドカーの機能がありますよね。この事業をトヨタさんと提携させて頂き、KDDIの通信回線とITプラットフォームを使ったコネクティッドカー事業を北米で2019年から開始しました。

これに先立つ2017年から当社はダラス拠点を開設、私は本プロジェクトの立ち上げで駐在として派遣され2年かけて構築が完了しました。2019年以降に作られた北米トヨタ、レクサス様の車両には必ずKDDIのソリューションが入っており、いまや1000万回線(車両)を超える規模までとなりました。

そして今回、今までの北米での経験と、データセンターの事業経験がありましたので、トロントにおける事業買収後の新データセンター運営のミッションを頂戴しました。

お仕事を進める上で大事にされていることを教えてください。

17年程、海外で働いていて思うことは、実際に出自や出身はビジネスではそれほど関係なく、 結局は必ず個人にスキルやクオリティーがついてくるということです。日本人だから細かい、何人だから雑、ということって本当になく、むしろ逆のことを多く見てきました(笑)。ですので一人一人と対話をしつつ信用を構築しています。

そのためには、まずは自分ができることを先に提供すること、これを何より大事だと思っております。 足りないことだらけですが自身ができることを先に渡し、チームや同僚には、こちらができないスキルを提供してもらう、という順回転を作っていくのが理想です。

ご趣味は何ですか。

旅行が趣味で今まで32カ国、アメリカの滞在が長いということもあり、海岸沿いはほとんど訪れました。キャンプも好きで、それこそキャンピングカーを借りたり引っ張ったりして、色々な場所に行きました。北米時代にダラスから2週間ぐらいお休みをいただき、グランドサークルへ家族とRVでキャンプをしたのはいい思い出です。

camping car
グランドサークル一周RVの旅

今のところカナダはアルバータ州、ケベック州、オンタリオ州を訪れていますので、今後他の州も行ってみたいと思ってます。他にも先程お話をしたサーフィンをはじめ、釣りやゴルフ、アウトドアスポーツも好きです。カナダは海がありませんがオンタリオ湖でも厳冬期にこそいい波が立ちすでに複数回入水しました。「脳筋」のような聞こえかもしれませんが、どれをとっても奥が深くて一生の趣味になっています。

カナダ駐在中に挑戦したいことは何ですか。

トロントのデータセンター事業を成功させ、日本のTelehouseのブランドを北米で認知度向上を図り存在感を上げていきたいですね。プライベートでは、サーフィンがうまくなりたいですね。

 会員の皆様へメッセージをお願いします。

ちょうど昨年の10月に着任しましたが、丸一年経って立ち上げや開所式で立て込んでおりなかなかお目に掛かれませんでしたが、二年目を迎え、これから皆様と交流できたらと思っております。これからもお世話になりたいと思いますので、よろしくお願いします。

本日はお忙しい中、ありがとうございます。これでインタビューを終わります。