「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

Hino Motors Canada, Ltd.
Executive Vice President木村 成雄

hino truck

今回はHino Motors Canada, Ltd.  の木村 成雄氏にインタビューをさせていただきました。ミシサガに本社、ウッドストックに工場を構え、カナダの工場で、カナダのマーケット向けにトラックを製造されている同社はBUILT BY CANADIANS, FOR CANADIANSを標榜しており、今年50周年を迎えられました。幼少期を北米で過ごし、前職、現職で同地への駐在をご経験され、ご縁を大切にされている木村氏は2023年2月に着任されました。長年の海外営業でのご経験、アライアンスのプロジェクトに携わったお話など、お聞かせいただきました。

木村)今回のインタビューの冒頭で皆様に、まずはお詫びから始めさせていただきたく存じます。弊社の商品は全て日本の日野自動車が開発し、その部品を我々が日本やアメリカから輸入し、ここで組み立てをし、私共の直接のお客様であるカナダのディーラー、そのディーラーのお客様に提供するという形をとっております。日野自動車におきまして、北米向けエンジンの認証確認の過程において課題が見つかってしまったため、2021年のほとんどの期間、トラックを作れないという状態になってしまいました。

そのため、ディーラー、あるいはエンドユーザーのお客様へ、トラックを供給できないという事態が、更にはサプライヤーの皆さんへも部品を発注できないという状況が発生し、大変なご迷惑をおかけしてしまいました。関係者の皆様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。この場をお借りして、お詫び申し上げます。

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事業内容のご紹介をお願いいたします。

私どもはトヨタグループの商用車部門を担っており、カナダにおいてトラックの生産販売をさせていただいております。本社はミシサガにあり、ウッドストックに工場がございます。

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ミシサガにあるHMC本社

御社の強みについてお聞かせください。

弊社はおかげさまで50年、カナダ市場に根付いて事業をさせていただいており、2013年から2020年の8年間、ナンバーワンシェアを取らせていただいております。我々の先輩方がカナダの市場に合ったものを作る、あるいはカナダのお客様のケアをしっかりされてきた結果として、今がございます。事業の形態として強みとなっているのは、日本の日野自動車本体の直接の子会社として、ピュアにカナダにフォーカスしているという事業形態が一つ我々の強みだと思っております。

先輩方が築き上げ、特に2006年にウッドストック工場も作り上げ、カナダ向けのものだけを作っているまさにBUILT BY CANADIANS, FOR CANADIANSです。北米の競合他社を含めて、カナダにある中型トラック製造会社、製造組み立て工場というのは弊社だけ です。トラックに関しましては、他の競争相手はアメリカやメキシコから輸入しておりますので、そういった意味でも、大きな強みだと感じております。

-50周年を迎えられ、どんなお気持ちでしょう。

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Woodstock工場

50周年というご縁の時に来させていただいて、本当にラッキーだと思っております。特にコロナがあり、あるいは先ほど申し上げたように生産ができない時期を乗り越えた後に着任しましたので、そういう意味では、ご苦労された先輩の皆様には申し訳ない思いがあります。

フレッシュスタートを始めるということで、おかげさまで5月にディーラー大会をコロナ後、5年ぶりに皆さん一堂に会して、ピアソン空港の近くで行いました。皆さんとお会いし、また頑張っていこうと確認でき、本当にいいタイミングでこさせていただいたと思っています。

今後、特に力を入れていきたいことについて、お聞かせください。

カナダの物流を担う、ある意味社会インフラを支える機会に弊社は携わらせていただいております。スポーツカーやコンバーチブルを作るというような華々しさはありませんが、私どもの仕事として、地道に、しっかり壊れない品質の良いものを作り、2021年の教訓をふまえて基本に立ち返り、しっかりと製品をお客様にお届けしていきたいと思っております。

トラックが 止まるということは、それを使っているお客様にとって、日銭が入ってこず、生活に直結してしまいます。アフターサポートも非常に大事ですので、壊れずにちゃんと動き続けること、万が一部品がない場合には、すぐにお届けして直せるようにする、という基本的なところをしっかり地道に行って参ります。お客様のパートナーであ


るという信頼を取り戻して、日野ブランドの商品・サービスを皆様にお届けできればと思っております。

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Hino XLシリーズ

特筆すべきニュースはございますか。

今作っているトラックはカミンズ社というアメリカのエンジン製造専業メーカーのエンジンを購入し、トラックに乗せております。日野のエンジンではなくなってしまいましたが、生産を復活し、昨年のシェアは、1位と17台差の2位までこられたことは、私どもの先輩が築き上げたこのブランドの強さだと思っております。たとえ自社のエンジンではなくても、お客様が信頼されて購入されていると改めて感じました。

では、木村さんご自身について、ご出身から今までのご経歴等についてお聞かせ下さい。

生まれは東京です。父親の仕事の関係で、2歳から6歳までアメリカのテキサス州ダラスで幼少期を過ごしました。その後日本へ戻り、小6から中3の間、今度はロサンゼルスへ行きました。その後は横浜で育ちましたので、実家という意味では横浜になります。

大学卒業後、電機会社に就職し、主にインフラ系通信機器の海外営業を担当しておりました。これは偶然ですが、当時勤めていた会社で、1999年から2004年まで子供の頃にいたダラスへ駐在しました。2006年に日野自動車へ入社、海外営業の北米を担当しており、2013年から2018年までデトロイトへ駐在し、その後日本へ戻り、5年経った2023年にカナダへ来ました。

幼少期から海外での生活をご経験されていたのですね。

そうですね。前職の電機会社でダラスへ行ったときも縁を感じましたし、現在の親会社のトヨタの北米本社が、もともとトーレンスにあり、小6から中3に住んでいたところが実はロサンゼルス郊外、トーレンスでした。その後、トヨタの北米本社がダラスに移りましたので、 全部繋がっていて、縁というのは本当に不思議なものだなと思いましたね。

一番印象に残っているプロジェクトついてお聞かせください。

2018年にデトロイトから日野本社の方に戻り、引き続き担当するのは海外営業だろうと思っていました。ところが、私が辞令を受けた時はまだ極秘でしたが、元のVolkswagen Truck&Bus AG(現トレイトン)とのアライアンスをするということで、タスクチームに入ることになりました。

今までやってきた仕事と全く違い、ドイツ、あるいはスウェーデンの方と一緒に仕事をしました。彼らはとても積極的に意見を出し、こちらも全部受け身にならず、負けずに意見を出し合い、落としどころを見つけていく中、カルチャーの違いを感じました。

私は、今までは日本の本社から出向した人間として、アメリカ人と仕事をする場合が殆どでした。アメリカの人も当然自分の意見を積極的に言いますので、経験はしていましたが、アライアンスといえども、自分の会社の利益になることを考え、ぶつかり合いながらも、落としどころを見つけていくという経験は、会社員人生の中でも、大変貴重でしたね。

現在カナダ人とお仕事をされて、どのような時に文化の違いを感じますか。

日野へ入社するまではアメリカ専門で、カナダの事業に接する機会がありませんでしたが、携わるようになって感じたことは、女王陛下に歯向かった側とついた側はこんなに違うのかと正直思いました(笑)。

日本人に近い感覚があるのがカナダの人達だと思いますし、そういう意味では、とてもやりやすい部分がある一方で、ホンネとタテマエがきっとあると思うので、相手の言ってることを全て額面通りに受け取らず、心の中でどういうことを思っているか?を考えながら接していく必要があると思いながら、アメリカとカナダは全然違うと学びました。

お仕事を進められる上で、大切にされていることは何ですか。

聞かれた時に、自分の知っていることはできるだけ全部伝えるようにしています。

例えば職人さんの世界で、しっかり自分で咀嚼して、自分のものにする「背中を見て学べ」という世界も当然あると思います。一方で我々のビジネスの世界というのは、日々日進月歩で変わっていきますので、自分の知っていること、ノウハウなりはきちんと言葉で伝えて、その上に後輩たちが自分で学んだことを上積みすることで、会社というのは良くなってくると思っております。私は何か聞かれれば、極秘事項は言えませんが、自分の知っていることは全部伝え、教えるよう心がけています。

また、Customer Satisfaction(CS)とEmployee Satisfaction(ES)とありますが、CSはESが良くないと向上できないものだと思っております。まず、自分の周りの仲間がハッピーでいるか、そうであれば、自然とお客様をハッピーにする仕事ができると思っていますので、その点も意識するようにしております。

お好きなスポーツやご趣味はありますか。休日は何をして過ごされますか。

最近スポーツはあまり観なくなりましたが、 メジャーリーグは大谷選手が来た時は、観戦に行きましたね。大学時代にアメフトをやっていたので、アメリカのNFLはよく観戦していました。自身で身体を動かすということですと、健康維持のために週一回、数キロ走るようにしています。また、日本から愛犬の豆柴を連れてきたので、散歩をしています。豆柴といっても8キロあるので大きい豆柴ですが(笑)朝は私が、夕方は長男が散歩の担当をしています。

日曜日は日本のJRAの競馬を楽しんでいます。メインレースは日曜なので、時差があるため土曜に予想をし、その結果を日曜の朝にウェブでチェックをしています。眉を顰める方もいるかもしれませんが、競馬はギャンブル、あるいは一つの種を生殖まで全部コントロールしているのがサラブレッドの世界ですので、本当に罪深いと思う一方、それに伴う深い文化が色々あります。

例えば、イギリスでは王室主催のロイヤルアスコットが開催されたり、カナダでもキングスプレートというダービーに相当するものがあったりします。特にカナダはノーザンダンサーという大種牡馬の馬がおり、今レースに出ている馬を2、3代遡れば必ずノーザンダンサーの血が入っていると言われています。 カナダのスポーツの殿堂に、人間以外で初めて入ったのがノーザンダンサーというくらい偉大な馬です。

まさに日本の東京競馬場のように一番中心の競馬場であるウッドバイン競馬場へまだ行けておりませんので、ぜひ行って勝ちたいなと思っています!競馬というのは、応援している馬の子供や兄弟が出てきたりと、全部つながっていますので、一度ハマると一生ハマるものなんだろうなと思っています。眉をひそめている方にも、そういう考え方で許してもらえればと思っております(笑)。

今後、カナダ駐在中に挑戦したいことはありますか。

カナダは本当に広大な国土ですので、なかなかハードルが高い目標かなと思いますが、準州を含む全州に、一歩でも足を踏み入れてみたいですね。特にイエローナイフに行って、オーロラを見てみたいと思っています。

商工会会員の皆様へメッセージはございますか。

異国の地で皆さん、ご苦労されていると思います。トロントに来て思ったのは、商工会事務局の皆さんの尽力もあり、日本人コミュニティのまとまりが、とてもいいということです。これはコスモポリタンなトロントの風土がなせる業でもあるのだろうなと感じています。

昨今は、残念ながら銃犯罪等が増えてきておりますが、それでも「安全」という評価軸を加えたら、もしかしたらトロントはニューヨークを凌駕する北米No.1の都市なのかもしれません。是非、皆様にはトロント、カナダでの生活を満喫して頂きたいと思います。日本人同士、そしてカナダの人達とも助け合いながら皆様がより良き未来に向けて歩みを進められることを祈ってやみません。私でできることがありましたら、いつでもお声かけ下さい。

本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。