今回はSleeman Breweries Ltd.の南氏にお話を伺ってきました。カナダで第3位のビール会社として位置する同社は、各地域のビール会社が一つになりナショナルカンパニーとして統合、そして2006年にサッポログループとなりました。プレミアムビールから低価格まで、また輸入ビールのポートフォリオを持ち、全国展開されています。南氏は北米で20年間の活躍後、2024年1月にSleeman Breweries Ltd.のPresident & CEOに就任されました。プライベートでは釣りが趣味、また、今期の商工会理事も務めていただいています。(聞き手:酒井智子)
–事業内容の紹介をお願いいたします。
当社はビール会社ですが、RTD(Ready-to-Drink)やノンアルコールなど、ビールを超えた商品の販売も行っています。当社は1834年に設立されましたが、1920年~1933年までアメリカで禁酒法が施行され、その際、当社は密輸を行い、50年間営業停止命令を受けました。実際、映画でも有名なシカゴのアル・カポネにもビールを販売していたという話もあります。1988年になって、The great-great grandsonにあたるJohn Sleeman氏によって再開されました。
現在、当社はカナダで第3位のビール会社として位置しています。Ontario州のSleeman、Quebec州のUnibroue、BC州のOkanagan、そしてAB州のWild Roseと、各地域リージョナルビール会社がグループに加わり、一つのナショナルカンパニーとなりました。そのため、当社はナショナルカンパニーでありながら、リージョナルカンパニーでもあります。
このような経緯から、また米国ビールブランドのカナダでの権利取得、サッポログループへの加入を通じ、プレミアムビールから低価格まで、そして輸入ビールのポートフォリオを持ち、全国展開しています。当社は2006年にサッポログループに加わりました。
–御社の強みについてお聞かせください。
先ほど述べたように、当社はナショナルながらも、リージョナルなカルチャーを引き継いでおり、非常にファミリーオリエンテッドな会社だと感じています。John Sleemanが1988年に再開したとお話しましたが、現在もFounder &Chaimanとして残っており、ほぼ毎日出社しています。
カナダのビールは9割以上がオンタリオ州、アルバータ州、BC州、そしてケベック州の4つの州で、消費されています。われわれはその4つの市場それぞれに発祥のビールブランド・製造拠点を持ち、ビジネスを行っています。
また、当社のビジョンは、“Better Beer for all”、ミッションは、“Better beer, better people, getting better”です。わずか5~6個の単語ですが、この中には当社の意義がぎっしり詰まっています。リージョンごとに異なる特性がありながらも、このビジョンを共有することで一体感を持っています。
–北岡前社長にインタビューをさせていただいたのが、3年程前になりますが、その間変化などありましたか。
私も2年ほどカナダを離れていましたが、市場環境は確かに変化しています。特にインフレや、新型コロナウイルスの影響後の経済環境は、ビール市場にも影響を与えました。インフレによる影響として、お客様が少し安価なビールに移行する傾向などが見られます。
また、健康志向のものを選ぶお客様が増えています。ノンアルコールも明らかに増えました。グロサリーで以前はわずかしか置かれていなかったノンアルコールビールも、最近では専用のセクションが設置されるなど、環境が変化してきていると感じます。
–今後力を入れていきたいことについて
私たちの会社は、カナダの現地企業として、各リージョンのコミュニティの一員として素晴らしい歴史を築いてきた会社であり、これからも引き続き積み上げていきたいです。従業員が働いてよかったと感じ、楽しいと思える会社になることを目指しています。なぜこの会社が存在し、なぜここで自分が働いているのかを皆が実感しながら、いい製品を作り、お客様に提供したいと思っています。
リージョナル企業として、コミュニティの一員としてビジネスを展開していくことをさらに強化したいと考えています。サステナビリティやDE&I(Diversity、Equity、Inclusion)への取り組みも重要だと考えていますが、それは単なる企業の責任だけではなく、ビジネスを通じて社員がお互いを尊重し、チームとして協働的に働く会社になることで、皆がよりクリエイティブに、よりやる気をもって働き、結果として会社のパフォーマンスも高まると思っております。本心から皆がそう思えるような会社になるよう、私も貢献していきたいです。
–特筆すべきニュースなどありますか。
先週、サステナビリティの一環として、”Better Water Fund”を立ち上げました。この取り組みは、ビール製造に欠かせない水の重要性を考え、水資源を守るために団体に基金を提供し、水の調査や将来の水資源の維持に貢献する活動を支援するものです。
当社の商品では、Sleeman Clearという商品があり、健康志向のカテゴリーに位置づけられています。低カロリーで低糖質な商品であり、今Sleemanブランドの中で主軸となっている商品です。これからのシーズンに向けてゴルフ缶が発売されました。ぜひゴルフ場でも、バーでも、ご家庭でもお楽しみください!5月末に開催されるPGAツアーのCanadian Openでもスポンサーをしており、Sleeman Clearもありますので行かれる方は是非!
また、RTD(Ready to Drink)では低カロリー健康志向ブランドのSoCIAL LITEの新商品やPabst Blue Ribbon からIced TeaのRTDも発売しました。どちらの商品もLCBOで購入可能です。さらに、Sleemanの0.0%ノンアルコールビールもグロッサリーストアで発売しました。
–これからの時期にぴったりですね。ここからご自身についてお伺いいたします。ご出身から今までのご経歴についてお聞かせ下さい。
札幌で生まれましたが、転勤が多かったためトータルで約2年半しか札幌に住んだことはありません。トロントには道産子会という会があるので、北海道出身の方はぜひご参加ください。
海外経験としては、大学時代に一年間の語学留学を経験しました。卒業後はサッポロビールに入社し、最初は国内営業を担当しました。その後、海外営業としてアジアを担当し、その後1年間経理経営戦略部門にも所属しました。2004年に北米に赴任して以来、20年が経ちます。
2004年から2010年まではアメリカに滞在し、2010年から2022年まではカナダに居住しました。その後、2年間アメリカに再度行き、再びカナダに戻ってきました。今までに一往復半ほど移動しました(笑)。
–北米での20年間、どのような業務に携わっていましたか。
最初は主に内勤部門や経理総務などのポジションでSapporo USAに入社しました。当時は約15人ほどの小さな会社で、営業以外何でもやる感じでした。営業以外の従業員はわずか3人程度で、雑用も含めて様々な仕事をこなしていました。
2010年にカナダに来てからは、Sleemanには1,100人ほどの従業員がいますので、雰囲気は大きく違いました。VP Finance & Business Strategyとして経理や経営戦略の業務を約12年間担当してきました。
その後、アメリカに戻り、Sapporo USAのPresident & CEOとして2年間勤め、2023年10月にまたSleemanに戻ってきました。
–今までで一番印象に残っているプロジェクトは何ですか。
Sleemanという企業は元々カナダの現地企業でしたが、先にも述べた通り各地域のビール会社を買収し、一つの会社となった経緯があります。サッポログループに加わった2006年は、まだ各地域のビール会社がそれぞれ独自に運営されているような部分がありました。
買収後、リージョナルな独立組織ではなく、ナショナル企業として標準化を進め、各部門がナショナルレベルで一つの機能としてまとまってきました。リージョナルの文化を残しつつ、会社がひとつとなり、全従業員が一つの目標に向かっていくべく、ビジョンを導入しました。会社全体が一つにまとまるという変化を感じることができました。
またコーポレートロゴについても変更が行われました。Sleemanを買収した際に、Sleemanのブランドのロゴがコーポレートロゴと同じものだったため、各リージョンのブランドが集まって一つとなっている会社としては違和感があり、コーポレートロゴを作成し、会社全体の一体感を高めるための取り組みが行われました。これらを通じて会社全体が一つにまとまりながら、各地域が一緒に活動する枠組みが整備されたと思います。
–お仕事を進める上で大切にしていること、独自の経営方針についてお聞かせ下さい。
会社として達成すべき目標を持ち、それに向かって、常にブレないことが大切だと思っています。John Sleemanがこの会社を再開し、これまで人が会社を築いてきました。これからも人が会社を作り続けることになります。私は自分がどの方向に向かっていきたいかをきちんと示しつつ、他のメンバーをサポートし、一人ひとりがここで働いてよかったと思えるような会社を築くことを心がけています。
また、若いころに上司から頂いたアドバイスで本当にそうだと思いますが、偉い人ほど謙虚であり、誠実だと教えられました。私もいつまでもその謙虚な気持ちを持ち続けたいと考えています。
–ここからはプライベートについてお伺いいたします。趣味や好きなスポーツは何ですか。
趣味は釣りですね。カナダに来てから始めましたが、まあまあ上手だと思います(笑)。釣りは一年中しています。冬はアイスフィッシング、春と秋は川でサーモンやスティールヘッドを釣り、夏は湖でバス釣りを楽しんでいますので、一年中釣りしてます。この時期は、最近までミシサガにあるCredit Riverという川で、スティールヘッドという大きなトラウトが釣れました。うちから車で2分ほどのところで釣りができます。
また、毎年子供と1週間ほどキャンプに行っています。ただのんびりと、飲んだり釣りを楽しんでいます(笑)。Simcoe Lakeのちょっと東にあるBalsam Lakeという湖に、アメリカに行く前はよく行っていました。ボートを停泊させて朝起きて釣りを楽しんだ後は、またテントに戻ってくることができるので、最高です。
–釣りを始めたきっかけは何ですか?
もともとはゴルフなどを楽しんでいましたが、子供が生まれてから週末に家族で楽しめるアクティビティを探していました。その時に、知り合いの方からお声をかけていただいたのが、釣りを始めるきっかけとなりました。
–今後挑戦したいこと、やってみたいことについてお聞かせ下さい。
北米には20年もいますので色々挑戦してきましたが、今やりたいこと、本音を言うと小説を書いてみたいと思っています。感動とユーモアがあるような。別に文章を書くのが得意とかではありませんが、そういう意味では下手でもですけど、絵とかも描くんですよ。まあまあ面白いのを書けると自信はあります(笑)。
–楽しみにしております。最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
カナダという場所で、日系企業で活躍されている皆さんと交流できる貴重な機会として、 私もいろいろ学ばせていただくこともありますので、ぜひ引き続き皆さん仲良くしていただければと思います。
–本日はお忙しい中、ありがとうございました。