特別企画:スポーツの楽しみ方4

「スローピッチ」老若男女 プレーしやすい人気スポーツ
濵本 翔太(MC Machinery Systems Canada, Inc.)

「スローピッチ」と聞いてどんなスポーツかピンとくる方は少ないのではないでしょうか。アメリカや欧州に住んだご経験のある方は、プレーしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。私はスローピッチというスポーツの存在を日本に居た頃は知りませんでしたが、カナダに来てから同僚と一緒にシーズン中(春から秋前)は毎週末プレーしているスローピッチプレイヤーとして、スローピッチのルールや魅力について紹介したいと思います。

「スローピッチ」とは?

スローピッチと略して呼ばれていますが正式名称は「スローピッチソフトボール」で、ソフトボールの一種です。スローピッチの起源は、19世紀後半にイリノイ州シカゴの若者たちが感謝祭の日にプレーするために作ったゲームに遡るそうです。

日本で馴染みがあるソフトボールは正式にはファストピッチソフトボールと呼ばれ、2020年東京五輪で日本女子チームが金メダルを獲得したのもファストピッチソフトボールです。因みに、スローピッチは五輪種目にありませんが4年に一度世界大会が開催されています。

slowpitch

<写真>ピッチャーの投球の様子。容易に打ち返されることから安全にプレーするためピッチャーが防球マスクをつけてプレーすることもある。https://www.softballcenter.com/

rule

https://softballbatbuddy.com/

スローピッチの特徴

野球やファストピッチソフトボールと比べて次のような特徴があります。

– ピッチャーは下手投げでゆっくりとした山なりボールを投げなければならない。ピッチャーが投げたボールは、最低6フィート(1.82メートル)、最高12フィート(3.65メートル)の放物線を描く必要があり、最低6フィート(1.82メートル)に満たない低い投球や、最高地点が最高12フィート(3.65メートル)を超える投球は反則投球でボール判定となる。

– 守備は10人、内野手の人数は6人と野球のルールと同じだが、外野手が3人ではなく4人。4人目の外野手はショートフィールダーと呼ばれ(内野のショートはショートストップと呼ばれます)守備位置は外野であればどこを守ってもよい。

– ツーストライクからファウルボールを打つと打者はアウトとなる。

– バントや盗塁、ワイルドピッチやパスボールでの進塁も禁止。

– 男女混合チームでプレーされることが多い。

– ボールは直径3.82インチ(9.7センチメートル)、外周12インチ(30.5センチメートル)の黄色か白の革ボール(硬式ボール)を使用。

– フィールドサイズはファストピッチソフトボールと同じ。

– 地域やリーグによってプレーし易いようにローカルルールが設定されることが多い。例えば、各攻撃イニングで5点が入った時点でスリーアウトにならなくても攻守を交代する、守備の交代は何度でも可能、ホームランを打った後のベースランニングを省略、等。

– 公式国際ルール「Slow Pitch Softball Playing Rules 2022-2025」5e85a934-d622-2bd8-62f9-854264607589.pdf (wbsc.org)

Slow Pitch Softball Playing Rules

Tigers Softball Team (tigersoftball.co.uk)より

スローピッチが人気な理由

スローピッチの特徴を見てもらえると判る通り、野球やファストピッチソフトボールを老若男女がプレーし易いようにアレンジしていることから非常に気軽に始めることができるため、スローピッチは今や世界中でプレーされているスポーツの一つになっています。日本で言う草野球・ソフトボールに近い位置づけと言えます。

スローピッチのピッチャーは野球経験者にしか打てないような豪速球を投げることはできず、バットに当てやすい遅い球しか投げれません。ボールのサイズも野球より大きい為、野球経験がない人でも打つ喜びを味わえます。

日本でスローピッチが普及しない理由

スローピッチが世界でプレーされているほど日本で普及していない理由は、スローピッチで使用される革ボール(硬式ボール)が使用できる公園や校庭、球場が北米などに比べて少ないという環境の制約があるからだと思います。このような日本特有の環境の制約に対しては、日本では軟式野球ボールやゴム製ソフトボールといった日本独自のボール文化を創ることで野球やソフトボールのプレーし易さを追求してきました。日本に居ると中々プレーするチャンスのないスローピッチ、カナダに住んでいる今、挑戦してみてはいかがでしょうか?