私のとっておきのお店

観劇のすゝめ
Reuters
Editor, Japan Desk  佐々木 美和

THEATER

ここトロントで、NYの人気ミュージカルが本場の雰囲気そのままに、しかもぐっと割安に楽しめることをご存知でしょうか。

演劇は高価な印象ですが、上演日数日前に放出される「RUSH TICKET」なら、定価250ドルの席も一律59ドルに。

良席ほどおトクに購入できるのです。ご家族でもお一人様でも、英語学習にもピッタリ。次のお休みは劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。私の観劇記がお役に立てば幸いです。

<Harry Potter and the Cursed Child 英語難易度★★>

HALLY POTTER
HALLY POTTER

ご存知、ハリー・ポッターシリーズの後日譚。ハリーの「8番目の物語」です。あれから19年。闇の魔王に勝利したヒーローも、今では思春期の息子に手を焼く普通の父親であり、一介の中間管理職。何だか、ぐっと身近に感じる設定ですね。そう、これはハリーではなく、その次男アルバスの物語なのです。

反抗期真っただ中のアルバス。ある夏の終わり、魔法省から「逆転時計」を盗み出し、過去を変えるべく時間の旅へ。それを追うハリーたち。時空を超えて全員がたどり着いた先は、あの日あの時あの場所だった…。

ハリー・ポッター全作を制覇していない方でも心配ご無用。完全スピンオフ作品のため、基本の人物相関さえ押さえておけば大丈夫です。

それは、1)ハリーは親友ロンの妹ジニーと結婚して3児の父に。次男アルバスは恩師ダンブルドア校長とスネイプ先生から名前をもらった。2)ハーマイオニーはロンと結婚し、魔法大臣の要職にある。3)セドリック・ディゴリーとは、第4作「炎のゴブレット」に登場した全方位完全無欠のイケメン優等生。学校対抗試合のさなか、ヴォルデモートの呪いにより死亡。…の3点ぐらい。劇中でも適宜説明してくれます。劇中小道具のレプリカがロビーに飾られ、気分を盛り上げてくれます

電話box
電話BOXのレプリカ
レプリカ
肖像画のレプリカ

ファミリーで楽しめて、意表を突く演出に息をのむこと請け合いです。トロントでの上演は7月2日まで。Harry、じゃなかった、Hurry!

<Hamilton 英語難易度★★★★>
早口で韻を踏みまくる、全編ラップの異色ミュージカル。大人気のためRUSH TICKETは出にくいかも。トロントでは8月20日までの公演が決まっています。

主人公はアメリカ建国の父、アレクサンダー・ハミルトン。ワシントンやリンカーンといった超メジャー級と違い、あまりなじみがないかも知れません。そういえば世界史の教科書に出てきたような。

こちらは、少なくともハミルトンの生涯をさらっと予習してから行くことがお勧めです。本人はかなり序盤で「My name is Alexander Hamilton!」と名乗ってくれるのですが、それ以外の人物がヤヤコシイ。同じ俳優が衣装を変えて別役で登場するため、ラファイエットだと思っていたらトマス・ジェファソンだった、なんてことが起こり得ます。女性陣も色こそ違え似たようなドレス。しかも姉妹だったりするので誰が誰やら。

やや難しめですが、HIPHOPのミュージカル自体が新鮮な上、この作品を見なければ知り得なかった発見も多数。何たって、ワシントンの右腕として合衆国憲法を起草し、初代財務長官を務め、中央銀行の基礎を築いた人物。もしハミルトンなかりせば、世界経済の中心はアメリカではなく、ドルが基軸通貨ではなかったことでしょう。

上記2作品とも、ラッシュチケットの購入はこちらから。
https://www.mirvish.com/ticket-info/rush-seats

●番外編
やっぱり演劇は敷居が高いという方は、ぐっとリーズナブルな映画はいかがでしょうか。

<BlackBerry 英語難易度★★>
これこそ、カナダで見るべき映画。おそらく日本で、劇場で見ることはできないでしょう。
「ブラックベリー」と聞いてフルーツではなくあの黒くて可愛いモバイル端末を思い出す人は、おそらく40代以上のミドル世代。

オンタリオ州ウォータールーに本拠を置く「リサーチ・イン・モーション(RIM)」という企業が開発した、スマホの先駆けとなる画期的ガジェットで、2000年代前半に文字通り一世を風靡しました。手のひらサイズで正方形に近く、前面の下半分に黒いキーボードが並んでいるその形状はまさにブラックベリー。ネーミングセンスも秀逸だったなと懐かしく思い出します。

この映画、かなり脚色されてはいるようですがほぼ実話です。ゲームオタクの寄せ集めだったRIMが、ブラックベリーひとつを武器に世界を席捲していく様はまさに絵に描いたようなサクセスストーリー。ところどころコメディー要素もあり、登場人物のキャラも濃く、スピード感あふれる展開で単なる企業盛衰記の枠にとどまりません。

そんな快進撃が続いたのも数年、2007年にアップルがiPhoneを発表して以降、ブラックベリーは市場から急速に駆逐されていきます。かつてシェア45%を誇る絶対王者だったRIMが0%に落ちぶれていく様子も、本能寺で何が起こるか分かっているのに見ずにはいられない大河ドラマのように、やっぱりハラハラしてしまいます。

IT黎明期の雰囲気を懐かしく思い出したいオトナだけでなく、もはやスマホが体の一部と化しているZ世代にも、ぜひ。

<Avatar: The Way of Water 英語難易度★>
言わずと知れたジェームズ・キャメロン監督のSF超大作、何と13年ぶりの続編です。
舞台は地球を遠く離れた惑星パンドラ。俳優さんは皆フンドシ一丁のプリミティブな装いでアクション大丈夫かしらとか、異国(星?)の地でもやっぱり共通語は英語なのねとか細かく気になる点はあれど、一番驚いたのは、13年ぶりにもかかわらず当然のように前作の続きから始まること。主人公ジェイクの過去や地球との関係性なども特に説明なかったような。

しかし!最新技術を駆使した圧巻の映像美の前に、すぐにそんなことは気にならなくなり、何なら途中からストーリーさえどうでもよくなります。圧倒的な色彩の渦、光彩の奔流。ああ、なんて透明度の高い、天国のような海のブルー…あまりのヒーリング効果にまぶたが重ーくなりかけたところでお約束の、絶体絶命の危機襲来。この緩急の間合いも絶妙!映画だと分かっていても、猛魚の牙を逃れようと思わず身をすくめてしまうはず。

前作を見ていない方も、見たけど忘れてしまった方も、13年前には生まれていなかったという方も、オールOK。アマゾンなど各種配信サービスで視聴可能(現時点ではプライム対象外)。本当は映画館の3D大画面で、でなければスマホではなく極力大きなTVでの視聴がおすすめです。