紅葉がピークを過ぎてくると、ついつい「トロントの長い冬がもうすぐ…」と挨拶代わりのように言ってしまいますが、外が寒い季節だからこそほっこりとシアワセな気分にさせてくれる美味しい飲み物があります。私にとってエッグノックやホットチョコレートは甘過ぎてひとくちで飽きてしまうのですが、温かい「マルドワイン(Mulled wine)」と「ホットアップルサイダー」は、頬にあたる空気が冷たくなってくると、アウトドアでも家の中でも毎年必ず飲みたくなる冬のカナディアンドリンクです。
温かい赤ワインにスパイスとオレンジの風味・香りがきいた、マルドワインは、ドイツ系やオランダ系ファーマーの移民が多かったオンタリオ州南部ではグリューワインとかビショップワインなどとも呼ばれています。日本ではホットワインで知られているようですね。
輪切りにしたオレンジ、レモンピール、クローブ、シナモンスティックを入れて弱火で20分から30分ほど温めます。ヨーロッパではマルドワインに砂糖を入れるのが主流のようですが、私はオレンジの甘味が加わったぐらいが好きです。ワインのアルコールがとんでしまうのでお酒として楽しみたいときはブランデーをミックスします。
ホットアップルサイダーのほうは、アニス、クローブ、ナツメグ、オールスパイス、シナモンなどをアップルサイダーに入れ、やはり弱火で温めます。こちらは40分ぐらいかけたほうがスパイスがよく抽出されます。
アップルサイダーは季節ものですが、トロントでは毎年出回るのでフレッシュなものを飲んだことがある方もいると思います。濾過、低温殺菌されていないリンゴ果汁でポリフェノールがたっぷり。それに胃腸を温めリラックスするスパイスを加えてたホットアップルサイダーは身体がよく温まるノンアルコールのヘルシーな飲み物です…が、バーボンかブランデーを入れればさらに美味しく!
これらのホットドリンクを手軽に作るには、スパイスバッグ(ティーバッグのような袋に入っている)を購入し、鍋に入れた赤ワインやアップルサイダーに放り込み、オレンジスライスとシナモンスティックを加えて弱火で温めるだけです。Mulling Spicesで検索すればネット通販でもたくさん出てきますし、クリスマス前ならスーパーでも入手できます。
スパイスをご自分で用意して入れる場合、クローブとシナモンは入れすぎないようご注意ください。1リットルにつきクローブは6個ぐらいまで、シナモンスティックは2本まで。シナモンが多すぎると辛い苦い味になります。クローブは、作用が強いのであまり大量に摂ると危険です。少量なら歯痛に効いたり血糖値を下げるはずの生薬が、アレルギーを起こしたり、頭がクラクラしたりお腹をこわすなどの症状がでるそうです。
ところで、日本のお屠蘇を作る「屠蘇散」にもシナモンやオレンジの皮、山椒などが入っていてちょっと似ていると思いませんか。ふと思い立って昨年の大晦日に、マルドワインのスパイス一袋と山椒の粉少々、シナモン1本を常温の日本酒に一晩つけておき試してみました。味醂は入れませんでしたが、翌朝まあまあのMulled Sake というか「なんちゃってお屠蘇」ができていました!