職業柄映画が好きなのはもちろんのこと、映画館、とりわけニッチな作品を扱う小規模な劇場=いわゆる「ミニシアター」が好きで、トロントへ来る前にまず最初に行った渡航準備はというとGoogle mapでトロントにあるミニシアター全てにピンを付けることでした。カナダの大手シネコンチェーンCineplexや、世界的な映画祭TIFF(Toronoto International Film Festival)が所有する劇場 TIFF Bell Lightboxなどの大きな映画館は皆さんもご存知かと思いますが、実はそれ以外にもトロントには個性的なミニシアターがいくつもあるので今回はその中のいくつかをご紹介したいと思います。
①Revue Cinema
https://revuecinema.ca/
100年以上の歴史を持つトロントで最も古い映画館。その時々の新作映画も上映しつつ、何十年も前の白黒映画、一昔前のヒット映画、日本のアニメ映画、アクション、ラブコメ、ホラー…とにかく様々なジャンルの映画を毎日日替わりで上映しているためラインナップしている作品数もトロント1かと思われます。
ここで観た作品の中で個人的に印象に残っているのは、1973年公開の日本映画『修羅雪姫』(英題:Lady Snowblood)の50周年記念上映。世代的にこの映画のことは知らなかったのですが、この作品に影響を受けたタランティーノが『キル・ビル』の中でオマージュを捧げているというのも納得の異色のアクション劇です。
②Fox Theater
https://www.foxtheatre.ca/
トロント東側のThe Beachesエリアにあるミニシアター。こちらも新作を上映しつつ、テーマに沿った旧作の特集上映を頻繁に行っているため様々な映画に出会える劇場です。
私が鑑賞したのは90年代の日本でもミニシアターブームを巻き起こしたウォン・カーワイ監督作『恋する惑星』(英題:ChungKing Express)と、若き日のマシュー・マコノヒー、ミラ・ジョヴォヴィッチ、レネー・ゼルウィガー、ベン・アフレックなどなど、後のハリウッド・スター勢揃いでカルト的人気を誇る90年代のリチャード・リンクレイター監督作『バッド・チューニング』(英題:Dazed and Confused)。両方もともと大好きな作品ですが、名作を改めて大きなスクリーンで観られるという点が、新作だけの大手シネコンには無いミニシアター最大の魅力です。
③Paradise Theater
https://paradiseonbloor.com
映画の上映だけでなく、コンサートやコメディアンのショーなども行われる多用途な劇場。映画のラインナップは旧作の特集上映がメインで、LGBTQ +フレンドリーなトロントらしい ”Queer Cinema Club”や、悪女が登場する映画だけを集めた”Evil Women”など、他とは一味違った特集の内容も個性的で面白いです。さらに系列のレストラン、カフェ、バー、ワインショップが隣接しているのですがどれも雰囲気の良いお洒落なお店で、映画の前後に食事やお酒を楽しめるのも魅力的です。
④Cineforum
https://reghartt.ca/cineforum
今回紹介する中で、というかトロントの全ての映画館の中で最もぶっ飛んでいると断言できるミニシアター。Reg Harttさんというおじいちゃんが自宅の一室を改装して作った劇場(?)で入りづらさもトロント1。上映しているのも、ドラキュラ映画の原点とも言える1920年代のドイツの無声映画『ノスフェラトゥ』に、そのおじいちゃんが勝手にRadioheadの曲を付けたオリジナル作品だったりと、とにかく突っ込みどころが満載です。
ちなみにこのRegさん、wikipediaによるとかつては学校で映画を教えていたようですが、児童ポルノ画像所持の容疑で書類送検されたことがあるようで(本人は否定)、街中の掲示板にRegさんに関する記事が貼られていたりとトロントの映画ファンの間ではいろんな意味で名物おじいちゃんのようです。ただ、そのことを知る前に普通に映画を観に行ってお話した際にはただの気さくなおじいちゃんという感じでした。
個性派揃いのトロントのミニシアター、いつもとは一味違った映画体験をしたい時にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?