私の○○

私の入院体験 〜カナダの病院で感じたこと〜
Synclex Enterprises Ins.  若狭 輝行

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カナダで暮らすなかで、医療のお世話になることは、誰にとっても他人事ではありません。私も昨年、思いがけず入院を経験することとなり、不安と驚きの連続のなかで、カナダの医療の現実とあたたかさの両方に触れました。

昨年の夏ごろから体調に異変を感じ始め、軽い脳梗塞と診断されました。その後の検査では肝臓の病気も見つかり、結果的に二度の手術を受けることに。これまで大きな病気をしたことがなかった私にとって、海外での医療体験は大きな不安を伴うものでした。現在も経過観察が続いており、定期的な検査と診察を受けながら、慎重に生活を送っています。

ある日、体調が急変し、救急車で病院に搬送されました。サイレンを聞きながら、「すぐに診てもらえるはず」と期待しましたが、実際には何時間も待たされることに。救急患者であっても順番を待つのがカナダの現実であり、慢性的なスタッフ不足と医療機器の不足が、検査や診察の遅れに直結していることを身をもって実感しました。

ようやく入院が決まり、病室での生活が始まりましたが、日本との違いに戸惑う場面も多くありました。特に印象的だったのは病院食です。朝食は甘いマフィンとジュース、昼食はチーズサンドとポテトというメニュー。日本人の私には、体調の優れないときに口にするにはなかなか受け入れがたいもので、日本のやさしいおかゆや煮物が恋しくなりました。

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また、多文化社会であるカナダの医療現場では、看護師の方々のバックグラウンドが多様であることを実感しました。それにより、接し方や説明の丁寧さにも違いがあり、文化や価値観の違いが、思わぬかたちで表れることもありました。丁寧に対応してくださる方もいれば、効率を重視するあまり少し事務的に感じる場面もあり、戸惑うことも少なくありませんでした。

それでも、病院スタッフの皆さんが「患者に寄り添おう」としてくれる気持ちは、どの場面でも確かに感じることができました。真剣に耳を傾けてくださったり、ゆっくりとわかりやすく説明してくださったり、その一つひとつの心遣いが、大きな安心と信頼につながりました。言葉や文化が違っていても、通じ合うことができる――そんな思いを強くしました。

医療費についても不安がありましたが、幸い保険により全額がカバーされ、経済的な負担を心配することなく治療に専念することができました。カナダで生活するうえで、医療保険の大切さを改めて痛感する出来事でもありました。

今回の入院を通して、カナダの医療には多くの課題がある一方で、文化や言語の違いを超えて、患者一人ひとりに誠実に向き合おうとする温かさがあることを実感しました。病気になることは誰にとっても辛い経験ではありますが、その中で出会えた優しさや学びは、私にとってかけがえのないものとなりました。

これからも日々の健康を大切にし、この経験を糧に、前向きに歩んでいきたいと思っています。