カナダ永住権申請といえばCELPIP。しかし何が困ると言って、IELTSやTOEICなどに比べ教材が少なく、対策が立てにくいこと。特に日本人にとっては、8問もあるスピーキングが鬼門ではないでしょうか。目指すべき水準とされるスコア9も、回答例を聞く限りずいぶんとハードルが高いように感じます。
しかも受験料は1回280ドル+税。そうそう気軽に受けられるものでもありませんよね。
私もそろそろ始めなければと思いながらも対策に困っていたところ、先日受験した友人Aがスコア9に達したとのこと。その対策を取材してきたのでこちらにシェアさせて頂きます。
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何はともあれ、まずはテスト形式に慣れるところから。
YouTubeに上がっている無料のウェビナーと無料のトライアルテスト(2回分)から始めます。特にスピーキング対策のウェビナー「Speaking Pro: Target 9+」(前後編、各2時間)はきちんとメモを取りつつ真面目に視聴。
加えて、模擬テスト5セット(各2回計10回分、定価130ドル)を65ドルで購入。この教材、使用期限は6カ月のため、期限が迫ると「やらねば!」という気にさせてくれます。時々50%引きセールをやっているので、期間中に買うと大変オトク。ニュースレターに登録しておけば、メールでセール通知が届きます。
模擬テストをいくつかやってみて、私が発見したのは以下の3点。
1) Q1~8まで全て、それぞれ問題のパターンが決まっている
2) スピーキングは超短編のプレゼンと見つけたり
2) 英語力というより、もはやイマジネーションのテストである
まず1)について。カンのいい人ならきっとすぐに気づくはず。Q1は誰かに助言をする問題、Q2は個人的経験を語る問題、Q3は絵を見て情景描写をする問題、Q4は3と同じ絵から次に何が起きるか予想する問題…と、厳密に出題パターンが決まっていることに。
そこで私は思いました。
ということはもしや、あの極めて日本的なアプローチが有効なのではないか…?と。
それすなわち、「まる暗記」。
何を暗記したかというと、各問題の冒頭と末尾用のテンプレートです。問題のパターンが決まっているということは、受け答えもある程度はパターン化が可能ということ。事前準備した決まり文句で始め決まり文句で終えることができれば、時間も稼げるうえに流暢にしゃべっている印象を残せるのではないかと思ったのです。
次に2)について。CELPIPのスピーキングは対面ではなく、PC付属のマイクに向かって一人で黙々と(?)しゃべるのですが、その録音データを聞いて採点するのは人間の試験官。人間である以上、心理学でいうところの「初頭効果(第一印象がその後の評価にも影響を与え続ける心理的効果)」を免れ得ず、(言葉を選ばずに言えば)序盤次第で印象操作が可能なのではなかろうかと。
もし私が聞く側だったとしたら。滑り出しがよければ最後まで聞く気になりますが、のっけから「あ~、え~」や沈黙が続いた場合、それだけで低い評価をつけたくなってしまうのが人情。 さらに受験する側の心理としても、序盤に失敗するとそれをひきずってしまい、後半もなし崩し的にグダグダになってしまいかねません。
例えていうなら、スピーキングの各問は初対面の相手にいきなり行わなくてはならない、60秒あるいは90秒の超短時間プレゼン。プレゼンならばツカミと締めが最重要であることは論を待たず。少なくとも導入部と締めくくりだけは入念に準備していくのが普通ですよね。
そこで、問題のパターンに応じ、冒頭と結論に汎用性の高い決まり文句を用意して、それを体にしみこませます。 「終わり良ければ全てよし」との慣用句もある通り、出だしに加えて締めもしっかりと話せれば、中盤で多少つっかえても最終的には好印象を残せるはず、という作戦です。
具体例を挙げてみます。
Q1は前述の通り、誰かに助言をする問題です。相手は誰であれ、何かしら困りごとを抱えているのは共通。なので出だしは、
Hello, Jesse. How are you? Oh, you look kind of nervous. Why?
Hmmm, I see. I know how you feel. I felt the same last month.
But don’t worry, I can give you some advice from my own experience. I’m sure it will help.
こんにちは、ジェシー。調子どう?あれ、なんだか元気がないみたい。どうしたの?
ふーん、なるほど。気持ちわかるよ。先月は私もそうだったから。
でも大丈夫、私が自分の経験からいくつかアドバイスをしてあげる。きっと役に立つと思うよ。
なんと、これだけで15秒も稼げるのです(自分調べ)!
相手の名前は問題文に指定されていることもあれば、nephew やcoworkerなど関係性だけのこともあるので、男女どちらでも使える名前で練習しておくといいと思います。そして締めは、
I hope my advice helps you feel better a bit.
You can do it. Just relax and believe in yourself.
If you need further advice, give me a call anytime. I wish you the best of luck!
少しは助けになったかな?
君ならきっと大丈夫。落ち着いて、自分を信じてね。
もっとアドバイスが必要だったら、いつでも電話して。成功を祈ってるよ!
これでさらに15秒。つまり90秒のうち、その場で考えるべきは正味60秒となり、負担がかなり軽減されます。
大事なことは英語がスムーズに話せているかどうかであるため、助言の有効性は問われないようです。少々的外れになってしまったとしても、テンプレ部分のlistenabilityで十分カバー可能です。
Q2のpersonal experienceでは、「学生時代に印象に残った授業」や「誰かに何かを教えた経験」などについて話すよう指示が。そんな何十年も前のこと、記憶にございません…と途方に暮れるのはまだ早い。必ずしも実体験である必要はなく、他人から聞いた話をさも自分のもののように話しても、作り話でもOKなのです。なんなら古びた記憶の引き出しを無理にひっかき回して探すより、ねつ造したほうが早いくらいです。
この点、英語力よりむしろいかに早く話題を思いつくかの勝負。それは私が最も苦手とするところだったのですが、成功談・失敗談のネタを数個ずつメモにし、それを60秒弱で言えるように推敲しておきました。
冒頭/末尾はもちろん自分で作ったテンプレで:
Today I would like to talk about my personal experience which gave a significant impact on my life.
It happened about ten years ago when I was a university student. On that day, I came home drunk.
今日は私の人生に多大な影響を及ぼした個人的な経験についてお話ししたいと思います。
その出来事が起きたのは10年ほど前、私が大学生の時でした。その日、私は酔っぱらって帰ってきました。(←年齢詐称にもほどがある 笑)
At that time, I thought XXX, but now, I feel YYY.
I still remember the once-in-a-life-time experience.
Since then, I try not to get drunk too much.
その時私はXXXと思いましたが、今ではYYYだと思います。
これは一生に一度の、今でも忘れられない経験です。
それ以来、私はひどく酔っぱらわないよう心がけています。(←うそ八百)
私の対策を一言で言うと、自分でテンプレを作り、すらすらと口をつくまで練習するのがミソ。どっかの参考書から丸パクリした文章では、本番で思い出せなくなってしまうかも知れませんので。
上記を応用して、「これまでで最も印象に残った授業」について話すとするなら:
今日は私の人生に多大な影響を及ぼした個人的な経験についてお話ししたいと思います。
その出来事が起きたのは10年ほど前、私は戦闘機パイロットの訓練生でした。
ある日、新任の教官が赴任してきました。教官の名前はトムといいました。
彼は全ての点において型破りな教官でした。
第一に、座学は意味がないと言ってテキストを捨てました。
第二に、…
第三に、…
その時、私は彼のやり方に強く反対しましたが、今では彼が正しかったと思います。
彼と一緒に、実現不可能と思えたミッションを達成できたからです。
国家機密のため詳しくは言えませんが、これは一生に一度の、今でも忘れられない経験でした。
それ以来、私は何事にも先入観を持たずに取り組むよう心がけています。
…を自動翻訳にかけて少々修正したものがこちら:
Today I would like to talk about a personal experience that has had a profound impact on my life.
The event occurred about 10 years ago, when I was a trainee fighter pilot.
One day, a new instructor was assigned to us. His name was Tom.
He was an extraordinary instructor in every aspect.
First, he threw away the textbooks, saying that classroom learning was meaningless.
Second, …
Third, …
At the time I was strongly against his methods, but now I see that he was right.
With him, I was able to accomplish a mission that seemed impossible.
I can’t go into details because of state secrets, but it was a once-in-a-lifetime experience that I still remember to this day.
Since then, I have tried to approach everything without preconceived ideas.
言うまでもなく、これはあの映画にヒントを得た創作、というか妄想です。私は戦闘機どころか車の運転もおぼつかない一会社員ですが、ここまで来たら試験官を唸らせるようなストーリーテリングをしてやろうという気になってきます。ちなみにこの文章、私の場合はThirdをスキップしてかなり早口でしゃべって60秒ギリでした。
文責:友人A
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いかがでしたでしょうか。勉強中の方、一緒に頑張りましょう!この取材記が少しでもお役に立てば幸いです。