特別寄稿

新年のご挨拶 [令和5年元旦]
駐カナダ特命全権大使 山野内 勘二

山野内大使

明けましておめでとうございます。
皆様におかれては、健やかな新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

2022年を振り返れば、サッカー・ワールドカップでの日本およびカナダそれぞれの代表チームの素晴らしい善戦も記憶に新しく、また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからもようやく脱却の動きが見られる等、前向きの動きがありました。

一方、ロシアによるウクライナ侵略により世界の平和と安全に深刻な脅威がもたらされ、国際秩序が挑戦を受けた年でもありました。東シナ海や南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや、かつてない頻度でミサイル発射実験を行う北朝鮮など、とりわけ日本及びインド太平洋地域は地政学的リスクに直面しています。

こうした厳しい世界情勢の中、2022年は、日加関係が「新しい章」へと一層の発展を見せた年となりました。とりわけ、建国以来一貫して歴史的にも地理的にもヨーロッパ・大西洋との結び付きが強かったカナダが、インド太平洋戦略を発表し、自国を太平洋国家であると称してアジア方面に目を向け、インド太平洋に関与していく姿勢を明確に打ち出したことを歓迎したいと思います。

本2023年、日本は、G7議長国として、5月にG7広島サミットを開催し、それに合わせて一年を通し国内各地で14の関係閣僚会合を開催します。世界が直面する諸問題にどう立ち向かい、解決策を探っていくのか、G7議長国として議論をリードしていく上で、G7の一員たるカナダと緊密に連携・協力していきたいと思います。

また、本年は、日本がオタワに公使館を開設し、カナダと外交関係を樹立した1928年から95周年という節目の年に当たります。この間の深く幅広い歴史を踏まえつつ、様々な分野・レベルにおける日加間の重層的な協力関係を深めるべく、一層努力したいと思っております。

日加間のビジネスは、農業やエネルギーという伝統的な分野に加え、脱炭素社会への移行の加速化を視野に入れ双方向で大きく進展しつつあります。今後はLNG、水素やアンモニアといった次世代エネルギー、重要鉱物資源、AI・量子等のハイテク分野での日本からカナダへの投資も期待されます。また、日本食はもはやカナダの食文化の一角を占めており、トロントのミシュラン・ガイドで日本食レストランが顕著な存在感を放っていることは誇らしい限りです。

パンデミック下で続けられてきた厳しい行動制限等が解除され、経済・社会活動を再び活性化させる機会が開かれました。人と人とが直接つながることの大切さ、温かさも再認識されるでしょう。両国間の往来が盛んになり、観光やビジネスでお互いに相手国を訪れる人が増えることも期待されます。ウィズ・コロナの時代にあって、皆様が日々安心して生活し、活動できるよう、力を尽くして参りたいと思います。

本年も、よろしくお願いいたします。