Sumitomo Mitsui Banking Corporation, Canada Branch
Managing Director & Head of Canada Branch 細見宏子氏

今回は2025年4月に英国ロンドンからトロントへ着任された三井住友銀行カナダ支店長、細見宏子氏へお話を伺ってまいりました。在カナダ日系企業および現地カナダ企業に向けたフルバンキングサービスを提供している同行。1982年に三井銀行としてカナダに進出して以来、半世紀近くにわたり、総合的な金融サービスを展開されてきました。現在は約130名の従業員を抱え、預金・融資・外為を幅広く取扱われているほか、グループ会社や提携先を通じて証券業務や投資銀行業務など多様な金融ニーズに対応されています。
細見氏持ち前のフレンドリーで明るい性格には、バンカーとして、また商工会理事としての活動を通じて既に触れられた方も多いと思いますが、学生時代には日本語教師をされていた意外な一面もお持ちです。これまでのご経験、趣味のお話なども伺いました。
―御行の事業内容のご紹介をお願いします。
三井住友銀行カナダ支店は、カナダ全域のお客さまに総合的な法人金融サービスを提供しています。1982年にカナダに進出した当時は日系企業のお客さまとのお取引が中心でしたが、現在は、カナダの企業・公的年金基金のお客さまや、アジア等からカナダに進出されていらっしゃるお客さまとも、幅広くお取引させていただいております。
カナダではトロントを拠点に約130名の従業員を擁していますが、お客さまの多様なニーズに対応するため、米州における約6,000名をはじめ、世界各地で働く計12万名のスタッフと連携しながら、預金・キャッシュマネジメントシステムの提供に加え、コーポレートローン、シンジケートローン、トレードファイナンス、プロジェクトファイナンスといった各種お貸出し、外国為替、各種デリバティブ取引、またSMBC日興証券を通じて各種直接金融取引もご提供しております。
2024年には、米国証券会社のジェフリーズ証券とカナダにおける協働に関する覚書を締結し、M&Aなどの投資銀行分野での協働体制を構築しました。お客さまへ包括的な金融サービスを提供すべく、日々関係メンバーとチームアップして業務に取り組んでおります。
―御行の強みについて、お聞かせください。
SMBCグループ各社との連携により、総合的な金融サービスを提供できることが強みです。また、世界各地の拠点ネットワークを生かした提案力も強みです。先述しましたジェフリーズ証券との資本・業務提携に限らず、インド・インドネシア・フィリピン・ベトナムなどアジアでも現地の金融機関と資本・業務提携を進めており、SMBCグループのネットワークは拡大し続けております。
―今後特に力を入れていきたいことは何でしょうか。
SMBCグループのグローバル事業部門では、当社グループの幅広い事業基盤を最大限活用して、お客さまのグローバルな事業展開をグループ一体でサポートしていく方針です。カナダ支店としては、従来通り日本・アジアのお客さまがカナダへビジネス展開される際のご支援に加え、カナダのお客さまが日本・アジアへビジネス展開される際のご支援にも更に力を入れていきたいと思っております。
-ご出身はどちらですか。また今までのご経歴についてお聞かせください。
兵庫県西宮市で生まれ育ちました。大学卒業まで関西で過ごしましたが、1年間大学を休学し単身オーストラリア・ニューサウスウェールズ州にあるLeetonという小さな町で、現地の中高生へボランティアで日本語を教えておりました。赴任中、当初想定外のトラブルが続き、日本に帰りたいと思う場面も何度もありましたが、こうして海外で働く今、その当時の経験や苦労が非常に役に立っております。
大学卒業後、2004年に三井住友銀行に入行し、まずは兵庫県神戸市の三宮支店に配属され、主に住宅ローンの営業を担当しました。翌年、神戸法人営業第二部という法人営業の部署へ異動した後、2006年に東京のストラクチャードファイナンス営業部へ転勤し、国内・海外のプロジェクトファイナンスを担当しました。
2012年にニューヨークへ赴任し、約4年間、米州地域のプロジェクトファイナンスの営業を担当しました。2016年に、日本の電力・エネルギー会社へ出向させて頂き、当社が投資する海外発電プロジェクトや、LNG(液化天然ガス)のトレーディング会社新設に、微力ながら関与させて頂きました。
2019年に銀行へ戻り、日本の制度金融(JBICやNEXI、JICAとの協調ファイナンス)を担当後、翌年から、グループ長として海外インフラのプロジェクトファイナンスの営業推進を担当しました。2023年5月にロンドンへ赴任し、欧州の非日系企業を担当する営業部の副部長を務め、2025年4月にカナダ支店長としてトロントへ赴任して現在に至ります。
―日本語教師のご経験もあるのですね。様々なご経験の中、印象に残っているプロジェクトについてお聞かせください。
プロジェクトファイナンス担当部署で、私が初めて主担当者として関与したインドネシアの発電所拡張プロジェクトです。縁があって、出向した会社でもそのプロジェクトに従事する機会を得て、お客さまの立場でリファイナンスを担当させていただきました。その際に、プロジェクトに関わるあらゆる業務や事務、複数の利害関係者や相手国政府との調整の苦労など、銀行の立場では見えていなかった側面を少し理解できた、とても貴重な経験となりました。
また、プロジェクトではないですが、ロンドン赴任中、米国投資銀行出身の外国人女性上司の下で、イギリス、フランス、ドイツなどの約8か国に亘る営業チームを一つに纏める仕事を担当しました。これまで担当していたプロジェクトファイナンスとは異なるコーポレートファイナンスの営業部署で、要求水準のとても高い厳しい上司や、各国メンバーとの遠隔ベースでの人間関係の構築、また営業企画やマネジメント業務の理解などに当初本当に苦労しましたが、その時の苦労や経験が、今の支店長としての業務遂行に非常に役立っていると感じています。
―お仕事を進める上で大切にしていることは何ですか。
公平・誠実であること、チームワーク、現場とのコミュニケーションを大切にするように心掛けています。
様々な経験・バックグラウンド・キャリアを持つメンバーに恵まれているのはカナダの特長だと思いますが、その中で強靭なチームを作るためには、緊密なコミュニケーションを通じて相互理解を深めることがとても重要だと感じています。打合せで皆が積極的に発言できるような、タイトルに固執しないフラットな組織づくりは常に意識しています。
また、銀行の仕事は決して面白い業務ばかりではないですので(笑)、特に若いメンバーのモチベーションをどうやって引き上げられるか、キャリアパスをどうやって描いてあげられるかといった点にも気を配るようにしています。
若いメンバーとの会話を通して学べることも非常に多いと感じております。ただ、どうやら若いメンバーは支店長室に入ることに心理的ハードルがあるようで、少しでもそのハードルを下げられたらと思い、支店長室の扉は可能な限りオープンにし、また部屋の中に樹木や香りの良いデュフューザーを置くなどして、少しでも入りやすい・話しやすい雰囲気づくりを心掛けています。
社内だけではなく、お客さまとのコミュニケーションもとても大切にしています。共通の課題をお持ちのお客さまからその対応策についてヒントを頂戴することもありますし、他社へ出向させて頂いた経験のせいか、我々が外部からどう映って見えているかがとても気になるようになり(笑)、お客さまとの会話から得られる新しい発見は、私にとっていつも純粋な喜びですし、時には自省することも多々あります。

―プライベートでは、お好きなスポーツや趣味は何ですか。
決して上手くないですが、中高校時代に部活でやっていたテニスは、見るのもプレーするのも大好きです。社会人になってから、なかなかプレーする機会がなかったのですが、ロンドン赴任中、週末にスクールに通っていました。平日、色々と気持ちが滅入ることもありますので(笑)、週末に無心でボールに向かっていると気持ちが晴れて頭の中もすっきりします。商工会の方にはテニスが上手な方が多いと伺っており、機会があればご一緒させて頂けたら嬉しいですし、車を運転せずとも通えるテニススクールがあれば、是非教えていただきたいです。
花や草木に触れることも良い気分転換になるので、毎年5月から10月に開催されるトロントフラワーマーケットなどでお花を買って自由に活けるのも好きですし、自然あふれるカナダの各地をふらっと訪ね、緑に囲まれながらトレッキングしたり、トロント市街を散策したりするのも大好きです。
のんびりと一人旅するのも好きです。トロントに赴任して以降、バンフ国立公園、モントリオール、ケベックシティ、アルゴンキン国立公園を訪ねました。秋はオタワを訪ねて紅葉も楽しみたいと思っています。

―既に色々な所へ行かれたのですね。カナダ駐在中に今後挑戦したいことはありますか。
できるだけ多くの土地を訪ねて、カナダの歴史と文化への理解をもっと深めたいと思っています。久しぶりに車の運転もしたいのですが、十数年ぶりの運転で、左ハンドル、右車線となると、正直恐怖です。まずは、通行量の少ないエリアを見つけてトライしたいと思っています。
―最後に会員の皆さまへメッセージをお願いいたします。
商工会の皆様には、赴任直後から様々なイベントでご一緒させて頂き、また温かく迎えて頂き本当に感謝しております。商工会では、Community Relationの理事を担当しており、微力ながら商工会の活動を盛り上げられるよう、私なりに努めてまいりたいと思っております。どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
―本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。