リレー随筆

山好きがカヌーに目覚めるまで
CO-Sol Canada Inc. 津上 洋太郎

カヌー

皆様こんにちは、CO-Sol Canadaという会社でエンジニアをしている津上と申します。

早速ですが、私の趣味は登山です。性根はインドア派で運動が苦手なタイプですが、自然を思いっきり味わえる登山だけは別腹です。そんな人間でしたので、トロントへの赴任が決まった時は当然カナダの山に想いを馳せていました。ロッキー程の山脈はないが、オンタリオは広いしそれはもう数えきれないほどの山があるに違いない。お休みの日は登るぞと期待で胸を膨らませていたのです。

オンタリオに山がほとんどないことを知ったのは赴任してからでした。調べる限り小高い場所こそあれどテントを背負って登るような山はみつかりません。さすがに少しはあるだろうと思っていただけに、私にとってはなかなかに衝撃的でした。

COVID-19の規制が緩くなりだしたころ、山ではないにせよ自然を味わおうとテントを担いでトレイルトレッキングをしてみました。森の中を歩くこと自体は楽しかったのですが、あまりしっくりきませんでした。標高の低い森林エリアから森林限界を抜けて岩だらけの稜線にたどり着く景観のバリエーションや、一休みしながら道を振り返ってここまで登って来たのだと実感する瞬間、山頂についた時に見える景色とここまで自分が登って来たのだという達成感は登山でのみ味わえるもので、オンタリオのトレイルにはそれがない。私は物足りなさを感じていました。

そんなある日、弊社COOの伊藤さんからカヌーツアーに誘われました。カヌーキャンプが楽しそうでやってみたい。ツアーガイドを頼めばレクチャーを受けれるし一緒に行ってみないかと。

読書

カヌーで自然の中を旅するというのは、私の大好きな星野道夫のエッセイを思い起こさせるものでした。彼の著作である「アラスカ・光と風」の中に Glacier Bay で氷河の先端を撮影するため、カヤックに荷物を詰めて湾の中を旅するお話がありました。カヌーとカヤックという違いはあれど、憧れていた旅に近いことができる。断る気はみじんも起きませんでした。

そうして私は初のカヌーキャンプに出かけました。操舵方法をレクチャーしてもらいながらアルゴンキンの湖から湖を渡る旅が終わったころには、私はカヌーのとりこになっていました。カヌーを操り湖を滑るように進む楽しさ、湖の中心で味わえる解放感、ルーンやシマリスをはじめとした野生動物を間近で見る体験は私にとって登山の代替たり得るアクティビティでした。

こうして今では毎月のようにカヌー遊びへ出かけるようになりました。周囲に誰もいない夏真っ盛りの湖でライフジャケットを着て泳いだり、鏡のような湖に沈む夕日を眺めたり、焚き火を囲みながら食事をし雑談するのは私にとって最高の癒しです。皆様もご興味を持たれましたら是非カヌーに挑戦してみてください。