リレー随筆

「一人じゃない」
Orbit Academy Co., Ltd 長島 悠也

marathon

それは2019年の夏のある日、酒の席での話でした。「今度トロント・ウォーターフロント・マラソンに出るんだけど、一緒に出ない?」とのお誘いを受け、二つ返事で参加を決めました。その夜、早速エントリーを済ませた私は、約2ヵ月後に迫った大会に向けて準備を始めました。

まず、当時発売されて間もない最新のランニングシューズを店員に言われるままに購入しました。初心者にはオーバースペックとも思われるものを買ってしまうのが形から入る私の悲しい性です。

その後、人生初マラソンの目標を「6時間切りでの完走」に設定し、インターネットでマラソン初心者向けの練習メニューを探し、それに沿って週2〜3の練習をスタートしました。1ヵ月後にはCNタワーからSteels Aveまでの約20キロを走れるくらいになりました。結果的に、それが大会前の最長距離のランニングになるわけですが…。

迎えた当日は絶好のマラソン日和。前半20キロは快調なペースでジャスト2時間。体力的にも余裕があり、「これ、4時間切っちゃうんじゃないか?」などと調子に乗り始めたのも束の間、ほどなく「マラソンの洗礼」を受けることになりました。30キロを過ぎてからの長いこと長いこと。車で走る分には平坦に感じるようなちょっとした坂にも足が止まりそうになるという状況。

runners

もはや走っているのか歩いているのかわからないスピード。「いつまで続くんだ…」と心が折れそうになっている私を支えてくれたのは沿道の応援でした。全く見ず知らずの私に対しても全力で、あの手この手で励まそうとしてくれるのです。沿道に人がいない時にはフラフラな状態でも、人の姿が見え、応援の声が聞こえると体の内側から力が湧いてくるのがよくわかりました。

この経験は私に「応援の偉大さ」「人の支えのありがたさ」を再認識させてくれました。まず、誘ってくださった方がいたからチャレンジができました。親切な 店員が熱心に勧めてくれたので良いシューズを手に入れられました。経験者の適切なアドバイスもありました。ゼッケンなどの参加者キットの受取日に指定の会 場に行けない私の代わりに取りに行ってくれた友人がいました。

一緒に参加した先輩、友人のおかげで当日のレース前の緊張をやり過ごせました。そして、応援してくれる見ず知らずの人たちの存在がありました。これらのどれか1つでも欠けていたら私の「初マラソン完走」はあり得ませんでした。

職業柄、私はたくさんの子どもたちとその保護者の方々と関わります。立場や状況は違えど、誰もが勉強や将来の進路について不安を感じています。コロナによ る規制も徐々に緩和され、9月からは校舎での授業が再開できそうです。今回、自分の初マラソンを振り返りながら、自分が関わることができる方々を支え、勇気づける存在になりたいと改めて思いを強くしました。