リレー随筆

加奈陀歴史探訪
Marsh Canada Limited.  Vice President, Asia Client Services Practice 小谷 琢磨

図書館

この度、4月に東京へ帰任された丸紅の田口さんからバトンを引き継ぎました、Marshの小谷でございます。本年1月に東京よりトロントへ異動となりました。新参者でありながら本随筆を担当させていただくこととなり、甚だ僭越ではございますが、何卒宜しくお願い申し上げます。

Marshは米国本社の保険仲介をメインとしたリスクマネジメントサービスの企業です。グループ企業としてMercer・Oliver Wyman・Guy Carpenterを有し、保険・人事・金融コンサルと多種多様な側面からお客様を支援させていただく総合力が強みです。当地カナダ事業も1914年から開始しており、皆さまのご助力を賜りながら、100年以上にわたりオペレーションを継続しております。私が所属しております Asia Client Service Practice は、日系顧客様のカナダのみならず北米全体のビジネス遂行・拡大に微力ながら貢献すべく、日々活動しております。

私は着任から日が浅いこともあり、トロント在住を通じて始めたことをご紹介いたします。手を付けたのはごく最近ですが、(特に東部の)日加関係の歴史学習を始めました。高校時代は世界史専攻ではありましたが、カナダ史(および日加関係)について教科書で重点的に扱われることは非常に少なく、この機会にぜひ学びたいと考えております。

カナダ東部の日加関係の情報収集を始めたばかりの段階ではありますが、歴史の教科書にも登場するお二方に興味を持ちました。そのお二方とは、高円宮憲仁親王と栗林忠道陸軍中将です。このお二人については名前こそ知っておりましたが、カナダとの深い関係については存じ上げなかったため、今年はまずその内容を中心に学習を進めたいと考えております。本エッセイでは、お二人とカナダの関係について簡単にご紹介いたします(ご存じの方もいらっしゃるかと存じますが)。

高円宮憲仁親王は1978年〜1981年までクイーンズ大学にご留学されておりました。私自身は小中高とサッカー少年であった関係で、「高円宮杯」という大会名でそのお名前を拝見したことがある程度の認識しかありませんでしたが、日加関係に多大なる貢献をなされた方だという事実を知りました。

憲仁親王は残念ながら2002年にお亡くなりになりましたが、その後も高円宮家とカナダとのつながりは現在においても脈々と継続しており、クイーンズ大学の奨学金制度やアルバータ大学の日本センターの名称にお名前が残っていることからも、日加関係に多大なる貢献をされ、かつ尊敬されていることが伺えます。

2019年の久子妃殿下のカナダご訪問時の様子を大使館のウェブサイト等で拝見し、高円宮家がカナダとのご関係を大切にされていることを知りました。当時の様子は、日加協会のウェブサイトに掲載されている山野内大使の『オタワ便り』や、TORJAでも確認することが可能です。

栗林中将は、太平洋戦争末期の硫黄島戦における日本軍守備隊の最高責任者です。映画『硫黄島からの手紙』(2006年)では、渡辺謙さんが栗林中将を演じておられました。映画を拝見した後に栗林中将について調べたところ、駐在武官として米国・カナダ(オタワ)に勤務していたという事実を知りました。駐在期間は1931年~1933年の2年間と短期間ではありましたが、日加外交関係樹立後初の在オタワ公使館の駐在武官であったことから、両国関係の創成期において重要な人物であったことが伺えます。

栗林中将のオタワ駐在当時の様子は、憲仁親王とは異なり、100年近く前のことであり、情報収集が正直難しいのですが、今後、当時の新聞や各種メディアなど、さまざまな角度から情報収集を楽しんでいきたいと考えております。

最近はウェブを介しての情報収集に加え、時間があるときには図書館にも足を運んでおります。トロントは民間に開放されている図書館が多く、それぞれに特色があり、実際に文献探索が目的でなくても、建物を巡るだけでも非常に興味深く感じています。自宅の近くにトロント大学があるのですが、大学図書館をすべて制覇するだけでも一苦労です。

これからもこの図書館巡りを楽しみつつ、歴史学習を継続していこうと考えております。今回取り上げたお二方のみならず、多くの先人たちが多くの困難を乗り越えて築き上げた、現在の良好な日加関係に感謝しながら、トロントでの日々を楽しんで参りたく存じます。最後まで拙文にお付き合いいただき、誠に有難うございました。