リレー随筆

ハイダ・グワイ -わたしたちの島-
田口 耕輔(丸紅カナダ/Marubeni Canada Ltd. Vice President)

Haida Gwaii

この度、(社内リレーですが、そしてThe Japan Societyの)奥澤麻美さんからバトンを引き継ぎました、丸紅カナダの田口でございます。

昨年、夏休みを利用して「ハイダ・グワイ(Haida Gwaii)」を訪れてきました。在トロントのカナダ人の方に話しても「それ、どこ?」と聞かれますが、かつてはクイーン・シャーロット諸島と呼ばれ、先住民ハイダ族を尊重し2010年に改称された、ブリティッシュコロンビア州に属する太平洋岸沖の群島です。

beach

なぜ、わざわざNYから彼の地を目指したのか。実は仕事で「先住民対策」という言葉がよく使われるのですが、日頃感じていたことは、果たして「対策」とは?、過去には負の歴史があり、現在も課題は残しながらも、ルーツとして、独自の文化をもつ民族として、カナダの方々は先住民に対してリスペクトを示しており、対策とは「回避」や「他人任せ」ではないだろう。多文化主義カナダの持つ価値観の一端を学ぶべく、先住民の方と同じ空間で文化や生活に触れ、体験してみよう、と思い立ったのです。

ハイダの文化としてはトーテム・ポールや、世界遺産にもなっているスカン・グワイが代表的です。小ぶりなボートから降り立ち、グワイ・ハアナス国立公園に一歩足を踏み入れると、一面が苔に覆われた神秘的な森と静かな海、そして「ウォッチマン」の方々の笑顔が、私たちを迎え入れてくれます。トーテム・ポールは一つ一つに家族の出自や伝説などストーリーがあり、手入れや加工はせず、朽ち果てて自然に還るままの姿で残されています。

forest

もちろん私は「ただの観光客の一人」ですが、訪れてみると、経済・金銭的な面よりも、伝統文化の継承が、彼らが訪問者を受け入れる目的であることを知ることができます。出会ったハイダ族の方は『「ハイダ」は「人々」、「グワイ」は「島」という意味で、「ハイダ・グワイ」は「わたしたちの、そしてあなたたちの島」という意味です。わたしたちはこの島を守る住民であること、この大地で生まれ自然と共に育ったことに誇りをもっています』と話してくれました。私はこのとき「共存(coexist)」という言葉が頭に浮かびました。

私も海外で出会う方々に「日本人に生まれてよかった」と胸を張って言える仕事、生き方をしたいと、ハイダ・グワイの地で出会った彼ら・彼女らから教えられ、価値観をお裾分けしてもらった気がします。

最後になりますが、これからも商工会の活動に携わっていきたいと願っておりましたところ、辞令でこの3月に日本に帰国いたしました。この場をお借りして、トロント日本商工会を通して出会うことができた皆さまに改めて感謝を述べさせて下さい。暖かく迎え入れて下さり、お世話になり、誠にありがとうございました。