一年半ほど前からとあるアイススケートクラブのレッスンに通っています。もともと小さい頃から運動全般が大の苦手でスポーツは全力で避け続けてきた人生でしたが、トロントの寒く長い冬の間さすがにこもり続けるわけにはいかず、何か始めようと一念発起。初心者でも気軽に挑戦できるウィンタースポーツを探していたところ、たどり着いたのが近所のアイススケートクラブでした。
プロフィギュアスケーターの自由でなめらかな滑りを見ると「なんだか自分でもできそうだ」と錯覚してしまいそうになるものですが、いざ自分で滑ってみると何気ない基本動作の一つ一つがいかに難しいかを実感します。実際に後ろ向きに滑るだけでもコツをつかむまで数か月かかりました。氷の上で転倒することもしばしば、何度ヘルメットにお世話になったかわかりません。一度スケートの難しさを知ると、プロの滑りがいかにレベルの高いものかを思い知らされます。
アイススケートで面白いのは、何かを少し意識するだけでできることがどんどん増えていくこと。ブレードの重心をおく場所、内側・外側のエッジやトーピックの使い方、膝や腕の動きなど、一つ一つを意識しながら滑ってみると、自分にはできないと思っていた技が少しずつできるようになり、ますますスケートにのめり込んでしまいます。当初生まれたての小鹿のような滑りで始めたスケートでしたが、この一年半でワルツジャンプやスピンなども練習するようになりました。新しい技を少しずつ体得していく達成感は、運動が苦手な自分でも続けられるモチベーションになっていると感じます。
トロントには公共のスケートリンクが数多く点在していますが、飽きてきたという方は少し足をのばしてユニークなリンクを訪れてみるのも良いかもしれません。森の中をはしるスケートコースが有名なアローヘッド州立公園、水路が凍って世界最長のスケート場になるオタワのリドー運河、凍った湖面で滑ることができるアルバータ州のルイーズ湖など、大自然を満喫しながらアイススケートを楽しめるのはまさに極寒の国カナダならでは。今年は一か所訪れる予定があり私自身とても楽しみにしています。
最後に、私のコーチは元アイスダンサーのおじいちゃん先生です。彼のリズミカルで軽やかな滑りを見ていると、この歳までこんなに心からスケートを楽しめるなんて、なんて素敵だろうと憧れます。私もいつかかっこいいおばあちゃんスケーターになれるよう、これからも長く練習を積み重ねていきたいと思います。