「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第219回>
ホンダオブカナダマニュファクチュアリング
Honda of Canada Mfg.
Executive Vice President -General Manager 松﨑 功

Mr Matsuzaki

第219回目の新代表者インタビューはHonda of Canada Mfg.(以下HCM)の松﨑功氏へお話を伺って参りました。2021年春、新型「シビック・セダン/Civic」を正式発表されました。今回はフルモデルチェンジということで、更に進化した新たなCivicに今から期待が高まります。プライベートではスポーツがご趣味で、日本では少年野球の監督を長年されていた松﨑氏。監督業を通じて染みついたコミュニケーションの大切さや、ご家族のお話など、魅力たっぷりの内容となっております。(松﨑氏は2020年5月にカナダへ着任され、本インタビューは一年後の2021年5月におこなわれたものです。)

-事業内容のご紹介をお願いいたします。
HCMは、カナダにおけるホンダ四輪製品の生産拠点であり、1986年に量産を開始して以降、今年で設立35年を迎えます。現在、CivicとCR-Vという車種を生産しており、主にカナダ、アメリカ、メキシコを中心に供給をしています。

このCivicについては今年フルモデルチェンジを行い、11代目となる新型を発売します。  HCMはこの重要なモデルをリードする工場であり、まさに今、一丸となって新型車量産準備に取り組んでいるところです。この記事が出る頃には、お客様へお届けできるタイミングとなっているかと思います。

フルモデルチェンジとなると数年かけて新しい技術にチャレンジして取り組む必要があります。CivicはHondaを代表するクルマで、これまでも世界中で多くのお客様にお乗りいただいておりますので、是非、今回の新しいモデルにご期待下さい。

-先日発表されましたね、今から発売が楽しみです。それではここから、松﨑さんご自身についてお聞きしていきたいと思います。ご出身とご経歴についてお聞かせ下さい。
出身は九州の大分県です。1987年に三重県にある本田技研工業株式会社 鈴鹿製作所へ入社をしました。この地で生産現場や技術者として様々な経験をした後、1997年から2002年の5年間、タイへ海外駐在しました。

当時、タイは急激な経済成長を遂げておりました。四輪市場も拡大する中、Hondaはアユタヤという地に新たな工場を建設する計画を立て、私もその一翼を担うために赴任しました。その直後にアジアの経済危機が始まり、一気に景気の良いところから悪いところへ変化してしまいました。苦労もありましたが、当時の経験が現在の業務にも活きている部分が随分あると感じています。

タイ駐在後、日本へ帰任し、本社で生産領域の企画業務に携わり、その後、数年間、埼玉製作所でマネジメント業務を行いました。2018年にアメリカのインディアナ工場へ現地法人の責任者ということで2年間従事し、2020年5月にカナダへ現地法人責任者として赴任し、現在に至ります。

-タイでの初めての海外駐在経験はいかがでしたか。
当時、私自身が若かったこともあり、「自分が責任をもって取り組まなければならない、現地のアソシエイトを指導しなくては」ということを考え、はじめは気負いがありました。もちろん、そういう気概も必要ですが、その時感じたのは現地の方にお世話になっているという感謝の気持ちを持ちながら仕事へ取り組むことが何よりも大切だということです。

自分からの押し付けだけでは海外の仕事はうまく行かないということを強く感じました。当然、会社によって方針は異なるため一概には言えませんが、ベースは「現地の方をリスペクトし、お互いの信頼関係を持って仕事を進めること」にあると、初めての海外駐在の時に学びましたね。

-お仕事以外での現地の生活はいかがでしたか。
タイでは妻と子供二人と家族4人帯同での生活でした。安全なところに住まないといけないということで家を選びましたが、向こうの家はとにかく広いんですよ。具体的に言いますと、家の中のリビングで子供が自転車に乗れたり、サッカーできたりするくらいです。

当時、次男は生後6ヵ月で、物心ついた時がタイで、5歳までそこで育ちました。タイでは交通事情が特殊なため、通勤など移動は運転手さんに運転してもらう環境で育ちましたので、日本へ帰任したときに「お父さんはどうして自分で車運転しているの?」「なんで家の中でサッカーができないの?」と言われたことを鮮明に覚えています(笑)。日本だけで暮らしているのとは違い、異なる環境下で生活をしなければならず、特に子供たちにとっては、たくさんのことを学ぶ良い機会だったのではないかと思っています。

今は、そんな家族とも離れ離れに暮らしています。妻は日本、子供達はそれぞれフィンランドとタイで仕事をしており、私はカナダということで、LINEなどを使ってコミュニケーションを取っています。

-グローバルなご家族ですね!その後、アメリカや本社など、様々なご経験をされていますが、今までで一番印象的だったプロジェクトについてお聞かせ下さい。
これまで技術開発などいくつかのプロジェクトに携わりましたが、私は生産領域を専門に携わってきているため、「生産の工場を新たに立ち上げる」ということに最も醍醐味を感じてきました。先ほど話題になったタイの新工場の立ち上げに携わった経験がまさにそうです。

それまでHondaは日本とアメリカとイギリスの概ねその三つを拠点に生産活動をおこなっていました。いよいよアジアを含めた四極体制になるタイミングで、タイの新工場の立ち上げに携わったので、規模感も大きかったですし、私自身もすごく勉強になりました。

現地のアソシエイトも車など作ったこともなく、仕組みも分からないという状況でしたのでモノづくりの指導と、新工場建設の平行業務は大変でしたがとても印象に残っています。途中、大洪水に見舞われ工事中断など苦難もありましたが量産1号車を見たときは感無量でした。

-松﨑さんがお仕事をされる上で大切にされていることについてお聞かせ下さい。
大切にしていることは二つあります。まず一つは責任者としてアソシエイト一人ひとりが活き活きと働ける環境をつくりあげること、つまり一人ひとりが仕事を通じて達成感を味わえることが大事だと思っています。

「決められた仕事を決められた通りにする」ということは我々製造業で働くものにとってとても大事ですが、それだけでは達成感を味わうことが難しいと私自身、若い頃に感じました。達成感を味わうには、高い目標を掲げ、そこに積極果敢に取り組むことが大切です。失敗を恐れずハードルの高いところにチャレンジし、それをやり遂げた時に真の達成感が味わえると思っており、そのようなマネジメントを常に心がけています。

もう一つは、環境が大きく変化する中で、我々に何が求められているかを既存概念にとらわれることなく考えることを大切にしています。最近の自動車業界を見ると、電動化や自動運転、さらにはコネクテッドに代表されるソフトウェア領域の進化など、かつて経験したことのないような規模で変化しています。

例えば、今の時代、多くの人はスマートフォンがタイヤをはいているような車を欲しいんですよ、きっと。もちろん全員ではないですが。我々が若い時はハンドリング性能やエンジン音へのこだわり、スポーツカーに乗りたいという時代でしたが、時代の流れをみると、もっと違った価値観の方向にぐいぐいと進んでいっていると感じています。

お客様が本当に期待しているものは何なのか、その期待に対して我々はどう進むのかということをしっかり考え、訴求していくことが大切です。こうした中で、HCMの存在意義を改めて考え、自動車業界だけでなく異業種にも学びながら、将来戦略を見極めていくということが経営者として大事なことだと考えています。

golf

-達成感を味わうことで自信に繋がりますね。私も心がけていきたいです。ここでプライベートについてお聞かせ下さい。お好きなスポーツはありますか。
ゴルフ、野球、バスケットボールは観るのもプレーするのも好きですね。カナダに赴任する前のアメリカ インディアナ駐在の時は、現地のアソシエイトとゴルフやソフトボール、バスケットボールをプレーしていました。

残念ながらカナダへ来てからはこの状況下ですので、まだできておりません。野球でいいますとブルージェイズの山口選手が同じ大分県出身ですので、カナダで応援できるのを楽しみにしていましたが、観る前に移籍してしまったのが少々残念です。バスケットボールでは、是非ラプターズの渡邊選手の活躍を観に行きたいですね。

実は、日本にいた時に埼玉県朝霞市で少年野球の監督をずいぶんと長いことやっていました。かれこれ13年間くらいやっていたかな。自分自身がプレーするのはもちろん好きでしたが、子供がどんどん成長していく姿を見るのが何より嬉しく楽しみでした。

子供たちが少年野球を卒団してからも、やがて中学、高校に進学し、夏の甲子園出場をかけた全国高校野球選手権大会県予選のタイミングになると、一緒に活動してきた子供たちは活躍しているかなと気になり、海外にいてもライブで予選を観ます。その時期は睡眠不足になりますね(笑)。当時の教え子も来月から甲子園出場を目指す県予選が始まるので、活躍している姿をテレビで観戦することを今から楽しみにしています。去年は夏の甲子園が中止となってしまったので、今年は是非開催してほしいですね。

そして少年野球の監督の経験を通じて学んだこともあります。先程お話した「仕事を進めるうえで大事にしていること」に少し繋がりますが、試合で成果を出すためにはブレない戦術と子供には分かりやすい言葉で子供の目線に合わせてコミュニケーションをすることがとても大事だということです。

頭ごなしにああしろこうしろと言うだけでなく「そもそもその場面でナゼそれをやらなくてはいけないのか、ナゼそうすべきなのか?」という「ナゼ」のプロセスをきちんと理解してもらうことが重要だと思うのです。それが理解できると例えその子がそういう動きができなくても、「監督の言っていることはこうだけど、僕、代わりにこういった動きができるよ。これでいいかな?」といったように、お互いが理解し信頼し合えることでチーム内に強い絆と活気が生まれそれは良い結果にも繋がってきます。

これは仕事においても全く同じと感じていて、日本でも海外でも変わらないと思っています。あれやってこれやってだけでは、言葉は伝わりますが「どうしてそうすべきなのか」という部分を、しっかり丁寧に説明し、お互い腑に落ちてやるとことが一番大事だと私自身、少年野球の監督を通して体感し、それは今の自分のマネジメントスタイルとして染みついています。

そんなこともあり、野球は観るのもやるのも好きですし、日本にいた時は土日祝日全部野球だったので、会社に行っているか少年野球に行っているかといった感じでした。妻も弁当さえ作っておけば自分の時間があったので良かったみたいですが、逆に雨が降った日なんかは、何をしようか?と大変でしたよ(笑)。基本、アウトドア派なので、一日も早く規制が緩和されるのを願うばかりです。特にゴルフをプレーするのが待ち遠しいです。

-代わりに最近新しく始めたことなどありますか。
料理ですかね。もともと料理などすることがなかったのですが、こういった状況の中ですのでレストランでの外食はできませんし、テイクアウトも毎日お弁当を食べているようで何となく味気がありません。

コロナ禍で外出規制もあり自分の時間が以前に比べてすごく増えましたので、暇つぶしとして自分で調理しようと思って最近、YouTubeを見ながら料理を始めました。以前は美味しいものを食べるために生きてるといった感じでしたが、今は生きるために食べています(笑)。私が料理を始めたことに妻は驚いています(笑)

-今後カナダ駐在中に挑戦したいことについてお聞かせ下さい。
挑戦といいますか、カナダという素晴らしい自然に恵まれたところに来ましたので、色々なところへ行ってみたいですね。残念ながらコロナ禍の状況ですので今は我慢の時期ですが、規制が解除されれば旅行とか、素晴らしいゴルフ場もたくさんありますからベストスコアが出るよう精進したいと思います。

また、部屋にいることが多く動かなかったので体重も少し危なくなってきました。先程、挑戦したいことはという事でしたので、今年は体重とゴルフのスコアを去年の10%削減を目指したいですね(笑)。

-最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
私自身、昨年5月に隔離期間二週間を経て着任しましたが、私自身そこで感じたことがあります。今まで自由に動けていた状況から一変し、仕事に関してはオンラインミーティングに切り替えなければならず、はじめのうちはとても苦痛でした。しかし、隔離期間の二週間の終わりの方になってくると違和感も少なくなってきて、いずれはこういう時代が当たり前になってくるのではと感じながら仕事を行いました。

コロナ禍がきっかけで今まであたり前としてきた働き方や生活が、こういった機会に改めて変えていかなければと気付いた事もたくさん有りました。

商工会会員の皆様もコロナ禍で随分ご苦労されているかと思います。あるいは、こういった状況の中で、チャンスをつかんで日々進歩されている方もいるかもしれません。日本人ならではのFace to Face や会食を通じてのコミュニケーションは難しい状況ではありますが、様々なツールを使用したり、新たなコミュニケーションの方法を見つけて頂いて、業界の壁を乗り越えて活躍していただけたらと思います。

-本日はお忙しい中、お時間頂きましてありがとうございます。これでインタビューを終わります。