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トロント都道府県人会 • 連合会
代表 原 あんず

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沖縄県人会うちなんちゅうの日

県人会は、それぞれの歴史や活動内容が本当にさまざまで、古いところでは50年以上の歴史を持つところもあれば、できたばかりのところもあります。そんな中、連合会ができたきっかけは、宮崎県人会、滋賀県人会、千葉県人会の会長たちの熱い思いからでした。

約10年前、三つの県人会の会長さんたちは「連合会を作りたい」という共通の夢を抱いていました。その背景には、活動が途絶えたり、消えかけている県人会を次の世代に引き継ぎたい、ふるさとや自分たちのルーツを次世代の日系の子どもたちに伝えていきたい、そんな思いを共有しながら、「県人会同士で助け合える仕組みを作ろう!」と考え、アイデアを温め続けていたのです。

その後、2022年、私が代表を務めることになり、「トロント都道府県人会・連合会」が正式に発足しました。

現在では、新しい県人会が参加したり、存続が危ぶまれていた県人会が次の世代に受け継がれて復活したりしています。例えば、長い歴史を持つ沖縄県、滋賀県、和歌山県の県人会も連合会に参加してくださっています。今では、加盟する県人会は27団体になり、加入者も増え続けています。

「ふるさとで繋がる」

これが、現在の連合会の活動を表す一番ぴったりな言葉だと思っています。

自由で多様なつながりを育む県人会の魅力

県人会は、その名前の通り「ふるさと」で人々をつなぐ場として、誰でも気軽に参加しやすい雰囲気が特徴です。もともとは、日本政府の政策で海外へ移住した人たちが、新天地でお互いを助け合うために作った懇親会が始まりでした。しかし、現在の県人会はその枠を超え、姉妹都市交流や、次世代派遣事業や世界大会への参加など、県庁との連携により活動の幅を広げています。

もちろん、トロント内で懇親会を開いて親睦を深めたりと、県人会ごとに活動内容は自由で、多種多様です。この自由さが、誰でも自分らしく関わりやすい理由の一つになっています。また、戦後の移住者の歴史を受け継ぐ県人会もあり、ふるさとの伝統や文化を守りつつ、それぞれのスタイルで活動を展開しています。

近年では、国際化や姉妹都市交流を通じて、県庁、市長、区長など日本の行政と直接つながる機会が増えてきました。さらに、日本各地の国際交流協会や市民レベルの外郭団体と連携し、地域との絆を深める場も広がっています。こうしたネットワークを活用すれば、懇親会だけでなくビジネスレベルの交流や協力も可能になるため、活動の可能性は無限大です。

県人会の一つの大きな文化交流イベントとして、毎年JCCC(Japanese Canadian Cultural Centre)で開催されるお正月会があります。ここでは各県人会がブースを出し、ふるさとを紹介します。地元カナダの方々に日本の魅力を伝えると同時に、日系家族や子どもたちにとっては、自分たちのルーツを感じる貴重な機会となっています。

「自由に、自分たちらしい形でつながることができる」

これが県人会の大きな魅力です。ふるさとを共有する場として、県人会はこれからもさまざまな形で人々をつないでいくでしょう。

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宮崎県人会世界大会

県人会への入会について

県人会への入会には特別な条件はありません。基本的には、どなたでも参加可能です。沖縄県人会など一部の県人会では、メンバーになると年会費を支払うことがありますが、ほとんどの県人会では年会費を取っていません。活動内容によっては、県より助成金を受け取る場合もあります。

例えば、姉妹都市交流や世界大会への参加、さらには次世代教育を支援するための助成金もあります。広島県の場合、広島県のバックグラウンドを持つ子どもたちを一定期間宮崎に招き、現地でその土地の歴史や文化を学びつつ、将来は広島県と各国での架け橋となるような次世代向けの人材育成のプログラムもあります。宮崎県でも同様の取り組みが行われています。

また、会員の中には故郷への思いが深い地元出身の方もたくさんいらしゃいますが、転勤が多い方の場合は複数の県人会に参加していることもあります。例えば、ご両親の出身地が異なる場合、それぞれの県に所属することもできます。要するに、その県や土地にゆかりがあったり、好きであれば誰でも参加できるということです。

県人会連合会が発足した後、東京の都民会ができてからは、数ヶ月で40人近いメンバーを集めるなど、大きな盛り上がりを見せています。東京のような大都市では、生まれ育ちがどこであっても、長年住んでいることが多いため、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが集まるのも特徴です。

県人会の会員は、さまざまな背景や経験を持つ多様な人々で構成されています。例えば、先日の都民会の懇親会では、参加者の中には、こちらに来たばかりで新しいつながりを作りたくて参加した方や、友人の紹介で来た方、こちらに長く住むシニア世代の方々がいます。

県人会の魅力は、年齢や立場に関係なく、共通の話題で盛り上がれることです。例えば、「あの駅の近くのデパート、なくなったよね」とか、懐かしい話をみんなで楽しむことができます。家族や年齢の違いは全く関係なく、共通の故郷を愛する気持ちでつながっています。

実際、数十歳年齢が離れていても、同じ小学校を卒業したという話で盛り上がることもあるんです。そんなふうに、県人会では思いがけない共通点を見つけて、心温まる交流が生まれます。

地元愛に目覚めたきっかけと県人会の世代間ギャップ

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千葉県人会姉妹都市交流

私自身も千葉県人会の存在は以前から知っていました。会長とは昔から一緒に活動していた仲でしたが、正直、当時はあまり県人会に興味が湧きませんでした。東京で学び、就職後すぐにカナダへ移住したため、千葉での記憶が薄く、地元愛を感じる機会がなかったからです。

しかし、介護母が亡くなり、父のサポートのために2015年から2019年の間に日本へ帰国し、地元に戻った際、状況が変わりました。地元・習志野市の姉妹都市交流プログラムに関わるようになり、これが地元愛に火をつけました。習志野市の姉妹都市はアラバマ州タスカルーザ市との姉妹都市交流ですが、地元やふるさとの魅力を再発見するきっかけとなりました。

また、小学校や中学校の同窓会が盛り上がり始め、昔の記憶が呼び覚まされました。母を失ったことも、幼少期の思い出を深く振り返る機会となり、自然と地元への愛情が芽生えました。その流れでカナダに戻ってきた際に、千葉県人会に参加することになったのです。千葉県人会では、近年新メンバーが増えており、私もその対応をお手伝いしています。2024年だけでも15人以上の新規問い合わせがあり、大きな県ならではの活気を感じています。

世代間ギャップと県人会の工夫

県人会には幅広い世代が集まりますが、世代間のギャップや背景の違いが課題になることもあります。例えば、戦後すぐに移住してきた方々と、最近移住してきた方々では、カナダに対する思いやふるさとへの感覚が異なります。同じ「千葉」という共通点があっても、それぞれの価値観や背景に違いがあり、その結果、うまくいかないこともあります。

こうした状況を踏まえ、世代別にグループを分ける県人会もあります。北海道県人会では世代ごとに分かれて活動していますし、新潟県人会や大分県人会のように人数が少ない場合は、まとまりが生まれやすいというメリットもあり同じグループ内で活動しています。

歴史の長い滋賀県人会や和歌山県人会では、最高齢が100歳を超える方もいらっしゃいます。会員には3世、4世の日系カナダ人が多く、英語が主体の活動となるため、私たちのような新しい移住者の世代はほとんどいません。そこで滋賀県人会の会長は、若い世代や次世代の移住者向けに、新しい支部を立ち上げることを検討中です。

沖縄県人会も歴史が深いですが、独特な点があります。沖縄はかつて別の国だった歴史もあり、県人会の中でも特にヘリテージ色が強いのです。世代や言語の違いでグループが分かれているものの、イベントがあると全員が集まるほどの団結力があります。

県人会の発足と新たな展開

現在まだ発足していない県人会についても、希望する方がいれば立ち上げをサポートしていく形を取っています。「リーダーをやりたい」という方がいれば声をかけていただけるよう呼びかけていまし、リーダーという形にこだわらず、情報の窓口として連絡を受ける係を担う形で活動を始める場合もあります。一人または二人で運営している県人会も存在しており、柔軟な形でサポートを行っています。

JCCCお正月会の準備と連合会の役割

2025年のお正月会は、14の県人会がブースを出展する予定です。今年は連合会がトロントのJCCC(日系文化会館)とパートナーシップ開催となり、メインの神社エリアという好立地で活動を展開します。このイベントのルーツは、1975年から2015年まで活動していた新移住者協会が2001年に始めたもので、現在はJCCCのイベントとして継承されています。館長のHelon氏がこの歴史を尊重し、移住者や県人会が主役となる形で進めてくれています。

お正月会の魅力は、各県人会が自分たちの「ふるさと」を紹介できることです。来場者数は2000人を超え、日系人や日本人だけでなく、日本文化に興味を持つカナダ人や国際結婚家庭の方々など多様な人々が集まります。

県人会は、この機会に県庁へ報告を行い、さらなる支援や資料提供を受けるきっかけを作っています。単独でブースを出せない県は、連合会ブースにパンフレットを並べてPRを行い、新会員の募集にもつなげています。このようなイベントは、ふるさととのつながりを維持し、次世代に継承していく重要な取り組みです。

県人会の今後の活動

来年は広島長崎終戦80周年となり、連合会は広島県とともに、各日系団体と共催で1年かけて地元トロント、全カナダで様々な交流イベントを開催していく予定です。

コミュニティ内でのつながりを深め、さまざまな団体と協力しながら、「地域社会にとって何が最善か」を模索していくことを目指しています。

こうした地道な活動を通じて、県人会がカナダ社会でさらに存在感を発揮し、ふるさととの絆を次世代へ引き継いでいくことが期待されています。

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