「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第261回>Mitsui Sumitomo Insurance Company Limited
Chief Representative for Canada  高橋 英臣

今回はMitsui Sumitomo Insurance Company Limitedの高橋 英臣氏にお話を伺って参りました。1986年以来約40年にわたりカナダに進出する日系企業の皆さまに保険サービスを提供されている同社は、世界48の国と地域で事業をグローバルに展開されています。入社後、地域のリテール事業に携わり、その後マリン部門、国際事業部とキャリアを積まれてこられた高橋氏は、2023年4月にカナダへ着任されました。入社当時のお話から、海洋エネルギー部門でのご経験など、たっぷり聞かせていただきました。

事業内容の紹介をお願いいたします。

三井住友海上火災保険(株)の在外支店としてカナダ全土で損害保険事業を行っております。カナダで事業を始めたのは旧住友海上火災保険(株)がトロントに事務所を開設した1986年に遡り、以来約40年にわたりカナダに進出する日系企業の皆さまを主なお客さまとして保険サービスを提供してまいりました。

損害保険業界の集約が進んだ日本と違い、カナダには現在200社近い損害保険会社があるのですが、営業地域や取扱商品は勿論、保険の引受方針も会社によって様々だと思っています。弊社は、企業経営における損害保険の役割や位置付けを踏まえ、お客さまと長期安定的な関係を築かせていただくことを志向して事業を続けており、お陰様で多くの皆さまとお取引をさせていただいております。

御社の強みについてお聞かせください。

弊社はMS&ADインシュアランスグループという保険・金融グループに属しており、日本国内の損害保険事業を軸に、生命保険事業、海外事業、金融サービス事業、デジタル・リスク関連サービス事業という5つの事業をグループで展開しております。

皆さまの中には、日本で三井ダイレクト損保やあいおいニッセイ同和損保の保険にご加入いただいている方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの会社も同じグループに属しております。このグループが持つ事業スケールと知見、そしてイノベーションの力の三点が強みと言えると思います。

一点目の事業スケールについてですが、弊社グループは日本の損害保険市場において、最も多くのお客さまから選んでいただいていることに加え、世界48の国と地域で事業を展開しており、特に成長著しいアセアンにおいては全加盟国に拠点を持つ世界唯一の損害保険グループとして域内の総収入保険料で第一位のプレゼンスを有しております。また、自社拠点を持たない国や地域においても各地の有力保険グループと連携して幅広いネットワークを築いておりますので、お客さまのグローバルな事業展開を面で支えることができると思っています。

二点目のグループの知見についてですが、弊社グループは130年近い歴史を有しており、より良い商品・サービスの開発によるオーガニックな成長とM&Aにより事業の規模と幅を拡大してまいりました。日本と世界において長きにわたり事業を行ってきたことで、世界のリスクに関するデータや過去の大災害の経験等を通じた知見を豊富に得ることができました。知見やデータの重要性がより一層増していく世の中において、弊社グループが持つこのような資産は、お客さまの挑戦をサポートする大きな力になると思っています。

三点目のイノベーションの力についてですが、弊社グループは中期経営計画の基本戦略の一つに「 Value(価値の創造)」を掲げ、デジタルトランスフォーメーションにより社会課題を解決する「CSV×DX」という取組を進めております。弊社グループはシリコンバレーにCVC(コーポレートベンチャーキャピタル:スタートアップに出資をする)を持っていたり、世界各地にオープンイノベーション拠点を設置しており、これらのネットワークを通じて得た先端技術を弊社グループが持つデータと掛け合わせることで、新たなソリューションを開発・提供することができます。

これまでにも、AIを用いて潜在的な交通事故発生リスクを可視化するシステムや、高精度のハザードマップを活用した洪水リスク分析サービスなどを生み出しており、事故後の保険金支払いだけでなく、事故の未然防止という課題解決にも取り組んでおります。データや知見を先端技術と結びつけるというグループ内シナジーを発揮できることがグループの強みだと思っています。

今後の目標や展望をお聞かせください。

カナダにおいてもより多くのお客さまから選ばれる会社となるべく、パートナーやグループのリソースを活用して価値創造力を高め、カナダ事業を中長期的な成長軌道に乗せたいと思っています。

弊社カナダ支店は大手グローバル損害保険会社のカナダ現地法人と業務提携し、パートナーが持つ機能を幅広く使わせていただきながら業務を行っております。この提携によってカナダのローカルスタンダードを充足することは勿論、業務の品質と効率を両立しているわけですが、弊社スタイルの営業や管理業務を経験した私の目からすると、「もっとこうしたらどうだろうか。」と気付く点も当然ながら多くあります。

先ほど申しましたとおり弊社グループは世界で幅広く事業を展開しておりますので、グループが持つ知見をより多くカナダへ取り込むとともに、パートナーが持つ強みと掛け合わせることで、商品力やサービス力を高めていきたいと思っています。ただし、この思いが私の独りよがりになってしまっては大した結果を生み出すことができませんので、お客さまやお取引先さまの満足度や利便性向上を判断基準として皆で大いに議論を重ね、カナダの実態に合わせた価値創造を進めて参ります。

ご出身から今までのご経歴についてお聞かせ下さい。

出身は、神奈川県の秦野市です。生まれてから社会人4年目が終わるまでの26年間を、人口16万ほどのこの町で過ごしました。入社後、最初の配属先は、お城やかまぼこで有名な神奈川県小田原市でした。学生時代、「保険会社でグローバルな仕事をして、都会を颯爽と歩く!」といったイメージを勝手に膨らませていましたが、いざ配属先が小田原になり、漁港の潮風に打たれながら営業をしていましたので、当初のイメージとはだいぶ違いましたね(笑)。

ただ、地域のリテール事業をしている支社でしたので、地場の専業代理店さんや、自動車整備工場や不動産屋さんといった色々な代理店さんがいらっしゃる中で、マナーを含め社会を教えていただき、非常に良い経験をさせていただきました。街の方々の日々の生活に近いところで仕事をしていたこともあり、世間一般でいう「保険屋さん」のイメージがよくわかった気がします。

入社してからかなり経ちますが、当時担当させていただいた代理店さんとは今でも交流がありますので、本当に良いところで最初の四年間を過ごすことができたと感じています。

その後、東京本社にある船舶営業部へ異動になりました。そこでは、海外の船会社へ営業を行う課に配属され、香港、アメリカ、ギリシャなどの会社を担当しました。それまでの四年間は小田原にいて、ハローのハの字も言ったことがない中、赴任初日に香港のお取引先から電話があり、案の定英語でのお問合せで面食らったのを今でも覚えています(笑)。

それが原動力となり、語学学校に一年間、汗をかきながら通いました。言葉ももちろんそうですが、小田原とは全く違う保険を扱っておりましたので、社内ですけど転職したような気分でしたね(笑)。ただ、たくさんの学びがあり、そこで改めてグローバルな仕事のお客さま面白さを感じ、自身の中で転機となりました。

それ以降、私たちの業界で「マリン」と呼ばれる、船舶保険や貨物保険を扱う部門でのキャリアが続きました。海外の船会社向けの営業を四年間経験した後、2013年から二年間は、海上保険部で海洋エネルギー保険の引受や再保険手配を担当しました。2015年には、海洋エネルギー開発業界を担当する営業部門に異動となり、四年間、エネルギー開発会社や商社のお客さまを担当しました。

マリン部門の仕事はダイナミックでとても面白かったのですが、仕事を続けていくうちに海外駐在や海外事業経営への興味が増していき、一旦マリン部門を出て、新たな業務に挑戦したいと思うようになりました。それから希望を出して、2019年にシンガポールへ一年間、経営企画の研修生として行くことになりました。

シンガポール
シンガポールでの研修時代の一枚。金融街の真ん中にあるホーカーと呼ばれる屋台(手前)でよく食事をしていた

当時、既に30代後半でしたので、割と年のいった研修生になってしまい、現地でトレーナーをやってくれた方が年下だったので、彼は相当気を使っただろうと思います(笑)。それから日本へ戻り、国際事業部でアジア事業を担当するチームに配属されました。その後は、カナダに昨年配属され、現在に至ります。

様々なご経験をされたのですね。

なかなか振れ幅が大きく、今回のカナダは予想外の転勤でしたね(笑)。ただ結果として、面白いキャリアを歩ませてもらっているなと感じています。

一番印象に残っているプロジェクトは何ですか。

なかなか人様に言えるような大成果というのはありませんが、とても楽しく従事させていただき、今後も一生印象に残ると思うのは、海洋エネルギー開発業界を担当する営業時代に携わったプロジェクトの数々です。

私が担当させていただいたあるお客さまは、石油・ガス開発設備を設計、建造し、オイルメジャーなどに貸し出し、設備の操業も担うというビジネスを展開されていました。エネルギー開発という事業特性から、事業フィールドはまさに世界中でした。私はお客さまのプロジェクト全般を担当し、リスク管理や保険アレンジの面から事業をサポートさせていただきました。

投資規模が非常に大きく、それに伴い関係者も多くなる海洋エネルギー開発事業においては、数多くある契約の一つ一つの中身が非常に重要となってきます。お客さまは保険を手配する前にビジネスパートナーや顧客との契約関係の草案を練るわけですが、保険もプロジェクトの実現に欠かせない要素であるため、お客さまがビジネスの契約を決める前から噛み込んでいき、プロジェクトのコンセプトや契約書の草案を見せていただきながらその段階でリスクヘッジ策や課題を踏まえた保険の提案させていただくことを繰り返していました。

契約に関わる実務は難しく、お客さまのビジネスの相手側の弁護士から意見を求められ、弁護士事務所に出向いて話をすることもありました。苦労は多かったですが、巨大プロジェクトの契約の複雑さや、契約と保険の整合のさせ方などを、身を持って学ぶ日々でした。契約書は英文でしたので、英文契約書の読み込みや作り込みというのは、そこで鍛えていただき、今でも大変役立っています。

また、お客さまのビジネスの現場を知らないとお客さまと話ができませんので、世界中のオペレーション拠点や設備の建造現場にも足を運ばせていただきました。自分の中でお客さまのビジネスへの理解が日に日に深まり、お客さまの言葉を使って話ができるようになり、どんどん夢中になっていきました。当時関わっていたプロジェクトが今、世界中の海でエネルギーを開発しているのは、何とも嬉しいですね。

リゾート
出張で何度も訪れたリオ・デ・ジャネイロの日常風景

お仕事を進める上で大切にしていることは何ですか

誰とどんな仕事をする上でも、しっかりと論理を固めることを大切にしています。ぎこちないハローで始まった私の海外ビジネスにおいても、言葉は下手でも論理を説明できれば話は進むわけで、仕事の世界の共通言語というのは、英語でも中国語でもなく、論理だと思っています。

独りよがりにならず、まずは物事に対して正しい理解を持ち、その上で極力、広い視野を持って論理をしっかりと固めることを、自分なりに気をつけています。また、それを相手にどう説明するかが一番大事ですので、何かを説明する時には丁寧にステップを踏んで説明するよう心がけています。

プライベートの時間は、何をしてお過ごしですか。

family
今夏の国内旅行の家族写真(カナディアンロッキーにあるボウ湖)

カナダへ来てからなかなかできていませんが、好きなスポーツというとランニングかサッカーですね。以前とりりあむで紹介されたノースヨークのサッカークラブに入れていただき、皆さんと一緒にサッカーを楽しんでいます。

日本にいる時にはフルマラソンにも何度か出場していました。マラソンのトレーニングは一回走りに行くと一、二時間くらい家を空けてしまいますし、我が家は長女がまだ一歳で、今年10月初旬に次女が産まれたばかりですので、まずは家族優先で、落ち着いて時間ができた時にまた色々と参加したいと思っています。

ご趣味は何ですか?

私も妻も美味しいものを食べるのが好きで、日本ではよく二人でお店を探して食事に行っていました。カナダでも色々な人に美味しいお店を聞いたりしながら、食べに出掛けています。雑貨や食器などを見るのも好きで、お店を覗きながら街中を散歩したりもしますね。また、小さい子どもが楽しめそうな場所へ行ったりと、家族との時間を満喫しています。

今後、カナダ駐在中に挑戦したいことはありますか。

月並みですが、時間を見つけて旅行をしたいなと思っています。カナダは広いですし、妻も旅行が好きなので、家族揃って国内・国外ともに色々なところを見て回りたいと思っています。

商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。

商工会会員の皆さまには本当に良くしていただいており、ありがとうございます。ビジネスの面でも、ビジネス以外の面でも、引き続き皆様と良い関係を築いていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。