今回はUNIQLO CANADA Inc. 棚橋右弥氏にお話を伺いました。UNIQLO CANADAは、2016年、トロントにカナダ初出店以来、2024年8月までに6都市23店舗を展開され、「LifeWear」を多くのお客様へ提供しています。店長資格を取得後、日本各地でのご経験に加え、2012年にアメリカ赴任後は、全米の営業部長として約50店舗を管理されていた棚橋氏は2022年9月にカナダへ着任されました。これまでに三カ国で勤務し、22回の引っ越しを経験されたお話、ハワイ店立ち上げのお話など、大変興味深いお話をお聞かせいただきました。
–事業内容のご紹介をお願いいたします。
当社はアパレル小売事業を営んでおり、ユニクロブランドのカジュアルウェアを全世界に展開しています。カナダでは2016年9月にトロントに1号店(イートンセンター)、10月に2号店(ヨークデールモール)をオープンし、事業を開始しました。
2024年6月末時点で、トロント、オタワ、モントリオール、カルガリー、エドモントン、バンクーバーの6都市に23店舗を展開しており、オンラインショップでの全国配送も行い、弊社の「LifeWear」をお客様に提供しています。2022年9月に着任した当時は15店舗でしたが、この一年半で8店舗を新たにオープンしました。今後も毎年新店オープンを予定。北米は当社の成長にとって重要な地域のため、日本の本部からもより多くのサポートを受けています。
–御社の強みについてお聞かせ下さい。
お客様の声を起点に商品の企画から製造、販売までを一貫して行っています。情報製造小売業という形態を採用しているため、川上から川下まで全て自社で担っていることが強みです。また、世界各国で事業展開しており、最新のITプラットフォームを活用しながら、世界中の良いアイディアやお客様の声を共有しています。
即断即決即実行をモットーに、スピードを持って実行することで、常に変わりゆくお客様の要望に応える努力を全社一丸となって進めています。
–今後、特に力を入れていきたいことはなんですか。
カナダの人口は4000万人、そのすべての人々に我々の商品とサービスが届くよう、力を入れていきます。また、北米のみならず、ヨーロッパやアセアン地域でも事業を拡大していく予定です。
お客様の身近に店舗およびサービスがあることを理解していただき、ユニクロを生活の必需品の一つとして感じていただけるようにしていきたいと考えております。
–特筆すべきニュースをご紹介ください。
カナダだけでなく、USも含めた北米全体で、今年から加速度的に新店舗出店を進めています。今後カナダにおいてもショッピングモールだけでなく、路面店などこれまでと違った店舗タイプの出店にも挑戦していこうと考えています。まずトロントで路面店の出店を予定しています。この結果を踏まえ、他の州への路面店出店にも力を入れていきたいと思っています。
さらに、空港や駅、病院といった特殊な場所での店舗展開も視野に入れています。また、カナダにおいてもトロントのイートンセンター店やモントリオールのイートンセンター店、バンクーバーのメトロタウン店などの地域旗艦店において、ユニクロの最新のサービスや商品を提供するだけでなく、店舗自体が会社のブランディングに繋がるようなスペシャルな店舗を目指しています。近々皆様に新しいサービスを提供できる日を楽しみにしております。
北米での事業拡大を推進するために、カナダとUSの組織体制の再編も進めています。各国で同じ組織や人員体制を組むのではなく、隣国であるメリットを最大化するために、本部の組織体制を再編成。可能な部署から北米統括の役割を持たせ、定期的に出張し、日常的にテレビ会議などを活用して、新しい働き方を推進しています。
–ご出身、今までのご経歴など、ご自身についてお聞かせ下さい。
2006年に大学を卒業後、ユニクロに新卒で入社、今年で18年目になります。UMC(UNIQLO Management Candidate)という、早期にマネージャーを育成し、半年で店長を目指すプログラムで入社。最初の半年は東京の仙川店に配属され、ユニクロでのキャリアがスタートしました。その後2店舗を経験し、店長資格を取得。店長としては4店舗を経験し、エリアマネージャーとして八店舗を担当しました。
2012年にアメリカへの内示を受けニューヨークでの勤務を開始しました。当時、ニューヨークに3店舗、サンフランシスコに1店舗があり、私もそこからの事業拡大に参画しました。2013年にはボストンで五店舗の開店を担当、2014年1月にマンハッタンの旗艦店のエリアマネージャーを務めました。そして2015年にはサンフランシスコに移り、西海岸の営業リーダーとして、シアトル、ロサンゼルス、デンバー、またフロリダのディズニースプリング店を担当しました。
その後、2018年にハワイのアラモアナ店を開店しましたが、すぐにパンデミックが始まり、苦しい状況が続きました。パンデミックが収束した頃に再びUS本土に戻り、東海岸全域の営業部長を半年間務めた後、西海岸も含めた全店、約50店舗を担当しました。そして、2022年9月末にカナダへ着任しました。
当時は、色々な都市を経験させることで、より成長のスピードを上げるという考えから配置されていたのだと思います。それによるメリットは確実にあったと思います。
現在までに入社して18年が経ち、三カ国で勤務、22回の引っ越しを経験しました。今では荷造りのプロフェッショナルです(笑)。現在は妻とハワイで生まれた四歳の長男と共に過ごしています。荷物は以前よりも5倍に増え、引っ越しは簡単ではなくなっていますが、新たな環境でのチャレンジを楽しんでいます。
–今までで一番印象に残るプロジェクトは何ですか。
ハワイの事業立ち上げは、非常に良い経験となりました。とにかく大変でしたが、日本の本部のメンバーと協業、オープン後はアメリカ本部と協業し、事業の形も変わりました。さらにパンデミックが発生し、お店を開けられない状況の中で事業と店舗を存続させるためには、オープンが可能になり次第、売上と利益を上げなければならないという状況に追い込まれました。
その時、自分がユニクロという大企業に守られていることに気づきましたが、同時に「自分の全財産を使ってやっている」というマインドを持つことが重要だと感じました。このマインドを持ちながら再建計画を真剣に考え、お客様に喜んでいただき、売上と利益を上げるための計画を立てていました。
その中で、ユニクロのエアリズムマスクという商品が大変喜ばれ、それを必要な人に届けるために寄付活動を行いました。この活動を通じて、お客様が本当に喜んでくださることを体感し、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく。」というFast Retailingのミッションの重要性を心底理解しました。この経験は、今でも自分の仕事の根底にある考え方となっています。
また駐在員としてハワイに住む第一号であったこと、ハワイに仕事とはいえ住む喜びは大きかったです。朝起きてビーチに行こうと思ったら歩いて5分という環境が、贅沢すぎて本当にいいのかなと思うこともありました。パンデミックの間、誰もいないアラモアナビーチやアラモアナショッピングセンターを体感した経験も特別でした。また、長男がハワイで生まれたことで、ハワイに対しての特別な思いがさらに深まりました。
–お仕事を進める上で大切にされていることは何ですか。
即断即決即実行です。また、お客様を起点にすべての判断をしていくことです。現場の経験が長く、現場が好きなので、常に店舗に行って最新のお客様のことを理解し、それに則して、今も未来も計画を変えていく、反映していくことが私個人として大事だと思っています。
–お好きなスポーツ、ご趣味などありましたらお聞かせください。
好きなスポーツはバスケットボールです。小学校の時、アメリカに住んでいた時に、三つ上の兄がバスケットボールをしていて、そこに加わりたくて始めました。それ以来、中学、高校、大学でもサークルに参加していました。
趣味は、休みの日に子供と公園に行ったり、子供と一緒に過ごすことです。以前は美味しいものを食べたり、外食する事が好きでしたが、今は子供との時間が本当に楽しいと感じています。
–カナダ駐在中に挑戦したいことはありますか。
スキー・スノーボードは学生時代にやっていたこともあり、子供と一緒にぜひカナダ駐在中に挑戦しようと思ってます。
–商工会の皆様へメッセージをお願いいたします。
商工会のイベント等になかなか参加できておりませんが、是非カナダのことをいろいろ教えていただきたいですし、一緒に盛り上げていければと思っております。今後カナダのことをより理解されている皆様と情報交換等できれば嬉しく思います。お会いした時には、どうぞ宜しくお願い致します。
–本日はお忙しい中ありがとうございました。これでインタビューを終わります。