今回はCANADA MOLD TECHNOLOGY INC.の立花社長にお話を伺いました。自動車部品を中心に、北米では日系最大規模の金型メーカーとして認知され、小物から大型まで量産型を製造・手配・提供しています。Woodstockの工場には50tのクレーンや大型加工機を有し、大型加工物にも対応。立花氏は、2010年の初めての駐在以来、今回は2回目、2022年7月に赴任されました。プライベートでは釣りに慣れ親しんだ幼少期をはじめ、学生時代は国内、海外で一人旅をされた話などをお聞かせいただき、大変興味深いインタビューとなりました。(聞き手:酒井智子)
-事業内容の紹介をお願いいたします。
弊社は1989年に6社合弁にて設立、自動車向け大型射出成形試作型メーカーとして出発致しました。当初は、当時の筆頭株主である商社様がオペレーションされ、バンパーやインパネ等の大型試作型を製作、後にはお客様からのご要望の変化に伴いNC加工機や放電加工機を順次導入し、量産型製作へ移行してきました。
その後2008年に於けるリーマンショック時に、設立時からの株主の一社であり、私の出向元である静岡県浜松市にありますクリエイティブテクノロジー㈱が筆頭株主として引継ぎまして現在に至っております。
事業内容としましては引き続き、主に自動車部品の各日系サプライヤー様へ向け小物から大型まで、量産型を製造・手配・ご提供させて頂いております。金型製造につきましては社内での製造はもとより、親会社のある日本、グループ会社のあるタイ、協力関係を結んでいる中国と、カナダ国内以外にも製作拠点を持っておりますのでお客様のご要望やご事情に応じて手配させて頂いております。
アジア各方面にて製作・輸入した金型につきましては、金型完成後に一旦は弊社にて受入れまして、清掃・機能確認等を実施した上でお客様へ納入、またその後の改造・メンテナンス・玉成等、アフターサービス含めご対応させて頂いております。
-御社の強みについてお聞かせ下さい。
北米に於いて大型の量産金型を製作できる日系金型メーカーとして認知頂いておりまして、日系という面から比較的難易度の高い金型をご発注頂く等ご愛顧頂いています。また、さきほど申しましたアジア各方面の拠点との連携により、グローバルでの金型製作・サービスのご対応も可能となっております。
設備としましては、50tクレーンや大型加工機を有しており、また金型メーカーとしては比較的余裕のある建屋となっていますので、金型に限らず大型加工物へのご対応も可能となっております。
-大型加工物とは具体的にどのようなものですか。
インフラ関係で使われる大きなパイプや飛行機関連です。トロント周辺のローカル企業様からご相談を受け、材料を支給いただいて加工、納入するという業務にも携わらせていただきました。
-今後特に力を入れていきたいことについてお聞かせ下さい。
お客様からは、米国内含め各拠点もしくはその近隣での改造工事やメンテナンス対応を引き続きご要望頂いており、日々の生産時に発生し得る緊急時の対応やそれに掛かるコストやリードタイムを考慮しますと十分理解できます。
一方、拠点を増やしていくに当たっては一通りの機械・設備の導入や人員の確保が必要となり、現実的になかなか難しい面もある為、日系・米系・専門問わず他の金型メーカー様との協力関係につき注力してきました。
今のところ米国南部とメキシコに所在するメーカー様にご興味をお持ちいただきまして、工事を一つずつお願いしながら実施方法や品質につき少しずつ理解を深めているところです。専門職が故の難しさもありますが、少しでもお客様にご安心頂ける様、引き続き取り組みを進めていきたいと考えています。
また我々の事業は典型的な受注産業の一つとなっており、各メーカー様の開発スケジュールにどうしても依存する為、常日頃より見通しが立てにくいということもございます。カナダ国内だけに目を向けていると仕事量が限定されてしまいますので、これら協力メーカー様に於いて営業的な要素も組み入れることが出来ればと考えております。
もうひとつは、インフラ関連のお話も先程させていただきましたが、弊社の設備を活かせるよう、ひとつに執着することなく色々な面でお手伝いができればと考えております。
-ここから立花氏ご自身の紹介です。ご出身から今までのご経歴についてお聞かせ下さい。
出身は愛知県です。大学まで愛知県で過ごし、卒業後はとある自動車部品メーカーへ就職しましたが、ふとしたところでご縁がありまして、早々に現在の会社に入社しました。入社時の社名は日本プロトという試作型メーカーでして、当時は欧州自動車メーカーの主要な各サプライヤーさんから試作型を受注しまして、その試作型を用いて自社成形機にて製品を成形、その品物を航空輸送にてヨーロッパ各国まで納入するという業務を行っておりました。
製造現場と3Dモデリングを担当させて頂いた後、金型設計を7年間程担当いたしました。金型設計と申しましても弊社の場合、担当業務に対しスケジュールを管理したり、お客様との打ち合わせやトライの立会いに参加したり、時には製造現場に出て自ら手掛けるという様な社風・業務スタイルでしたので、イスに座って絵を描く、という私の設計業務に対するイメージとは異なる業務内容でした。今となっては、これらの経験が色々な面で活かされていると実感しています。
その後にカナダへの異動が命じられまして、2010年に最初の海外赴任となり、帰任する2016年まで、各日系のお客様への窓口や製造管理等、実務サイドに携わらせて頂きました。帰任後はそれまでとは打って変わって営業職へ配属となりまして、2022年7月に再赴任するまで従事、改めてお客様との関わりや数字の面について勉強させて頂きました。
-今回再赴任ということですが、戻って来られた時に懐かしさはありましたか?
最初のほんのひと時だけ懐かしかったです。というのも、人と車とお店がものすごく増えた印象があり、前回の赴任時には自宅から会社に出勤するまでに信号で車が列を作るなんてことがなく、必ず一回でスルスルと出勤出来ていたのが、今では信号で必ず止まりますので、ストレスを感じます(笑)。なつかしさや嬉しさよりも、変わってしまったな~という感じがしました。
-今までで印象に残っているプロジェクトについてお聞かせ下さい。
日本で営業をやらせていただいている時に、あるメーカーさんの方から突然「金型と一緒に生産もしてみませんか?」とお電話をいただきまして、お話をお伺いするとそれは電気自動車関連のお話でした。
ホットな話題でもありましたし、業務の幅を拡げるというところから社内で相談したところ、やってみよう、ということになり、金型の製作と同時進行で社屋の改造や設備の購入、各書類の準備やスペースの確保等々、社内外含めたくさんの方々にご協力いただきながら一年ぐらいかけて準備を進めました。
それまでに弊社には無かった業務に携わらせていただき、とても良い経験になりましたし、客先における業務を少しでも体感することが出来たという面においても良かったと思っております。
-お仕事を進める上で大事にされていることは何ですか。
私自身は人間関係がとても大事だと思っており、社内外問わず、人との信頼関係を大切にするよう心がけています。良く言われることですが、海外に出ますと日本国内と違い、比較的お客様や他業種の方々とより身近に接することが出来ますし、その様なお付き合いの中で、アドバイスを頂いたり助けて頂いたり、ひょんなことからアイデアや知識を得られるということもあり、日頃お付き合い頂いている方々に常々感謝しています。
また社内のメンバーに対しても同様です。様々な国からの移民に依って成り立っている会社ですので、各々の文化から来る考え方を否定せず、理解して良好な関係を築いていくことが、各々が持つ能力を引き出し掛け合わせる手段と捉えております。その中で生まれる、度々見受けられる業務を推進するための言い争いも喜んで見ています。
-プライベートについて、お好きなスポーツや趣味は何ですか。
釣りとゴルフと旅行が好きです。 釣りに関していいますと、私の母親の在所が三重県の小さな漁村でして、小学生の頃、毎年の夏休みには養殖筏か船の上で毎日過ごさせてもらい、釣りをして過ごすということが根付いてしまっているんですね。ストレスリリーフじゃないですけど、時間があれば家族に許しをもらって、一人で高速に乗って入江に入って、筏の上で朝から晩まで過ごすのが日本にいる時の楽しみでした。
ゴルフについては、カナダでのゴルフは日本と比べると敷居も高くないですし、散歩の様に手軽に行けるという点と、色々とお誘いいただいて、教えて下さる方々もたくさんいらっしゃいますので楽しくやらせていただいております。
旅行に関しては、昔から一人旅が好きで、学生時代はバイクや在来線で日本国内を旅しました。四国、九州、東北、北海道まで廻り、当時若かったということもあると思いますが地元の方たちが色々と話しかけて下さったり、困ったときには助けて下さったり、昔の日本映画みたいですけど、人の温かさに触れられてとても良い思い出です。
そうこうしているうちに今度は海外に目を向けはじめ、当時のテレビ番組から流行りだしたバックパッカーをまねてヨーロッパを廻りました。さすがに今となっては家族旅行に留まりますが、それでも機会があれば楽しみにしていますし、いつかまた一人でもふらっと出掛けられたらと思っています。
-色々な経験をされたのですね。カナダ国内は旅行されましたか?
この辺りではモントリオールとマニトゥーリン島へは行きました。あと、実はカルガリーに遠い親戚がいるんです。第二次大戦前、祖父のお兄さんが漁師をしておりまして、漁に出たハワイ沖で嵐に見舞われ遭難、辿り着いた先がバンクーバーだったそうです。
そこから移民されて、その後はちょっと悲しい歴史になりますが、日本人・日系人の収容先であるレスブリッジというところまで移動され、今ではカルガリーとその周辺に何家族か住んでみえます。これまでに2回訪れ、その都度家族ぐるみでよくしていただいて、すごく良い思い出です。
-カナダ駐在中に挑戦したいことについてお聞かせ下さい。
今のところ趣味やアクティビティでは思い当たらないのですが、今回2回目の赴任を踏まえて、以前より長らく弊社を支えてくれている社員の皆さんに、少しでも報いることが出来ればと思っております。日系企業とその進め方に理解してくれる従業員たちの努力を生かすため、色々な面で仕組みを試行錯誤しています。
-最後に商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
立地上、商工会のイベントに参加させて頂く機会が少ないのですが、その中でもお知り合いになれた会員の方々とは引き続き交流させて頂いており、感謝申し上げます。弊社日本からの駐在員は私ひとりですので、お仕事でもプライベートでも、お声をかけていただけるとうれしいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
–本日お忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。