「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第218回>
ノジックテクノロジー
 Knowgic Technology 
President 山口 哲

Mr Yamaguchi

今回はKnowgic Technology代表 兼 チーフコンサルタント 山口 哲氏にお話を伺いました。前職のMaplesoft在籍時より、商工会普通会員として入会されていましたが、昨年コンサルティング会社Knowgic Technologyを設立され、個人会員として再入会いただきました。10年以上に渡るカナダでのご経験をもとに、2020年会社設立後、カナダ企業の日本市場進出や日本企業向けカナダスタートアップ企業数百社をデータベース化し、カナダ進出日系企業向けにAIや機械学習技術サービスに関するコンサルテーションを提供しています。社名の由来や独立のご経緯、趣味であるお料理や家庭菜園のお話なども、スライドを見ながら興味深くお聞きしました。

御社の事業内容についてお聞かせ下さい。
自己紹介も含めてお話させていただきます。私自身、2003年に前々職であるサイバネットシステムという会社へ入社をいたしました。その後、カナダ・ウォータールー市のMaplesoftという会社を2010年に買収しまして、それに伴い私がカナダへ出向しました。約10年間Maplesoftに勤めてきて、この間は中国・韓国の子会社でも役員を務め事業展開を図ってきました。

もともと4年という出向期間でしたが、出向が決まった時点で親会社には「4年で帰ってくるつもりはありません、行く以上はカナダで骨を埋める覚悟でやります!」という話をしており、案の定、4年の出向期間終了後に転籍をしました。Maplesoft側も喜んで転籍を受け入れてくれ、その後駐在員のビザが切れる以前の2016年にカナダ永住権を獲得しました。

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10年近く技術ソフトウェア関連のビジネスをやっていく中で、様々な北米企業とのお付き合いや北米市場を見るにあたり 「カナダ企業のお手伝いをしたい」、また、日本企業とカナダ企業の相性の良さから「自分だからこそ何かお手伝いができる」ということで、2019年にMaplesoftを退職し、自身のコンサルテーション会社Knowgic Technologyを設立いたしました。

-カナダ企業と日本企業をつなぐお仕事ということですが、お客様はどのような方ですか。
前職のMaplesoftでは専ら北米の大学や企業をはじめとして、Maplesoft自体が世界へ進出していたこともあり、アジアや欧州も一部担当しておりました。世界各国からカナダ企業のテクノロジーに対する興味や凄さというものが、非常に高いニーズとしてありました。現時点におきまして、そういった「カナダ企業を助ける」ということをメインにやっております。

自社として主に行っているサービス内容としては三つございます。まず一つ目は、カナダのテクノロジー企業、特にスタートアップに対する日本を含むアジア市場の分析や進出・立ち上げ支援です。例えば、自動車部品製造業向けの人工知能サービスを提供するAcerta Analyticsというスタートアップをお手伝いしております。また、カナダに拠点を設けたいと考えている日系企業様もいらっしゃるので、カナダ進出に関するお手伝いもしています。

二つ目は、AI技術導入です。カナダといいますと人口知能や機械学習の分野で非常に有名である一方、最新のAI技術をどのように自分たちのビジネスに取り込むか、といった部分でコンサルティングが必要なケースが多いです。

さきほど述べたAcerta社は自動車部品の品質向上のための人口知能サービスを展開しているので、オンタリオ州内に拠点を持つ日系企業様にも適用できるものと思っており、ぜひ気軽にお声がけしてもらえると嬉しいです。

三つ目は、日系企業とカナダのエコシステムとのコラボ創出支援、市場分析、戦略策定です。一例として、JETROさん向けの市場分析レポートの作成のお手伝いをしています。ちょうどここ数か月で、カナダのイノベーションエコシステムに関する市場分析プロジェクトが進んでおり、詳細なレポートをJETROと共同で執筆していました。この記事が出る頃には、レポートが公開されているかと思います。

-社名Knowgic Technology(ノジック・テクノロジー)へ込められた意味についてお聞かせ下さい。
まず Knowgicは、「knowledge=知識」と、「logic=論理」を組み合わせて自分で造りました。例えば人口知能技術は、その分野の技術者がいるだけでは役に立ちません。人口知能を適用する製品やビジネス領域についての知識=Knowledgeが必要です。そして、人口知能などの技術と知識を、誰でも使えるようにするためには一定の使い方、つまりLogic=論理が必要だと思っています。この意味で、Knowledge + Logic = Knowgic という社名にしました。

また、現時点ではコンサル業務がメインではありますが、将来的には技術開発支援をするという意味で「Technology(テクノロジー)」という言葉をつけて「ノジック・テクノロジー」という社名にしております。

-日本とカナダそれぞれの企業様とお仕事されているとのことですが、お仕事のスケジュールについてお聞かせ下さい。
2020年2月に会社登記をし、夏頃からクライアントがつきはじめました。昼間はカナダ企業を支援、夜は日本企業と仕事をしています。大体カナダ時間の日曜日から木曜日までそういったスケジュールで仕事をしていますので、家族からは日勤+夜勤と言われております(笑)。金土は比較的自由ですので、子供との時間を楽しんでいます。

-起業されるにあたり、大変だったことは何ですか。
大変だったという点では、文字通り新型コロナによるパンデミックのタイミングでしたので、立ち上げと同時に仕事がなくなるのでは…という不安はありました。幸いなことに、カナダの友人や様々なネットワークを通じた方々とのコネクションでクライアントをご紹介いただいたりと、色々なかたちで支援を頂きました。

独立・開業にあたり、お客様を見つけるというのが一番大変だと思いますが、その辺で一通りの苦労はありましたね。ただ、カナダはみんな助け合う精神が強いと感じておりますので、大変ではありましたが、助けられたなという思いですね。

-御社の強みについてお聞かせ下さい。
弊社はキッチナー・ウォータールー・ケンブリッジ地域にあり、トロントから西へ120kmちょっと、デトロイトまで200kmくらいのところに位置します。文字通りトロントとデトロイトの中間地域ということで、工業系も含め新しいビジネスがこの地域で生まれていることで有名です。

ウォータールー地域の特徴として、ウォータールー大学を中心としたエコシステムが作られており、かれこれ20年以上に渡ってCommunitech(コミュニテック)という団体を中心としてウォータールー地域でのイノベーション・エコシステムを推進しています。

昔からこの地域はウォータールー大学が優秀な人材を輩出し、その人材を採用する企業がどんどん出てきています。加えて、大企業を経験したり起業を行った人たちが中心となり、得られた経験を地域へ還元したり、文字通りエコシステムとして循環させようという考えを持っている人たちが沢山いる地域になっています。

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Communitechの始まりとしても、2000年代前半からGoogleが拠点を設けたりと、そういった特徴に目を付けている人たちが多かったですね。今も量子計算やロボット技術関連、製造業関連の新しいテクノロジー企業がどんどん生まれてきています。

ウォータールー地域の人口は50万人くらいで小さい田舎町ですが、常に新しい技術、分野に取り組む企業が生まれてくるダイナミックさというのは非常に興味深いです。私としては、この勢いを是非日本企業とのコラボレーションを通じて更なる盛り上がりに繋げたいという思いで、事業展開をしております。

もうひとつ力を入れているのが、日本企業様向けのカナダ事業展開です。日本国内でも色々な形で企業間連携をされているかと思うのですが、なかなかエコシステム、つまり「生態系」というところまで展開することがあまりうまくいっていないと思っています。幸いなことに、私は現地に住んで色々な人脈を含め、ノウハウを獲得しておりますので、エコシステムの連携方法を日本の企業様や行政にフィードバックしていきたいと思っております。

興味深いことに、先程のCommunitechや地域の経済開発公社の方々に話を聞きますと「ウォータールー地域の新興企業の多くが、カナダやアメリカ以外の市場としてどこを狙っているか?」という質問に対し、結構な数の企業が日本と答えてくれるようです。

ただ「どこから手を付けていいのか分からない」ですとか、「日本企業と事業展開するにあたってのパートナーはどういうところがいいのか?」といったような疑問が結構あるかと思います。それを支援する形でJETROさんや、カナダ大使館で色々なプログラムを展開していますが、まだまだ認知されていない部分があります。

私自身、カナダには10年以上おりますので、両者の考えや困っていることがわかるかと思いますので、その辺りの支援をしていきたいです。

またウォータールー地域には日本人が500~600人程いますが、残念ながらあまりコミュニティ化しておりません。もう少し日本企業や日本人コミュニティを活性化させたいと思っております。商工会を通じて、地域日本人コミュニティの活発化など私の方でお手伝いできる部分も色々あるかと思います。

自称ですが、ウォータールー地域のイノベーションエコシステムを最も知る日本人だと思っており(笑)、仕事とライフスタイル、コミュニティ化の部分で公私含めて活動していきたいと思っています。

-ウォータールーに来てから山口社長の人生が変わりましたね。
そうですね。もともと長くいるつもりではありましたが、完全に永住権を取得し、自分で会社を立ち上げるということまでは思っていませんでした。人生なかなか思ったようにはいかず、その辺は面白いなと思いますね。

-カナダへは10年以上いらっしゃるということですが、当初からカナダの市場や、働きやすさなどは感じていましたか。
カナダは人種や言葉、考え方など、ありとあらゆる部分で本当に多様性のある国だと、この10年住み、感じています。

差別がないわけではないと思いますが、一方で人種や習慣、文化、考え方の違いを寛容的に受け入れて、新しいものを生み出していくという意識や姿勢が幼少の頃から培われています。そういったことが、私の考え方とマッチする部分であり、私自身カナダに長くいようと思った決め手の一つだと思っております。

お仕事を進めていく上で、大切にされていることについてお聞かせ下さい。
多様性への理解、製品やサービスへの愛情、相手目線で考えるという3点です。私の仕事はコンサル業務ですので、実際に物を製造しているわけでも、サービスを作っているわけでもなく、いうなれば本当に「お手伝いさん」です。

私共のお客様の企業がもっている製品やサービス、また、それを作っている方々は自社のサービスや製品を子供のように愛情を持って取り組んでいると常に感じております。ですので私共も、同じような形でお客様が作っている製品やサービスに対して、愛情を抱くということを原点とし、顧客企業のビジネス拡大を図るためにどのような術があるかを常に考えております。

同じことですが、コンサルという立場である以上どうしても第三者的に見てしまう部分がありますが、クライアントの企業は自分達のビジネスを展開する上で色々な悩みや問題に突き当たります。その困っていることが何なのかという原点を、相手の目線で考えることが非常に重要だと思っています。

幸いなことにカナダの企業さんは、困っている部分は非常に素直に教えていただけるので、それを明確化し、きちんと共有し、優先順位をつけて対策を練っていくということを起点にして課題解決を進めています。

-山口社長ご自身についてお聞きいたします。ご出身はどちらですか。
生まれも育ちも東京です。英語が嫌い、数学が得意ということで都内の理系大学に進学、その後大学院で筑波大へ行きました。大学院修了後、最初の就職先がアメリカ企業でした。英語も話せないのに無謀ですよね(笑)。その後はクボタのIT子会社へ3年ほど在籍し、日本企業におりました。

9.11のときには提携先の米国企業がマサチューセッツ州のウォルサムという町にありまして、そこへ1年程滞在しておりました。この間、日本とアメリカを行ったり来たりしており、そこでの仕事を終えて日本へ戻ったのが2001年頃でしたね。2003年にサイバネットに入社し、その後は冒頭にお話したような経歴です。

気づいたらずっと北米に関連し、英語と接点のある仕事をしているということに不思議な縁があると感じております。

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ご夫婦で楽しみながら作る、酒の肴から世界の料理まで

-人生何が起こるか分かりませんね。少しプライべ―トについてお伺いいたします。ご趣味は何ですか。
2010年に家内と一緒にウォータールーへ移り住んだ当時は、今ほどアジア系のお店はなく、和食のための食材を入手するのはとても困難でした。今は時代の変化と共にT&Tができたりと住みやすくなってきています。

夫婦でお酒を飲んだりご飯を作るのが好きなので、一緒に色々なご飯を作るようになりました。ラーメン作りはよくしますが、4、5年くらい前からおせち料理を毎年年末に作るようになりました。昨年はコロナの影響でJタウンへの買い物も行けませんでしたが、黒豆もそれっぽいものを購入して、かなり苦労しながらも作りました。

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-本格的ですね!
家内は人参を使って飾り包丁で花をつくりました。海外に住んでいながらも、子供達に日本を少しでも感じてもらいたいという思いから、ご飯などを通じて各国料理や日本文化を知ろう、ということでやっています。単に自分達が食べる事が好きというのもあるんですけどね(笑)。

休みのときは、一軒家住まいですので、夏は庭で家庭菜園、冬は近所の公園に行って子供達と雪遊びを楽しんでおります。

-家庭菜園ではどんなものを栽培していますか。
ベタなところで、きゅうり、ナス、ズッキーニから、シソ、最近では知人からもらったミョウガに挑戦しています。

-これからの季節、楽しみですね。今後の夢についてお聞かせください。
家族でのカナダ全州巡りです。私自身はケベック州やBC州は仕事の関係で行ったことはありますが、家族はオンタリオから出たことがありません。ずっとカナダに住んでいるのだからいつかは…と考えていてもなかなか行かずなので、コロナが落ち着いたらケベックやマニトバあたりまで車で行きたいですね。

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-それでは最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願い致します。
前職のMaplesoft在籍中も、商工会会員としてコネクションを作ったことがありましたが、今回新規個人会員という形で改めて入会させていただきました。

オンタリオに新しく来られる方で商工会に関連するところでは駐在員の方が多いかと思います。人工知能をはじめとしたカナダの様々な新しいテクノロジーや、多様性に基づいた新しい考え方は、日本企業の今後の事業拡大にも非常に役立つ部分もあるかと思っております。

一方で言葉や文化、慣習それぞれで色々戸惑う部分もあるかと思います。その辺りを現地に長く住んでいる日本人の当方が間を埋める、橋渡しをするお仕事をさせて頂きたいと思っておりますので、是非お気軽にお声かけいただきたいと思っております。

本日はお忙しい中お時間頂き、ありがとうございます。これでインタビューを終わります。