「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第243回>Sumitomo Mitsui Banking Corporation, Canada Branch
Managing Director & General Manager 岡本 健

SMBC

今回の新代表者インタビューは、三井住友銀行カナダ支店 岡本健氏にお話を伺いました。40年以上にわたり、日系企業やカナダの大手企業と取引をされている同行は、現在約90名のスタッフが活躍、グローバルなネットワークを活かしたサポートを強みとしています。現地採用・派遣従業員のそれぞれの視点から恵まれた環境づくりを重視し、コミュニケーションを大切にされる岡本氏に初めての海外駐在時のエピソードなど、貴重なお話をお聞かせいただきました。

-御社の事業内容の紹介をお願いします。
1982年にカナダに進出して以来、当支店は40年以上にわたり営業を行っております。現在は約90名のスタッフで業務を行っており、日系企業を始めとして、カナダの大手企業、さらには日本以外の国からカナダに進出している企業がお客様です。

支店長として日系企業とのお取引だけでなく、カナダの企業とのお取引も担当しており、景気や業界の動向など、参考になるダイナミックな情報をカナダ企業から直接お聞きすることもあります。そのような情報面からも、お客様の事業のお役に立てるよう努めています。

-御行の強みについてお聞かせください。
まず、数多くの日系企業が進出していることが挙げられます。お客様がいなければ銀行もやることがありません(笑)。日本での関係をベースに、日系企業とのお取引を積極的に行っています。もう一つは、私共のグローバルなネットワークです。

例えばカナダの各銀行に比べると、米州はもとより、欧州やアジアなど、幅広い地域に拠点を持っています。そのため、海外進出を考えているお客様に対して、カナダの銀行に代わってサポートすることができるのも強みの一つです。加えて、日本の銀行はカナダの銀行に比べると規模も大きく、大規模な資金や投資が必要な場合にも対応できる点も魅力ではないかと思います。

-今後特に力を入れていきたいことについてお聞かせください。
一つは脱炭素やESGに関連する取り組みです。近年、脱炭素に関する投資や技術を活用した新たな事業が注目されており、企業経営において重要な要素となっています。当支店では、脱炭素やESGに関連する情報や資金面での支援を通じて、お客様の事業展開をサポートすることを目指しています。

分かりやすい例としては、電気自動車(EV)があります。EVにとって需要な構成要素であるバッテリーに使用される資源の確保、素材の加工から電気自動車の製造までのサプライチェーンの構築に関する動きが非常に活発になっており、こうした分野に関心のあるお客様への情報面や資金面でのサポートに力を入れています。

二つ目といたしまして、カナダ企業の日本を含む海外市場に進出する際のサポートが挙げられます。事業会社に限らず、年金基金や投資家の方々も含め、海外投資を拡大しており、特に日本やアジアなど、他の地域にいるスタッフと連携してご融資やご預金等、銀行サービスを通じたサポートをしています。この2つに関して今後も力を入れていくことを目標としています。

-特筆すべきニュースについてお聞かせ下さい。
今年の4月に当行では頭取が交代しましたが、新頭取は12年前にはこちらの拠点長を務めておりました。実際にカナダの拠点長を経験した方が頭取に就任するというのは、初めてのことですね。

よくカナダを知っている方がトップに就任したことに当行とカナダの縁を感じますし、私自身もこのタイミングで拠点長をやらせていただいているということは非常にありがたく思っております。現地の職員の中には、彼が拠点長だった時から働いているものも多くおりますので、やる気・モチベーションが非常に高まっています。

-素晴らしいご縁ですね。ここから、岡本氏ご自身についてお伺いいたします。ご出身、今までのご経歴についてお聞かせ下さい。
出身は奈良県奈良市です。親の転勤で早い時期に神奈川県横浜市に行きましたので、横浜で大学卒業まで育ちました。

自身の当行でのキャリアのスタートと呼べるのは、入行4年目のロンドン赴任かもしれません。7年間の駐在期間には、ユーロ導入や当行自体の合併等、様々なことがありましたが、その中でお客様の事業にどのようにお役に立つか、知恵を絞ったことが良い経験になりました。

その後、再び東京に戻り、世界各地に進出しているグローバル日系企業を担当する部署に7年間在籍しました。日系企業のお客様と本社側でもお付き合いさせて頂くことになり、より複眼的にお客様のニーズが分かるようになった気がします。

その後の赴任地であるシンガポールでは、アジア大洋州地域をカバーするヘッドクォーターで各拠点の業務戦略企画や営業支援に携わり、アジア各国に新しい拠点を設立するなど、幅広い文化と金融状況の違いを経験しました。

特にミャンマーの支店新設は、外国の銀行が拠点開設するのが民主化後初めてということもあり、現地政府や中央銀行との議論をしながら仕組み作りをしていく、という点で面白かったですね。また、海外2カ国目ということもありましたので、ロンドンとシンガポールを比較できるところもあり、とても興味深かったです。その後、一度東京に戻ってESGに関わる仕事に携わり、去年の4月にカナダへ着任しました。

-初めての海外経験であるロンドンはいかがでしたか。
最初、電話もとれなくて、アシスタントの女性に「あの人、英語喋れないのに、なんで来ているんだ?」と言われるぐらいだったんですけど(笑)、なんとか2、3カ月経つと慣れましたね。その頃から考えると、最近の若い方はきちんと英語を習得していますよね。

歴史や考え方、文化の多様性に触れることができたことは、日本にそれまでずっといた人間からすると非常に新鮮でしたし、私のバックボーンの一つになっていると思います。トロントには、旧宗主国である英国の要素もあり、またアジア系の方々が多いという意味ではシンガポールとの共通点もあり、日々面白さを感じながら生活しています。

-今までで一番印象に残っているプロジェクトについてお聞かせ下さい。
シンガポールでの営業職の経験が特に興味深かったですね。日本からシンガポールやアジア各国に新規進出を検討されているお客様が多く出張でお越しになり、様々な事業について、どのようにアジアで展開していくか、というお話を伺いました。こうしたお客様とのコミュニケーションを通じて、お客様にどのようにお役に立てるかを考えることが銀行業務や海外勤務での醍醐味だと思います。もちろん、結果としてお役に立てたときには喜びも倍増です。

また、銀行にとってお客様の事業に必要な資金を安定的にご提供することが重要ですが、時折予想外の出来事が起きることもあります。東京で勤務していた際には、担当していた大規模なプロジェクト案件について長期間お客様と議論を重ね、最終的にはうまく解決し、ようやく契約が成立した直後にリーマンショックが起こりました。たまたまの出来事ではありましたが、お互いに意地を張らずに対話し、案件を成功に導けたことは大変印象深い経験でした。翌週、早速飲みに行きましたよ(笑)。

お客様のお役に立てるという喜びと同時に、金融マーケットの怖さを感じた一件でもありました。そういったことがないように、リスクを適切に管理し、お客様に対して信頼と安定を提供できるよう、日々心掛けております。

-お仕事を進める上で大切にしていること、独自の経営方針についてお聞かせください。
一つ目は現地採用の従業員が主役となり、幸せになれるような仕事のやり方を意識しています。日本から派遣駐在員はどうしても数年毎に入れ替わるのですが、日頃から現地採用の従業員とコミュニケーションを取りながら、意見や要望を積極的に収集し、彼らが抱える課題や目標を理解することで、皆が自発的により会社をよくするような動きを取ってもらえる環境づくりを心掛けています。

二つ目は日本から派遣されている駐在員に対して、成長できる環境を提供することです。カナダ支店は小さいながらも銀行の機能が全て揃っている上に、人数規模も90名程ですので、従業員一人一人の担当している業務がダイレクトに見えます。

日本では様々な銀行業務を分担・分業して行うので全体を見ることが難しい面がありますが、カナダ支店にいると銀行業務の仕組全体がより直接見えて理解できます。周りで働いている人々とのコミュニケーションを通じて、彼らの業務内容や取り組みについて積極的に話し合い、その経験を次の職場で生かせるようにしてもらえれば、と思っています。

三つ目は長期的な視点を持つことです。「派遣駐在員あるある」かもしれませんが、短い任期ですと、その期間に結果を出すことに集中しがちですよね。短期的な成果に集中することも重要ですが、特に派遣駐在員や銀行員といった場合、自分がいなくなった後の状況や他の人々の成長を考えることが重要だと考えています。

明治時代の政治家・事業家である後藤新平さんの残した言葉に、「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」というものがあります。仕事の種を播いて育て、他の人々に引き継ぐことで、組織やお客様にとっての価値を高めることができます。また、自身がいなくなっても残した種が成長し続けることで、持続的な成果を生み出すことも可能です。昨年着任し、一つ二つ動き出しているものがあり、私が着任している間に実らなくとも、一つでも多く種まきをし、翻って日系企業のお客様、カナダ企業のお客様のお役に立てると嬉しいです。

-プライベートについてですが、お好きなスポーツはありますか。
大学時代にはサークル活動としてバレーボールを楽しんでいましたが、スポーツ全般が好きですね。トロントに来て、野球やバスケットボール、アイスホッケーにさらに興味を持つようになりました。特にアイスホッケーはあまり観たことがありませんでしたが、ここでは皆が一緒になって盛り上がる雰囲気がありますよね。

どんなスポーツでも面白いと感じていて、海外に行くとサッカーの話題が出れば、現地従業員の方とも仲良くなれることが多いです。ロンドンではサッカーの話題が盛り上がりましたし、シンガポールでもサッカーが人気ですね。

部下のローカル従業員が中国系とマレー人系で、お互いにリバプールを応援し、私はアーセナルを応援していました。お互い前の週末の試合の結果をネタにして話していましたし、離任して数年たつ今でも、シーズン後にはお互いメールのやりとりをするくらいです(笑)。スポーツは、共通した感情や興奮を共有することができるので、素晴らしいですね。

-スポーツは万国共通ですね。趣味についてお聞かせ下さい。
ありきたりですけど、本を読むことです。古いタイプだからか、電子書籍は苦手で、やっぱり紙で読む本が一番ですね。トロントの地下鉄は携帯の電波も入りませんし、2、30分の移動中に読んでいると気分の切り替えにもなります。

-どのような本を読まれるのですか?
推理ものとかサスペンスものですね。仕事とあまり関わりのないものを読んでます。

-日本から沢山持って来られたのですか?
そうですね。同じ本を二度も三度も読んでいたりします(笑)。でもたまに半沢直樹とかも読んだりしますよ。あとは旅行ですね。カナダは特に自然が素晴らしいので、もちろん遠くまで行くこともありますが、できるだけカナダ国内を楽しんでいます。今年もようやくいい季節になりましたので、毎週末近場でもいいので、うろうろ歩いています。

去年はバンフとアルゴンキンへ行きました。今年に入ってからはハミルトンの植物園を訪れ、見たことのない動物がいたら写真に撮っています。そういえば先日の商工会のコンペで七面鳥をみました。我々のカートの前を横切っていったので、思わずゴルフをやめて写真を撮ってしまいました。 プレーが遅くなってすみませんでした(笑)。

旅行

-前任地でも旅行は沢山行かれましたか?
旅行は毎年行っていました。ロンドンにいた当時はもっと若かったので結構行っていましたね。でもうちの部下とかに聞くと、行った国の数で負けているんですよ。彼は先日40カ国を達成したと言ってましたが、僕はまだ31ぐらいなんです(笑)。

-これからいい時期になりますので、ぜひ色々な場所を訪れてみてください。
そうですね、これからが一番いい時期ですね。でも冬も楽しかったですよ。特別なことは何もしていませんが、雪が積もる景色を近くの公園で見ることは北海道とかまで行かないと日本でなかなかないですよね。カナダグースを着込んで、うろうろ散歩してるだけ楽しいんですよ、「おー寒い!」といいながら(笑)。皆に、昨年の冬はマイルドだったと言われて、まだ一冬超えた人と認めてもらっていませんので、今年の冬を楽しみにしています。トロントは4月でも雪が降りますが、そういう今まで経験したことのない環境を楽しみながら、楽天的に生きています。

-今後、カナダ駐在中に挑戦したいことについてお聞かせください。
すごくシンプルですけど、CN Tower Climbに挑戦してみたいですね。階段を一番上まで完走できる自信は全くありませんが…。 仕事上ですと日本のお客様がいらっしゃるところへの出張、オンタリオ州を除きますとケベック州とアルバータ州、ブリティッシュコロンビア州へ行く機会が多いのですが、他の地域にも出張できる案件を見つけたいと思っています。例えばマニトバ州やサスカチュワン州といったところにも多くの可能性があると思っております。

-最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
カナダは非常に恵まれた環境であり、冬の厳しさがあるかもしれませんが、治安も良く、家族を含めた安全が確保されていますし、地政学的なリスクも少ないです。とはいえ日本と異なる環境で生じる仕事上・生活上の悩みを商工会のメンバー間で気楽に共有でき、助け合えるのは非常にありがたいと感じています。

積極的に商工会のイベントやネットワーキングの機会に参加して、業務でもプライベートでも良いお付き合いを築けるようにしていきたいと思っていますし、そうした結びつきをきっかけにして、日本とカナダのより良い関係に貢献できればなお良いと思います。

-本日はお忙しい中、お時間いただきましてありがとうございます。これでインタビューを終わります。