「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第241回>
Honda of Canada Mfg.
Executive Vice President-General Manager 中澤 斉之

Mr Nakazawa

トロントから北へ1時間程のAllistonにある広大な敷地の工場で、CivicとCR-Vのグローバルモデルをつくり北米をリードするHonda of Canada Mfg.さん。今回は、Executive Vice President-General Manager中澤斉之氏にお話を伺って参りました。コミュニケーションを常に重視し、プライベートではご家族との時間を大切にされる中澤氏は2007年にも同社へ赴任されており、今回は2度目の赴任となります。塗装部門で長らく活躍されていた当時の経験をはじめ、マネジメントという観点からも興味深い話を沢山お聞かせいただきました。(聞き手: 酒井智子)

-御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。
Honda of Canada Mfg.(以下HCM) は1986年からスタートしCivicの生産に励み、その10年後、二本目のラインを立ち上げて皆さんよくご存じのMDX、Odysseyといったいわゆる「大きな車」もつくってきました。

Civicは、お客様が手頃に買えるような車ということを念頭に置きながら、いかに安くつくり、安く提供するか、またカナダの市場に受け入れられるよう頑張ってきました。カテゴリーの中で、No1売り上げを24年間継続してきましたが、サプライチェーンの影響をうまくかわせず、昨年度はこれを逃す結果となり非常に残念でした。

北米全体の事業構想の中で、国境の北側にいるというメリットを活かして、一番売れる車を更に効率よくつくろうということで、創立から36年たつ現在はCivicやCR-Vに絞って生産をしております。

昨今は、これらグローバルモデルの立ち上げをリードしていくという大変大きな役割を付与されています。何拠点でもつくるモデルですので、全体最適にするにはどうしたらいいか、そしてそれを次のモデルでも同じようにやっていくには何がキーポイントなのか、という振り返りを常にしながら生産活動を進めています。

そのような役割のもと、昨年はCR-Vの新しいモデルを立ち上げ、その1年前には現在のCivicが発売され、立て続けの新モデル発売という経験の中でやはり苦しさもありましたが、カナダで働いているアソシエイトは胸を張って、モチベーションが上がるような良い経験になっていると感じています。今年の5月には1000万台生産の記録を達成しますので、あらためて多くのお客様に弊社の製品を選んでいただけたのだな、という嬉しさが強くこみ上げてきますね。

prime minister

-御社の強みについてお聞かせ下さい。
36年という長い間自動車をつくってきた経験の中で、研究開発、購買、セールス、生産の間で連携を深め、ごった煮のようになって仕事をしております。 Hondaには、製品開発の初期段階に生産側の意思を入れていく文化が強くありますが、それを通して全員で車つくりのことをよく勉強しながら、商品につなげていくということを絶え間なく現在もやっております。

一方、単一機種を生産するラインなので、新機種の立ち上げの間隔が長く、その間にこだわるほどの熟成が進みます。それがある意味強みとなり、実績としても要所要所に見えてきていることから、北米のリード国となり新機種を立ち上げていくといった嬉しい重責も受けられるようになってきております。まさにそこがHCMの強みだと思います。

-今後の目標についてお聞かせ下さい。
生産が主たる業務となっておりますのでローコストでの生産を実現し、それを維持するだけでなく、更に改善すべく一丸となって業務に取り組んでおります。コストカットのようなことはやりたくないと思っておりますので、皆と合意を図りながら、より高い目標に向かって改革しようとしております。

いかに限られた資源を一番いいところに、一番いいかたちで投入しながら、品質と供給、更には安全性といった車の機能も含めて、効果的にアウトプットできるかが必要なことだと思っており、目指しているところでもあります。

お客様にも、グループの中でも選ばれる会社になることはもちろん、今後電動化の時代に向け色々な業種が混ざってきた中で、もしかしたら他社との協業も一つの道になるかもしれませんので、その時は外からも選ばれるような会社になることが、最終的に誰からも存在を期待されるような会社なのだと思っております。そうなることでアソシエイトたちが胸を張ってHCMの社員だといえるようにする、これが目指すところです。

-前任の松﨑氏にお話しを伺ったのが2021年6月でしたが、それからの変化などございますか。
よかったと最近感じることは、コロナ禍から少しずつ抜け出していることです。以前はHCMはアソシエイトの家族に工場見学をしていただいたり、汗をかきながら作った焼きそばをアソシエイトに振る舞ったり、要所要所でイベントで行っていました。ようやくそういったことが出来るようになったということが、ものすごく嬉しいですね。

そういう場面がないとアソシエイトとの距離感が掴みづらいので、日々の苦労を共に乗り越えた感謝を込めて、Hondaのファミリー感というのか、一体感を強められる機会が設けられるのは非常に嬉しいですね。

-だんだんとそうなってきたのは、昨年あたりからですか?
昨年の6月に「よし、皆に焼きそば振る舞うぞ!BBQ振る舞うぞ!」とマネージメントの皆さんから協力ももらいながら両工場の目のまえで屋台を広げてやりました。アソシエイトが「焼きそばちょうだい」と立ち寄ってくれる時のその一言と、笑顔でのコミュニケーションができる、それだけでも全然違いますね。

たとえ「この間の焼きそば、まずかったよ。3年前の方が旨かったよ」など、がっくりするような言葉でも会話に繋がります。共通の話題がないと会話が始まらなかったり、コミュニケーションが活発化ができなかったりというのはどの世界でも一緒だと思うで、皆で共有できる話題になるような活動をなるべ多く実行したいと思っています。デジタル画面では絶対伝わらない。そこから抜け出せたことが本当に嬉しいです。

-中澤氏ご自身についてお伺いします。ご出身から今までのご経歴についてお聞かせ下さい。
出身は神奈川県横浜市です。親の海外駐在に伴い、ニューヨークに5年程いた帰国子女です。小学校が終わる頃に日本へ戻って来た後、中学から大学まで日本で進学しました。大学でその先の進路を決めるとき、研究開発が強く、ぐんぐん伸びていた期待感いっぱいのHondaへ入社したいと思い、1996年に入社しました。

入社後は塗装部門へ配属され、2007年まで材料導入の技術屋をやりながら、2007年に初めての海外駐在として赴任したのが、ここHCMでした。それから7年間、2014年にワークパーミットが切れるその日まで駐在し、その後いったん日本へ戻りました。帰任後もしばらくは埼玉で塗装技術のリーダーを務め、しばらくは塗装技術の発展に関わる業務に携わっておりました。

その後、車一台分の原価を低減するプロジェクトのリーダーをあずかり、それが終わった2020年にインディアナ工場へ赴任しました。そこでは2年間、コロナ+離職+サプライチェーンというキーワードと戦いながら、拠点長を務めさせていただきました。そして、2022年4月にカナダに舞い戻ってきました。

-こちらは2回目の赴任となるのですね。数年ぶりに戻ってこられて、やはり懐かしさなどは感じますか?
そうですね。2回目の赴任ですので、現在のシニアマネージメントのメンバーは知っている人ばかりです。変わっていることはいっぱいありましたし、変わっていないこともいっぱいありました。

HCMは長い歴史を積んできた会社ですので、持ち前のどんどん進める力もありますし、一方で硬直化している部分もありました。前任のインディアナの拠点が比較的若い会社でしたので、新機種の立ち上げなど、より集中して頑張ってきた要素もありますが、前へと一歩踏み出せば、皆一緒に動いてくれるというようなフレキシブル性を高く持っていました。

HCMは新機種リードを任されるほどの力量を持っていますが、それは安定した環境の上で構築してきた部分もあり、昨今カナダでも見られる労務環境の特性変化などを受け、苦しむところも多々あります。時に「こっちへシフトしてほしい」と感じることがあります。

時代の変化に合わせて調整していくのではなく、しっかりと構築した幹に育っている色々な経験値や、リーダーシップ、或いはプロフェッショナルとしての自負を剥ぎ取ることなく、その幹をどのように最適な位置へずらしていくのかということを、今シニアマネージメントと一緒に取組んでいることです。

-今までで一番印象に残っているプロジェクトについてお聞かせ下さい。
自分が成長したと感じたプロジェクトは日本へ帰国してから数年経ってから携わった一台分の原価をどのように下げていくかという原価低減のプロジェクトです。今まで自分が塗装屋さんとして培ってきたところとは全然違う幅の仕事でしたので、一気に学ぶことが多くなりました。学ぶ中で、面白いことが沢山分かり、会社の中の仕組みも分かった、そういった学びという点で印象に残っています。

印象に残るプロジェクトは大体失敗したプロジェクトなんですよね(笑)。印象に残っているのは、入社して最初にかかわったプロジェクトです。塗装は液体の塗料を塗るイメージですが、ファンデーションのように粉を吹き付け、それを焼き付けて塗膜にするというプロジェクトの材料担当者を入社2年目で任されました。

Hondaにとっては初めてのことではないのですが、新しい材料技術と施工方法だったので、市場に出す前にその実力を、どこかで、相当なボリュームで検証しなければなりませんでした。随分昔のHonda車は錆に対する感度が非常に高く、特に年数が経ってから大きな問題に発展しますので、それを最も懸念していました。その実力を試すのに最も良い地域が北米でしたので、HCMにもたくさん車を送り、駐在員の皆さんにも乗り回してもらいました。

結果、想定していた以上の不具合が発生し、そこでプロジェクトは終わってしまい、入社して初めて大きな壁にぶち当たった経験でした。入社して初めてのプロジェクトで、何億という金額に関わり、研究開発や製造の領域、また販売したらどういった問題がおきるのか、お客様にどんな迷惑をかけてしまうのか、一気に経験が広げられるプロジェクトでした。悔しさと痛みも含め強く記憶に残っています。

-お仕事を進める上で大切にされていることについてお聞かせ下さい。
日本にいても海外にいても共通するのが、必ず壁にぶち当たることがあるということ。自分がぶち当たって止まった状態では皆も動けないので、歩き続け、押し続けていかなくてはいけない時があると思います。その時に、「成せばなる成さねば成らぬ…」と思いながら、「There is a way (必ず道はある)」と模索することが大事だと入社してから感じています。

立場がどうであれ、自分が先に進もうと思うか思わないかで、周りに与える影響は相当大きいと思います。一歩前に踏み出すことは怖いですが、そういう姿勢を示すことが自分の成果としても、周りに出してもらう成果としても大事であり、それを心掛けております。

もう一つ、自身の海外経験がHonda経歴の1/3ほどとなりますが、特に海外では、コミュニケーションができないと意思が伝わらず、誤解を招いたり、最大効果が発揮できない状況が増えると思います。コミュニケーションをどのようにとるか、どう相手に伝えるのかということを特に意識しています。中澤はどう思っているのか?ということをきちんと皆に伝える必要があると思っております。

我々駐在員とカナディアンとの連携をいかに活性化していくか、プラスそれぞれの素質、度量をどう引き出すか、すべてコミュニケーションしてこそ最大効果が発揮できると思っておりますので常に念頭に置いて仕事に励んでいます。

-プライベートについて、お好きなスポーツは何ですか。
最近ほとんどスポーツはしていませんが、よくやっていたスポーツは意外や意外、テニスやスキーでした。スキーを始めたきっかけも実はミーハーで、「私をスキーに連れてって!」という映画がありましたよね。それを観て車の上にスキーを乗っけて雪山へ行く!ということをやりたいが為にスキーを始めました(笑)が、気がついたら毎週のように雪山に行っていましたので、今までのスポーツの経験の中で一番楽しかったですね。

ゴルフ好きな方はたくさんいらっしゃるかと思いますが、私はあまり行きません。ゴルフというスポーツは自分との戦いで(特に私にとっては)もちろん楽しいですが、平日は朝から晩まで会社にいますのでゴルフは週末がメインになりますよね。子供たちもまだそれほど大きくなっておらず家族全員で行動できる年齢なので、週末は家族との時間として取っておきたいというのがあります。そこが今は優先順位が高いので、ゴルフはあまり行ってないですね。

-今回2回目のカナダ駐在ということですが、スキーは楽しまれましたか。
そう思って北の方へ行こうと思いましたが、足を折りそうで(笑)。前回の駐在だったらまだ若かったので、足を折っても影響はほとんどなかったと思いますが、今折ったら皆に怒られちゃうので今は行かないですね(笑)。最近は自分でスポーツをするよりも、子供達を連れてインドアスイミングに行ったりと、子供達のスポーツを支援する方が多いですね。

-ご家族思いですね。趣味はございますか。
趣味といえるか分かりませんが、先ほど申し上げたように家族で出かけることです。子供たちが自分である程度のことができるようになり、意見や意思を引き出せる年齢になってきていますので、一緒に行きたい場所や、やりたいことを模索しながら出かけたり食事をしたりということがとても楽しいですね。今まで行ったことがない場所へ行ってみたり、食べたことがないものを食べたりすることが週末の楽しみです。

-トロントでおすすめの場所はありますか?
前回の駐在の時も、つい先日も行ってきましたが、Casa Lomaです。以前訪問した時とはずいぶん変わっていて、レストランが拡大されていたり、スマホで音声案内を聞いたり、自分が勝手に思っているCasa Lomaらしさが薄れていましたが、一方で地下トンネルが解放されていて、今まで「何だろう、あれは?」と思っていた、対岸に見える塔まで行けるようになっていたので、新たな発見で感動しました。

-今後カナダ駐在中に挑戦したいことについて、お聞かせ下さい。
色々な方と一緒に進めることで、初めて仕事は成立しているので、結果的にお互いがよかったと思えるよう、お取引先様、HCMのアソシエイト、他の拠点の人達とコミュニケーションを深めながら、より掘り下げていけるようなコネクションを構築していきたいと思います。

優先順位もあるので、中々難しいかもしれませんが、しっかりとした融合点がないと表面上で終わってしまいますので、今後の大きな変革に伴い立ちはだかる壁を、しっかりと融合点を作って、一つずつコツコツと乗り越えていきたいと思っています。

自動車産業は素早く動くことが非常に難しいですが、俊敏に動かないとどんどん取り残されて行ってしまいます。でも、実は動かなくてもいいじゃんとか、どこを攻めれば動く量が一番少なくて済むのかなど、そういったところを詰める連携は意外とできていない所があると今までの経験で感じています。

上手くいくかはわかりませんが、この拠点の長をしている間にそれぞれの事業体を効率よくどう繋ぐかということにチャレンジしていきたいです。プライベートでは今まで意外と国内旅行に行かなかったので、今年はカナダ国内をメインに新たな発見をしに行きたいと思っています。

-最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
カナダという日本から遠いところで、直接の仕事の繋がりがなくても同じようにこちらで頑張っている皆さんに対して感謝もいたしますし、一緒に頑張っていきたいと強く思っています。昔のような海外事業展開とは違ってきていて、その土地のその国の一つのアイデンティティのように各社さんなられていると思いますので、私もHondaを更に強化していきたい、存在感をもっとあげて行きたいと思っています。

皆さんと協力しながら、自分のいる産業の中の繋がりだけでなく、商工会という繋がりを通してお互いに意見交換をすることで、違った観点や視点で学ぶことが私にとっては大きな糧になると思います。我々Hondaが抱えている難題は皆さんが対峙している難題と共通するところが多々あると思いますので、商工会を通して共有できるように努力していきたいと思っております。今後共よろしくお願いいたします。

-本日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございます。これでインタビューを終わります。