今回はToyota Tsusho Canada, Inc. 副社長井澤光彦氏にお話を伺って参りました。ケンブリッジとウッドストックに拠点をもち自動車生産事業を中心に行う同社は、グローバルに展開するネットワークにより、いちはやく業界のトレンドを掴み、蓄積された豊富な経験と知識で常に先を見据えたサービスに取組まれています。
2022年4月にカナダへ赴任された井澤氏は自動車業界だけでなく航空業界にも携わられてきました。学生時代にはダイナミックなスポーツ、投擲(とうてき)をされていたそうです。今期は商工会理事も務めていただいています。(聞き手 酒井 智子)
-御社の事業内容の紹介をお願いいたします。
弊社は1988年に豊田通商カナダ駐在員事務所として設立、その後1993年に豊田通商アメリカの支店として事業を始め、2003年に豊田通商カナダとしてカナダ法人になりました。
自動車生産に関する事業が中心で、自動車部品・材料の輸出入、生産設備の納入・設置、自動車生産周りの事業運営等を行っており、ケンブリッジとウッドストックの2ヶ所を拠点にしております。また同地域に関連会社が二つあり、タイヤとホイールの組付け事業と金属・プラスチックのリサイクル事業を行っております。
その他活動としては、カナダのベンチャー企業への出資やベンチャー企業と共同で新規事業の開発なども行っております。
-御社の強みについてお聞かせ下さい。
一つは、ネットワークです。弊社は世界中で自動車業界に関わる仕事に携わり、日系だけでなく外資系の自動車メーカーやサプライヤーとも取引を行っておりますので幅広く自動車業界のトレンドをいち早く掴むことができ、例えば、カナダでしたらカナダ国内の事業運営やお客様への提案等へ活用することができます。
もう一つは、自動車業界で長く事業をさせて頂いている為、色々な意味で自動車業界に関する知識・経験・ノウハウの様なものを社内に蓄積しており、それを活用して先を見据えたサービスや対応策をご提案できることが強みだと思っております。
-今後特に力を入れていきたいこと、展望などについてお聞かせ下さい。
やはり、全世界のあらゆる産業で取組まれているCO2削減、カーボンニュートラルへの対応になると思います。自動車業界で言えば、急速なEV化、電気自動車への普及への対応となります。
例えば、自動車の動力源がガソリンから電気へ変わると自動車を構成する部品・材料のサプライチェーンも変わります。これにより新規取引先開拓が必要になるだけでなく、従来の取引先ともビジネスへの取組み方が変わってくることになります。非常に細かい事を言えば、部品・材料の運び方まで変わってくると考えております。
従いまして、今後は、こういった環境変化に対応して生き残っていくという視点だけでなく、このような変化をチャンスと捉えチャレンジしていくことで、今まで培ってきた強み、事業を更に伸ばしていけるような組織体制作りに力を入れて取組みたいと思っております。
また、弊社は2022年4月から初のカナダ人社長をトップとする運営体制に変更になりました。カナダの従業員数は関連会社も含めると数百名程度まで増加しておりますが、日本人駐在員は現在3名体制となっております。
-井澤氏ご本人ついてお伺いいたします。ご出身から今までのご経歴について、お聞かせ下さい。
出身は奈良県です。東大寺や鹿で有名な奈良公園のある奈良市で育ちました。大学卒業後は、一度他商社で勤務し、豊田通商へは2005年に入社しました。前職では生活関連物資の調達・販売を担当し、豊田通商では自動車業界だけでなく航空業界も担当してきました。
カナダ駐在前の海外駐在経験はタイ1年、チェコ1年、アメリカ6年です。豊田通商として初めての駐在地であるアメリカのケンタッキー州には2007年から2013年までおりました。そこでは主にアメリカ全体を対象に倉庫業や輸送業といった物流関連の業務に携わっていました。
カナダは豊田通商二カ国目の駐在ということで2022年4月に赴任いたしました。アメリカとカナダの間に、自動車関連からは一旦外れて、日本で航空業界の担当を5年程しておりました。そこでは航空機関連事業、空港事業といった新規事業を担当し、その後また自動車業界へ戻り、昨年カナダへ赴任しました。
弊社内では自動車業界以外の担当も5年程度しておりましたので、キャリア的には少し珍しいかもしれません。今回カナダに赴任したことで同じ北米英語圏でもアメリカとカナダで違いがあるのを感じることができて勉強になっています。
-カナダへ赴任されて1年程経過いたしましたが、カナダの生活はいかがですか。
移民の国ということもあり、皆さんとても親切ですね。生活も非常にしやすくて、冬の雪以外はとても住みやすいです。仕事につきましては、現在副社長ということでカナダ人の方とチームを組んで全体を見ながら会社を運営しておりますので、非常にやりがいを感じています。
-今までで印象に残っているプロジェクトは何ですか?
航空機のエンジン部品加工メーカーへ出資する案件を担当したことが印象に残っています。自動車業界以外への事業拡大という目的で取組んだプロジェクトですが、やはり、業界が変わるとビジネスルールが大きく変わる為、弊社が自動車業界で培った強みをどう活かせば他業界に貢献することができるかという点について非常に頭を悩ませました。出資先の社長と一緒に膝を突き合わせて何度も色々な議論を徹底して行ったことを今でも鮮明に覚えており、色々な切口で物事を考えることの大切さを学ばせてもらった貴重な経験でした。
-お仕事を進める上で大切にされていることについてお聞かせ下さい。
今後特に力を入れていきたいことでも述べさせて頂きましたが、変化が早い時代になっていますので、新しい事にチャレンジするのを常に忘れないようにしたいと思っています。変化を拒んで守りに入ってしまうと、どうしても成長がその時点で止まってしまいます。
自分自身がチャレンジ精神をもって何事にも取組み、一緒に仕事をしている人を巻き込んでいくだけでなく、チャレンジから成功を得て成長していく楽しみや喜びを仲間と一緒に共有できるような経営を目指したいと思っています。
-プライベートについてもお伺いいたします。お好きなスポーツは何ですか。
特に自慢できる実績はないですが、学生時代は陸上部に所属して短距離と投擲(とうてき)をやっていました。投擲というのは、砲丸、円盤、ハンマー、やり等を投げる競技ですが、私はやり投げを中心に練習していました。当時はチェコ共和国のヤン・ゼレズニーという選手が世界記録保持者で私の憧れの選手でした。仕事でチェコ共和国に行けた時はヤン・ゼレズニーの国に訪問できると言うだけでワクワクしたのを覚えています。
昨年カナダに来てからはゴルフを再度開始しました。アメリカ駐在時は環境が良かったので頻繁にやっていましたが90を切った事が一度もなかったので、今回のカナダ駐在では88目標にしており、帰任までに何とか一度でも達成したいと思っています。運動以外では、色々な観光地を訪問するのが趣味です。日本にいる時は奈良県出身というのもあって神社仏閣をよく訪問していました。これからカナダの名所もたくさん訪問したいと思っています。
-春先にゴルフ場がオープンするのが楽しみですね。今年も5月に商工会コンペを予定しておりますので、是非ご参加下さい。
昨年も参加しましたが、LION HEADのスタートコースの池越えが難しかったですね(笑)。でも、楽しませて頂きました。いつか商工会のゴルフコンペでも良いスコアを出せるようにしたいですね。
-今後、駐在中に挑戦したいことについてお聞かせ下さい。
仕事では、せっかくカナダを任されておりますので、新事業を駐在中に作って貢献できればと思っています。現在はカーボンニュートラルや電動化といった取組むテーマが沢山ありますので、この機会を逆に利用して新しい事業に挑戦したいです。
仕事以外ですと、何か1つ楽器に挑戦したいなと思っています。小学校の頃に親にギターを習いに行かされたのですが練習が嫌で半年続かず挫折しました。大人になって少し後悔していたので自分の子供にはピアノをさせたのですが、今度は自分で何か楽器に再挑戦してみようと思います。
-最後になりますが、会員の皆様へ一言をお願いいたします。
弊社はトロントから車で1時間30分ぐらい離れたところにある為、日頃はトロントに出る機会が少ないのですが、今後できる限り商工会主催の会合やイベントへ参加し、会員の皆様とお会いして人脈を広げていきたいと思っております。お会いした際はどうぞ宜しくお願い致します。また会員の皆様がケンブリッジやウッドストックへお越しになる機会がございましたら、その際はお声がけください。
-本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました。