今回はTokio Marine & Nichido Fire Insurance Co., Ltd. 首席駐在員の中井良一氏へお話を伺ってきました。日系企業を中心にカナダで65年以上前から損害保険事業を行っている同社。提携しているカナダの保険会社と一体となった事業をますます強化することに注力されると同時に、東京海上グループとして新たに立ち上げた新会社Tokio Marine Canada Ltd. とともにお客様への一層の価値提供を目指していらっしゃいます。
海外事業の買収、国際会議の運営など様々な事業に携わっていらした中井氏。プライベートでは趣味であるSUP(スタンドアップパドルボード)での釣りや、今年本格的に始めたゴルフのお話などもうかがいました。中井氏は2022年4月にカナダへ着任されました。
(聞き手:酒井 智子)
-御社事業内容のご紹介をお願いいたします。
弊社は日本での生損保事業および海外保険事業に加え、金融・その他事業を幅広く展開しています。元々は国内の損害保険事業が中心であり、20年前は海外事業がグループ全体の利益に占める割合は約3%でしたが、2000年以降に買収を中心とした海外展開を加速させた結果、現在では海外事業がグループの利益の約半分を占めるに至っています。
現在、46の国と地域に事業展開しており、カナダではトロントに加え、バンクーバーとモントリオールにもオフィスを構え、日系企業様を中心とした損害保険事業を行っております。
-御社の強みについてお聞かせ下さい。
グローバルにリスク分散の効いた事業ポートフォリオを有している点が大きな強みの一つだと思います。仮に、日本などの特定の地域で、特定のリスクのみを引受けていた場合、保険会社はこのリスクに備えて巨額の資本を備えておく必要があることに加え、利益の振れ幅も大きくなります。
一方で様々な地域で多様なリスクを引受け、リスクを分散させることで、各リスクが同時に発生する確率は低いので、必要な資本は少なくて済み、利益の振れも少なくなり、経営の安定に繋がります。
弊社は日本のみでなく、欧州、北米、アジアなど、様々な地域で損保事業や生保事業など多様なリスクの引受けを行っており、グローバルなリスク分散の効いた事業展開を行っていますので、安定的な経営により、お客様に継続的に安心と安全をお届けすることができると考えています。
-日本とカナダで保険の違いはありますか。
弊社が扱っている保険は、主に企業向けの火災保険や自動車保険、賠償責任保険ですので、細かな違いはありますが、商品自体には大きな違いはありません。一番の違いは、保険の販売網です。
日本ですと保険代理店が多くを占めておりますが、カナダは保険ブローカーによって販売されていることが多いです。日本ですと、我々が保険代理店と一緒にお客様に直接保険の説明をすることも多いですが、カナダではブローカー以外は保険のご説明はお客様にできませんので、そういった売り方の違いは大きいかもしれません。
-今後の展望について、お聞かせください。
弊社は現地の保険会社と提携して事業を運営しており、オフィスも現地保険会社の中にあります。ただ、COVIDとリノベーションによって、この春まで約2年間、完全在宅勤務をしていたこともあり、どうしてもそれまでの一体感がやや希薄になってきているのではないかと感じています。ようやく環境が改善してきたので、改めてこうした提携会社との関係を強化していきたいと考えています。一緒に取り組んでいる事業も多いので、関係強化によって一層の価値提供を行っていきたいと考えています。
また、弊社内でもCOVIDを経て、その前とは働き方に対する考え方が大きく変わっていると感じています。2年間もの完全在宅勤務でも業績に影響はなく、家庭と仕事の両立がしやすいことが分かった反面、対面機会の重要性や敢えてオフィスに来ることの良さを感じている社員もいると感じています。今では週2日の出社を基本としていますが、このタイミングで赴任してきた自分の使命として、今後も社員や世の中の状況を見ながら最適な環境を作っていきたいと考えています。
加えて、東京海上グループとしましては、カナダにTokio Marine Canada Ltd.(TMC)という新たな現地法人を立ち上げ、2022年6月に正式に営業を開始しました。
私が所属している東京海上日動カナダ支店では、日系のお客様を中心に火災保険や賠償責任保険、自動車保険などの一般的な保険を販売しておりますが、新会社では、会社役員賠償責任保険など「スペシャルティ」と呼ばれる保険をはじめとした企業向けの損害保険事業を展開し、現地企業を中心とした保険の提供と、弊社グループ会社のカナダにおける保険引き受けのサポートを事業の両輪としていく予定です。
カナダの損保市場は約5兆円で世界8位と言われており、安定したビジネス環境で今後も市場拡大が見込まれています。今後、TMCとともに東京海上グループとしてより幅広いお客様への価値提供を行い、中長期的に一層の成長を実現するための事業基盤を構築して、当社海外事業の更なる収益拡大とポートフォリオの分散を目指したいと考えています。
-ここから中井氏ご本人についてお伺いいたします。ご出身、今までのご経歴についてお聞かせ下さい。
出身は鳥取県です。父親が地元の地銀に努めていたこともあり、中国地方と関東を転々としていました。小中高は主に広島で過ごし、大学から東京に出て、そのまま就職しました。
入社後は東京と北九州で合計約10年間の営業経験を積んだ後、ニューヨークで保険規制の調査業務を担当しました。仕事内容も全く経験がなく、英語もろくに出来なかったので、ニューヨークでの業務は振り返ると本当に厳しかったですが、今思えばその時期に非常に鍛えられたような気がします。ニューヨークで2年過ごした後、スイスのジュネーブにある保険関連のシンクタンクに1年間出向し、その後、ロンドンで保険の国際規制に関する調査業務を担当しました。
3カ国連続での異動は、当時は子供も小さかったので、引っ越しや転校など家族も本当に大変だったと思いますが、今ではいい思い出になっています。2012年に日本に戻り、海外事業の買収・売却業務や海外子会社の経営管理などを担当しました。その後、2022年4月にカナダへ着任しました。
-いままでで印象に残っているプロジェクトは何ですか?
海外企業の買収や国際会議の運営など様々な業務に携わってきましたので、勿論いずれも印象には残っていますが、正直どれが一番というのは難しいです。ただ、5年後とか10年後に同じ質問に答えるとすると、まだ今はカナダに来て半年ちょっとですが、恐らくカナダでの今の仕事が私の会社人生で一番印象に残っているのではないかと思います。
これまでの業務はいずれもチームの一員として担当しており、カナダでも勿論、チームで仕事をしていますが、自らが責任者として組織を任されるのは私にとっては初めてですので、責任の重さとともに自ら判断して組織を動かす仕事の面白さを実感しています。眼の前には色々な課題もありますが、それをどう乗り越えていくかということは、冒険に挑むような楽しさも少し感じています。
-お仕事を進める上で大切にしていること、独自の経営方針についてお聞かせ下さい。
基本的には単純な人間だと思いますので、あまり高尚なことは考えていませんが、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉が好きで、できること、やるべきことを精一杯やれば、結果はついて来るという思いで仕事を進めています。勿論、いつも思うような結果にはなりませんが、今できるベストのことをするということを大切にしています。あとはスピード感を意識しています。自分も相手からすぐレスポンスがあると仕事がやりやすいので、自分も可能な限り迅速な仕事を心がけています。
また、赴任初年度の今年は特に、色々経験することを大事にしています。色々な方とお会いできる機会があれば、まずは会ってみよう、いまやらなくてもいいかもしれないようなことでもまずはやってみようという姿勢を大切にしています。
コロナ期間中は日本で海外事業の経営管理を担当していましたが、出張にも行けず現地の駐在員から聞く話が全てで、どうしても自分の感覚的に理解が難しいことも多かったと感じています。そうしたことも踏まえて、今は色々なことを自ら眼で見て、経験して自分の感覚として現場をよく肌で理解しながら仕事をしていくことを大切にしています。
-プライベートな情報についてお伺いします。趣味やお好きなスポーツは何ですか。
週末はゴルフか釣りが多いです。ゴルフはカナダに来てから本格的に始めましたので、苦労していますが、ようやく少しずつ楽しくなってきました。釣りは日本ではSUPと呼ばれるパドルボートに乗って毎週のように海釣りに行っていました。
トロントは海がないので、釣りをするつもりはなかったのですが、釣りのない生活に耐えられずこちらでもSUPを含めて一式道具を揃え直して、ゴルフのない週末には釣りにも行っています。ただ、これからの冬には何をしようか思案中で、色々な人に聞いて回っています。
-SUPでの釣りですが、バランスを取るのは難しいですか?
スタンドアップパドルボードですので、基本は立って乗りますが、釣りをする人は座って乗りますので、そこは問題ありません。ただ、海では波打ち際でたまに行きか帰りにひっくり返ることはあります(笑)。
-ゴルフは沢山行かれましたか?
そうですね、まだ暖かいので(11月初旬)行っています。なかなかうまくならないですけどね(笑)。カナダにいるうちに、人並みにはなりたいと思っております。少しずつ楽しくなってきましたし、カナダはゴルフするのに最高の環境ですので、来年も沢山行きたいですね。
-今後カナダ駐在中に挑戦したいことは何ですか?
釣りではまだ大物を釣っていないので、カナダにいるうちに大きなサーモンを釣りたいです。今シーズンも何度かチャレンジしましたが、だめでしたので来シーズンに挑戦は持ち越します。あと、スポーツ観戦、MLBとNHLは見に行きましたが、NBAやカナディアンフットボールもぜひ見に行ってみたいと思っています。観光地もまだ全然行けていないので、今後ぜひ行きたいですね。
-最後に、会員へのメッセージをお願いいたします。
ようやく対面でお会いできる状況にもなりつつありますので、今後は商工会のイベントなどでみなさんとお会いできる機会を楽しみにしています。
-本日はお忙しい中、ありがとうございました。これでインタビューを終わります。