新代表者紹介インタビュー Nakano Smith Law Group スミス希美氏

Nakano Smith Law Group 
Lawyer スミス希美氏

Women's Lawyer

本日はNakano Smith Law Groupスミス希美氏へお話を伺いました。
Nakano Smith Law Groupは、オークビルを拠点に2021年に設立された、コーポレート法務や遺産法など4つの分野に特化した法律事務所です。2名の所属弁護士が、それぞれの豊富な経験と知識を活かし、質の高いリーガルサービスを提供しています。同氏は日本とカナダの大学で法律を勉強され、オンタリオ州でも数少ない日本語を母語とする弁護士として、特に遺産法分野で活躍されています。

御社の事業内容の紹介をお願いいたします。

Nakano Smith Law Groupは、オークビルを拠点とする、コーポレート法務と遺産法に特化した法律事務所です。所属弁護士は私を含む2名で、クライアントケアにフォーカスした、各専門分野のアドバイスを提供しています。取り扱い業務としては、主に4つの柱からなります。

まず一つ目が、コーポレート業務です。会社の設立から各種契約書作成、M&Aに至るまで、企業活動のあらゆるステージでの企業への法的支援を提供しております。 二つ目は、ソフトウェア、データ、プライバシーに関する法律業務を取り扱っております。三つ目に、意匠・商標の登録、著作権法、ライセンス契約などをはじめとする知的財産法(IP)業務を取り扱っております。

最後に四つ目の柱として、遺産相続に関する法律全般を扱っており、遺言・信託の作成であるとか、オンタリオ州での相続手続きをお手伝いする遺産相続法の分野ということで、この四分野に関する法律、法務のサービスを提供しております。

御社の強みについてお聞かせください。

私共2名の所属弁護士の専門性の高さと豊富な知識・経験を武器に、実践的な法的助言を提供できることです。私自身は、今年で弁護士として15年目を迎え、公私ともにパートナーであるコーポレート弁護士のRyan Smithは、ビジネス法・知的財産法の分野の弁護士、そして商標代理人として約20年にわたり活躍しています。

事務所を立ち上げる前は、それぞれの分野で経験を積んできました。まず、専門性という点では、両弁護士ともに、各クライアント案件の取り組みだけではなく、各専門分野に関する書籍や記事の執筆、また、同業者団体が主催する弁護士対象のセミナーでの登壇経験も豊富で、専門知識の強化と普及を精力的に行っています。

さらに、リーガルサービスの質の高さも私どもの強みです。私達は、各クライアント特有のニーズと状況に応じ、目の前のクライアントが、私共のサービスを受けることで、現在置かれた状況がより良くなるために最善を尽くします。また、小さな事務所の強みとして、担当弁護士とダイレクトかつ密に連絡を取り合うことができ、大手の法律事務所では行き届かないクライアントケア、依頼してよかったと満足していただけるような、質の高いクライアントサービスの提供を常に心がけております。

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木を基調にした会議室(Boardroom)。「和室のようで落ち着くとよく言っていただきます」

日系企業へのサービスという点で申し上げますと、 日本からのカナダ進出のご相談から、進出後のビジネス活動の展開に応じた法的サポートをさせていただいた経験が多くあります。また、リーガルサービスを提供する過程で、私自身はクライアントのリクエストに応じ、日本語での橋渡しもしております。

弊事務所の法人クライアントとしては、カナダ国内外の中小企業を中心に、テクノロジー企業、伝統企業からスタートアップ企業まで、幅広くサポートさせていただいています。

最後に、個人クライアントが中心の遺産相続法業務に関しては、カナダでも数少ない日本語を母語とする弁護士の一人として、日本とカナダ(オンタリオ州)の間で発生する相続問題に対応できる、唯一無二のサービスを提供できることも強みです。二国間の異なる言語・法制度・文化が可能な限り融合できるように、実践的なソリューションを提示し、複雑な日加相続をお手伝いしています。また、クライアントを日本側でサポートしていただける信頼できる弁護士や税務の専門家と協働で、ケースに取り組むこともございます。

今後、特に力を入れたいこと、目標や展望などについてお聞かせください。

私共は日々の実務で、クライアントの期待に応え、それ以上の仕事をすることを目指し、日々精進しています。クライアントに真摯に向き合い、この目標を一つ一つのケースで達成し、それを継続していくことを目標にしています。

スミスさんご自身についてですが、ご出身とご経歴についてお聞かせください。

福岡で生まれ育ち、大学時代を東京で過ごしました。中学生くらいの時から弁護士という職業に興味を持つようになり、日本の大学では法学部に進みました。また、昔から英語が大好きで、いつか留学してみたいという夢もありました。

大学時代は、周りが司法試験の勉強に励む中、英語の勉強ばかりしていたため、そのうちに、国際機関でのリーガルキャリアを志すようになりました。それがきっかけで、2003年にトロント大学ロースクールの修士課程に留学しました。カナダを留学先に選んだ理由の一つとして、教育の質もさることながら、「カナダは寒いから勉強するしかない!」というカナダ留学帰りの友人のアドバイスも影響していますが、友人の助言は本当でした。

大学院卒業後、念願であったモントリオールの国連機関でリーガルのインターンを経験しましたが、自分が目指したものとちょっと違うという気づきがあり、国際的な仕事よりも、人を直接助けることができるローカルな仕事をしたいと思うようになり、カナダでの弁護士になることを考え始めました。

1年間のカナダ留学を終え、日本で環境政策団体の研究員を務めた後、カナダに戻り、トロント大学ロースクールに再入学し、弁護士になるためのJuris Doctorというプログラムを卒業します。その後、2010年にオンタリオ州弁護士として登録しました。以来、遺言・信託・相続法専門の弁護士として、遺言書や委任状の作成や、オンタリオ州での遺産相続に関するご相談など、幅広く対応しています。

相続の道を選んだいきさつですが、新米弁護士としての就職活動に苦戦していた中、ロースクール時代からアジア系カナダ人弁護士協会の会員宛に定期的に送られた、「日本語ができる相続法の弁護士はいませんか?」というメールを思い出しました。天からの声が降ってきたように、「これって私がやらなければ一体誰がやるんだろう?」と導かれた気がし、このようなご縁を頂いて今日に至ります。

ハミルトン市の小さな法律事務所からスタートしましたが、日本語でのサービスを求めて遠方からの依頼が多く来るようになり、日系社会へのアクセスの点から、ミシサガの中堅事務所に移籍し、その後独立し、2021年にオークビルで現在の事務所を夫と立ち上げました。

カナダ移住前のご経験についてお聞かせください。

カナダへ永住する前は、日本の環境政策団体で研究員として勤務していました。政策研究にとどまらず、国内外の研究者や政治家を招いて国際会議やワークショップの企画運営を担当し、日本の国会議員の勉強会開催のお手伝も行いました。霞が関の議員会館には頻繁に足を運び、国際会議などのイベントでは国会議員の通訳やアテンドを務めるなど、普段なかなか経験できない貴重な機会に恵まれました。立法・政策立案の裏側を垣間見ることができ、とても刺激的で貴重な経験となりました。

今までで一番印象に残っているケースについて、お聞かせください。

クライアントの皆様からいただく感謝の言葉は、私にとってこの仕事の最大の魅力です。どのケースも心に残るものばかりですが、特に印象深いのは、日本の文化や言葉がクライアントに寄り添ううえで大きく影響することです。

日本人は一般的に争いごとを避ける傾向があります。しかし、時には裁判を通じてしか解決できない問題も存在します。ご家族が亡くなられた直後など遺産相続の初期段階でご相談を受けた際には、クライアントの正当な権利を守るために訴訟が必要であれば、その選択を勧めることもあります。

ただ、私は基本的に事務弁護士(ソリシター)業務に徹しており、訴訟案件を扱いません。そこで、他の事務所の訴訟弁護士(バリスター)と連携して、日本語での事実確認や書類作成のサポートを行い、案件に取り組むことも多々あります。そして事件が無事に解決した暁には、「最初は訴訟は避けたいと思っていたけれど、あの時背中を押してくれて本当に感謝しています」といった言葉を頂戴することがあり、そうした瞬間は私自身の大きな励みとなっています。

また、母語の威力を実感した経験があります。弁護士として駆け出しの頃、日本語を母語とするご高齢のクライアントの遺言作成をお手伝いしたことがありました。親子間で英語と日本語が混在して会話される中、複雑な話題を両言語で満足に話すことが難しい状況でした。

そんな中、私が日本語で話しかけた瞬間、クライアントの緊張がすっと解け、まるで「この人なら自分の気持ちを理解してくれる」と言わんばかりの安堵の表情を見せてくださったのです。言葉が持つ力の大きさを改めて実感した瞬間であり、十年以上経った今でも忘れられません。

こうした経験を通じて、日本語でしか救えない方々がいることを強く感じました。今後もできる限り多くの方を助けたいという思いで日々の業務に取り組んでおります。

お仕事を進める上で大切にされていることについて、お聞かせください。

まず、私が仕事をするうえで最も大切にしているのは、クライアントや関係者との円滑なコミュニケーションです。日本語でも英語でも、法律を含めてあらゆる事柄を説明する際には、常に「分かりやすさ」を最優先しています。これは、弁護士駆け出しの頃、上司から「グレード9(中学3年生)の子どもたちにも理解できる英語で話すように」と助言されたことが、今でも自分の指針となっているためです。

特に英語の文書作成においては、私自身が英語を母語としないこともあり、複雑な内容をシンプルな表現に置き換え、クライアントにも分かりやすく伝えることを心がけています。この「やさしい英語」での説明は、英語が母語ではないからこそできる強みでもあると考えています。クライアントの理解を深めることは、信頼関係を築く第一歩であり、安心感を持っていただくためにも欠かせない要素です。

また、弁護士として常に「クライアントの立場に立つ」ことを考えます。英語の “Put yourself in your client’s shoes” というフレーズを常に意識し、まさに自分がクライアントの靴を履いてクライアントの立場に立つことをイメージすることで、クライアントへ寄り添い、理解し、共感することができます。

この姿勢によって、一人ひとりの特有の状況やニーズに合わせた、実践的で創造的な解決方法を生み出すことができるはずです。クライアントの現状が少しでも良い方向に進むよう、最適なサポートを提供することが私たち弁護士の役割です。

さらに、クライアントだけでなく、クライアントを支えるご家族や他の関係者との信頼関係の構築も非常に重要だと考えています。それぞれの立場や背景を尊重し、コミュニケーションを丁寧に重ね、より強固な信頼関係を構築することが大事だと思っています。

プライベートについてお伺いします。お好きなスポーツや趣味は何ですか。

私は全く運動が得意ではありませんが、唯一好きなスポーツが水泳です。今でも気分転換をしたい時にはプールに足を運びます。水の中に入ると、外の音が遮断されるため、頭に入ってくる情報もなくなり、まるで自分だけの空間にいるような感覚になります。心身ともにリラックスでき、頭を空っぽにしてリフレッシュすることができます。

趣味については、美味しいものを食べることと作ることが好きで、休日には子どもたちと一緒にキッチンに立ち、新しいレシピに挑戦するのが楽しみのひとつです。普段、英語のレシピを自分から探すことはあまりないですが、娘たちがインターネットや動画サイトでお気に入りの料理動画を見つけてきて、「これを作ってみたい」と提案してくれることがあります。おかげで、自分では出会うことがなかったようなレシピを知り、家族みんなで新しい料理を作ることができるのが嬉しいです。成功すれば、それが我が家の新しい定番メニューになり、ありがたい限りです。

最近のヒット料理は何ですか?

最近の我が家のヒット料理は、台湾系カナダ人料理家のTiffy Chenさんが紹介していた、スパイシー・ワンポット・チキンライスというレシピで、さまざまなスパイスを使いながらも、簡単で味わい深い炊き込みご飯です。ビリヤニのアジア版のようで、家族みんなで新しい味に出会えました。

最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。

今後も積極的に商工会のイベントに参加して、会員の皆様との交流・意見交換を持つ機会を増やしていければと思います。もし何かお困りのことがあれば、一度お気軽にお声がけいただき、何らかの形でお力添えできれば幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

本日は忙しい中ありがとうございます。これでインタビュー終わります。