Canadian Kawasaki Motors Inc.
President 池淵和也氏

今回はCanadian Kawasaki Motors Inc 池淵和也氏にお話しを伺いました。
Kawasakiブランドのモーターサイクルなどのパワースポーツ製品をカナダ市場で展開している同社。Kawasakiのブランド力と高い認知度、そしてお客様との強いつながりを強みとし、週末のレジャーを彩る嗜好品として多くのファンに愛されています。大学時代は新聞配達奨学金制度を活用し、共同生活を送っていた池淵氏。その時にバイクと出会い、その魅力に惹かれてKawasakiモーターサイクル事業へ入社しました。当時のエピソードをはじめ、豊富な海外経験について、たっぷりお話を伺いました。
―事業内容の紹介をお願いいたします。
当社は、Kawasakiブランドのパワースポーツ製品、具体的にはモーターサイクルやオフロード四輪車、PWC(Personal Water Craft、水上オートバイ)といったレジャー製品を取り扱っており、カナダ各地の販売店を通じて製品や部品の販売、アフターサービスを提供しています。近年ではこういったエンジンやモーター付きのレジャー製品について、「パワースポーツ製品」という呼び方が一般的になってきました。
オフロード四輪車については、以前はモーターサイクルのように前後に乗るスタイルのATV(All Terrain Vehicle)という4輪バギー車が主流でしたが、最近は車のように丸形のハンドル付きで横並びで乗る「サイドバイサイド」と呼ばれるタイプが主流になっています。

―御社の強みについて教えてください。
Kawasakiのブランド力、そしてそのネームバリューが大きな強みです。私自身、様々な国で仕事をしてきましたが、先進国、新興国を問わずKawasakiのモーターサイクルは幅広く知られており、また「Ninja」などの各製品群を代表するサブブランド名も世界各国で広く認知されています。前職では新規開拓を担当していましたが、Kawasakiのブランド名は既に知られていることが多く、相手先から「ぜひ販売させてほしい」と逆アプローチを受けることも珍しくありません。
また当社製品群は、自動車や通勤スクーターのようなコミューターとして生活の足となる必需品ではなく、週末のレジャーなどに利用される嗜好品寄りであるため、お客様の愛着心が非常に強いのも特徴です。「バイクのカワサキで働いています」とお話しすると、様々なエピソードや思い出を語ってくださる方が多く、お客様とのつながりやブランドへの信頼を実感できる点も当社の強みだと思います。
―今後特に力を入れていきたいこと、目標や展望についてお聞かせください。
カナダで展開する当社のレジャー製品は主に春夏秋向けのパワースポーツ製品が中心となっており、スノーモービルなどの冬向けの製品は扱っていません。一方で、皆さんもよくご存じの通りカナダは冬が長く、夏の期間が非常に短いという特色があります。この限られた夏の間に如何に効果的に販売活動やサービスを行うかが当社のカナダ事業におけるカギとなっており、またこの時期を逃すと1年を棒に振ることにもなりかねないため、これまで歴任してきた他国に比べてビジネス運営上の難しさを感じます。
しかし、逆に夏が短いからこそお客様の夏季レジャーへの期待や熱意も他国に比べて非常に高いと感じており、その熱量をビジネスチャンスとしてしっかりと捉え、一人でも多くの方に当社パワースポーツ製品の楽しさというものを広めていきたいと考えています。
―新規事業、新製品の紹介をお願いいたします。
今年、新たに「KLE500」というモーターサイクル製品を発売しました。これは従来よりお客様からのニーズが高かったジャンルのモーターサイクル製品で、当社からも満を持しての上市となりました。


「KLE500」は、自動車で例えると中型SUVのようなタイプで、舗装路だけでなく林道(トレイル)など未舗装路もしっかり走ることができるオールマイティなモーターサイクルです。排気量も中型で、初心者の方にも扱いやすい設計となっており、より幅広い層のお客様に楽しんでいただけるモデルとなっていますので、ご興味のある方はぜひ販売店に足を運んでいただければ幸いです。
―池淵さんご自身についてお伺いします。ご出身、今までのご経歴などお聞かせ下さい。
私は兵庫県明石市の出身です。カワサキのモーターサイクル事業の本部は明石市にあるのですが、これを知ったのは、実は会社に入社してからでした。大学時代は大阪で下宿生活でしたが、親からは下宿代を出す余裕はないと言われ、それでも親元を離れたいという思いから新聞配達奨学金制度を利用して、新聞配達所の2階でルームメイトと共同生活をしていました。私のオートバイとの出会いはここでした。
新聞配達の仕事のために免許を取得して配達用バイクに乗るようになりましたが、オートバイに乗ってみると自転車よりも行動範囲が格段に広くなり、自分の世界が一気に広がったことに興奮したことを今でも覚えています。配達と学業の両立は大変でしたが、配達所で働くさまざまな境遇の人と接する日々はとても充実していて、また貴重な社会勉強ができたことは良い経験でした。
卒業後は川崎重工業に入社し、運良く希望の二輪事業へ配属されました。製品輸出部門で主に新興国向けの貿易取引を担当し日々多くのことを学んだのは言うまでもないですが、業界知識を身につけるため職場には世界中のバイク雑誌が揃っており、また仕事中でもバイク雑誌は自由に読める環境だったので、バイク好きとしてはなんていい会社に入ったのだろうと当時は思ったものです。
また会社内は周囲にバイク好きな人が多かったので、週末になるとツーリングやキャンプに出かけていました。日本では小型船舶の免許も取得し、先輩のジェットスキーに乗せてもらいに一緒に遊びに行ったりオフロードバイクで一緒に山道を走ったりと、週末は毎週のようにパワースポーツ遊びで充実した日々を送り、「この仕事は天職だ」と、若い頃は感じていたこともありました。
―カナダ駐在前のご経験についてお聞かせ下さい。
入社以来、一貫して海外に関わる営業に携わり、多くの国や地域を担当してきました。海外勤務は今回で5カ国目となります。特にヨーロッパでの経験が多く、オランダ、ドイツでの勤務を経て、一度日本に帰国。その後インドネシアで3年間、さらにフランスでの勤務も経験しました。
直近では、日本で輸出部門の新規開拓業務に約3年間携わり、その後カナダに赴任となり現在に至ります。合計するとヨーロッパでの勤務期間が8年と最も長く、また駐在地以外も、カナダ赴任前の新規開拓業務では、中近東、中央アジア、東南アジア、南米など、アフリカ以外の様々な国・地域を訪問してきました。
一方で北米とはこれまでほとんど縁がなく、カナダ赴任を命じられた時は「北米のことはあまり知らないが大丈夫だろうか」と思っていましたが、入社24年目、5カ国目の海外勤務にしてまだまだ新たな仕事にチャレンジできる機会を与えていただき、非常に新鮮な気持ちで取り組むことができています。
-実際にトロントに来てみて、何か感じたことはありますか?
カナダは今回の赴任で初めて訪れたのですが、こんなにも移民が多いことを知りませんでした。アジア系の方も多く、アジア料理店がその分充実していて、肌に合う部分が多いと感じています。自分自身は欧米よりもやはりアジアの雰囲気の方がしっくりきますね。また私がこれまでに駐在した他国と比べると、カナダではマイノリティ感を感じることはほとんどなく、安心感があってとても良い場所だと思います。
-今までで一番印象に残っているプロジェクトについてお聞かせください。
最初の赴任地であるオランダでの仕事が、特に印象深く残っています。2007年当時、赴任した直後までは景気が良かったのですが、ほどなくして発生したリーマンショックによりアメリカを中心に世界的な経済危機が広がり、ヨーロッパにも半年から一年ほど遅れて影響が及びました。
当社は当時、欧州各国の事業会社を一つに統合し、統合会社としてオペレーションの安定化を進めていました。私は実務担当として、当時はクラウドシステムなどもない時代でしたので、エクセルでテンプレートを作成し、7カ国の予算管理や販売管理のデータを収集・修正に明け暮れる日々でした。おかげでエクセルスキルは今でも若手には負けませんよ(笑)。
その後、ドイツへ転勤となり販売前線での営業も経験しましたが、当時のリーマンショック後の困難な環境で、守りの戦略や戦術を身につけられたことは、今でも大きな財産になっています。
―仕事を進める上で大切にされていることや、独自の経営方針について教えてください。
私見や自分の思いは一旦横に置いて、今の自分の置かれているポジションで期待されている役割なり成果をしっかりと認識し、その責務を果たすことを大切にしています。
また立場が上がるほど、自分の個人商店にならないよう、私がいなくなっても継続できる仕組みづくりを常に意識しながら、組織や仕組みで成果が出せるような体制づくりにも力を入れています。
― 休日は何をして過ごされますか。お好きなスポーツや趣味は何ですか。
趣味はゴルフです。シーズンが始まりましたが、雨が多いのでゴルフに行きたい気持ちといつも葛藤しています。もともとはそれほどゴルフが好きだったわけではありませんが、ある時に若い頃あまりスポーツに打ち込み切れてなかったことを思い返してもう一度真剣にスポーツに取り組んでみようと思うようになり、ちょっとした部活感覚で取り組んでいます。普段は車通勤でどうしても運動不足になりがちなので、ゴルフは体を動かす機会としてもちょうどよく、腕前はそれほど自慢できるものではありませんが、楽しみながら続けています。

ただ子供がまだ小さく手がかかるため、週末はゴルフ三昧、というわけにもいかず家族サービスを優先しています。冬には公共のオープンエアのスケートリンクや近場のスキー場に子供を連れて行き、一緒にアウトドアを楽しむ機会も増えました。もともと独身時代からスケートやスキーも好きで、バイクに乗れない冬の間はよく雪山に出かけていました。これからは娘と一緒にアウトドアの楽しさを共有しつつ、ゴルフにも誘い、ゴルフも一緒に楽しめるようになればと思っています。
実は既に娘を一度ゴルフ練習場へ連れて行き、行ったときは楽しんでいたので本格的にキッズ用の道具を買って続けてみない?と勧めたところ、「いらない」と言われてしまいました…。なかなか思うようにはいきませんが、くじけずにまたタイミングを見て誘ってみたいと思っています。
―今後カナダ駐在中に挑戦したいことについて聞かせてください。
オーロラを見に行きたいですね。カナダにいてもオーロラを見るのは簡単ではないと聞きますが、せっかくの機会なのでぜひ実現したいです。次の冬こそは家族と上手く折り合いをつけて、家族でオーロラ観賞を叶えたいと思います。
―最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。
これまでの赴任国にも商工会はありますが、私が活動に参加したことはなく、あまり商工会の恩恵を感じる機会はありませんでした。一方、トロントでは商工会の活動のおかげで多くの方と交流できる環境が整っており、私自身もおかげ様で駐在日本人のみならず様々な方々と出会い、情報も得ることができました。まだ赴任してからそれほど時間は経っていませんが、多くの情報を得ることができ楽しく活動できているのも商工会や皆さんのサポートのおかげだと感じています。今後ともよろしくお願いいたします。
-本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビュー終わります。