混沌と安らぎの航跡:トロントに辿り着く私の海外駐在記
中島 主税/なかじま ちから
(阪急阪神不動産カナダGeneral Manager)

皆様、はじめまして。この度、Marshの小谷さんからバトンを引き継ぎました、阪急阪神不動産の中島主税と申します。本年4月に、フィリピンよりトロントに異動となりました。昨年より、トロントで新規事業を開拓すべくパートナー選定や事業選定を行い、昨年12月にトロントを拠点としたカナダ不動産会社Graywood Developments社とオークビルにて分譲マンション事業「Claystone」を開始するに至りました。今後も、トロント初の日系デベロッパーとして事業拡大に向けて邁進してまいりますので、皆様、何卒宜しくお願い致します。
トロント赴任の前は、2025年3月まで7年間フィリピンで過ごしました。その前にはインドでの駐在経験もございます。今回、リレー随筆を執筆するにあたり、バトンを渡していただいた小谷さんのように、皆様の新たな知識になるようなことを書ければと思ったのですが、私は学も文才もございませんので、これまでの海外生活で私が得た学びと、これから始まるトロントでの新生活への抱負について、お話しさせてください(自分語りのようになり申し訳ございません…)。
私の海外キャリアは、2016年のインドから始まりました。インドでの生活を開始した頃は、衝撃の連続でした。通勤途中に襲われた砂嵐・降り注ぐ雹(ヒョウ)、街の強烈な匂い、鳴りやまぬクラクション、アスファルトが溶けるほどの灼熱。カオスなインドでは、五感を刺激するあらゆる要素が混在していました。
戸惑いもありましたが、初めての海外生活ということもあり「海外とはこういうものか」と刺激を楽しめました。この「楽しむ」視点こそが、私の海外生活における最初の、最も大切な心の指針となりました。困難やギャップを「新たな発見」として捉える心が、異国の地で前向きに進むために不可欠だと、インドでの経験が教えてくれました。
インドでの経験を経て、その後、フィリピンでの駐在が始まりました。フィリピンでの生活はまさに「天国」のように感じられました(決してインドが「地獄」という意味ではございません)。フィリピンの人々は、明るく、ホスピタリティに溢れ、何よりも家族思いです。親族間の絆が非常に強く、遠縁まで含めた大家族として助け合う文化が根付いています。地域社会全体で困っている人を助け合う「バヤニハン(Bayanihan)」と呼ばれる精神もその一つで、私への温かい迎え入れもこの文化の表れでした。
赴任間もない頃、単身でフィリピンに乗り込み、知り合いが誰一人いない環境の中、現地のパートナーの方々は家族のように温かく迎え入れてくれました。そこで私は「人との繋がりの尊さ」を深く学びました。言葉や文化、国籍が異なっても、心を開き相手に歩み寄ることで、国境を越えた「心の故郷」を築けるのだと学びました。異国で得る温かい人間関係は、生活の大きな支えとなり、困難を乗り越える力となりました。
インドで培った「異文化を楽しみ、受け入れる柔軟な心」フィリピンで育んだ「人との温かい絆を大切にする心」これら二つの心の指針は、これからのトロントでの生活、人生において、大きな糧となると思っております。ここトロントでも新たな環境、人々との出会い、新たな価値観の創造を心から楽しみにしております。
これまでの経験を活かし、トロントの地で事業を通じて、もしくは個人の繋がりを通じて、皆様に貢献できるよう努めます。お会いできる日を楽しみにしております。最後まで駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。