「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

JX Advanced Metals Corporation
(eCycle Solutions Inc. / Senior Vice President) 西嶋 千秋

今回はJX Advanced Metals Corporation 西嶋千秋氏 にお話しを伺いました。資源開発から製錬、リサイクル、非鉄金属や電子材料の製造・販売までをグローバルに展開されている同社。西嶋氏が所属する金属・リサイクル部門では、銅鉱石や使用済み電子機器などから高純度の銅を製造、副産物として貴金属やレアメタルも回収・販売されています。さらには資源循環型社会の実現に向け、リサイクル比率の向上に取り組んでおり、現在はカナダ最大手のeCycle社を拠点にE-Wasteの回収・処理も強化されております。2024年7月にカナダに着任された西嶋氏。前任地でのお話をはじめ、新たな趣味として今年から始めたアイススケートについてなどお聞かせいただきました。

-御社の事業内容の紹介をお願いいたします。

JX金属は銅やレアメタルといった非鉄金属に関する先端素材の製造・販売から、資源開発、製錬事業、金属リサイクルまでをグローバルに展開しています。

その中で、私が現在所属する金属・リサイクル部門では、金属製錬とリサイクルの一体的な事業運営を推進し、銅鉱石と使用済み家電製品・電子機器などのリサイクル原料から高効率な製錬プロセスを通じて純度99.99%以上の銅地金を生産するとともに、その製錬過程の副産物として貴金属やレアメタル、硫酸等の生産を行っています。これらの製品は国内・海外向けに販売する一方で、当社の先端素材の材料としても供給しています。

また、資源循環社会の実現を目指す為、2040年には銅製錬時のリサイクル原料比率を50%にまで高めることを目標としており、その取組みへの一環として2022年8月にカナダ最大手のリサイクル会社であるeCycle Solutions Inc.社を買収しました。2023年からは双日株式会社も出資参画しており、現在はJX金属から4名、双日さんから2名の計6名の駐在員が派遣されています。

eCycle社はミシサガ市の本社工場に加え、カナダ国内5拠点からの強固な集荷ネットワークを通じてE-Waste (廃家電・廃電子機器)の回収・破砕・選別処理を行っています。E-Wasteの主な回収先は各州の行政プログラム、自治体、メーカー、小売店等であり、処理した後の銅や貴金属を含むリサイクル原料を日本にあるJX金属の製錬所に送るとともに、鉄・アルミ・プラスチック等を外部へ販売しています。

加えて、eCycle社ではITAD(IT Asset Disposition)事業も手掛けており、使用済みIT機器の適切廃棄、データ消去、リユース等による有効活用を通じて情報漏洩リスクや環境負荷軽減に努めておりますので、E-Wasteの回収等も含め、もしもこの分野で皆さまのニーズがあればお気軽にお問い合わせをいただければと思います。

御社の強みについてお聞かせください。

当社の歴史は1905年に日立鉱山を開業し、資源開発と金属製錬事業を開始したことに始まります。現在では、半導体用ターゲット材料で約60%、フレキシブルプリント基板用圧延銅箔で約80%の世界シェアを占めていることに加え、当社の佐賀関製錬所は年間約45万トンの粗銅生産能力を有し、リサイクル由来の金回収を年間約7トン、権益銅の生産も約17万トン行っています。

この様に、資源の確保からリサイクル、最先端の半導体や情報通信材料までを一貫したサプライチェーンのもとにグローバルに事業展開をしていることが当社の強みだと考えています。

今後の目標や展望についてお聞かせください。

脱炭素化社会を実現するためには、「再生可能エネルギーの拡大」と「多産業・多領域における電化」が必要とされていますが、これらを世界規模で実現​するにあたって銅は欠かすことが出来ない「脱炭素資源」となっています。

当社は、この脱炭素資源である銅をサステナブル(持続可能)に供給するための考え方を「Sustainable Copper Vision」という形で掲げ、リサイクル原料の処理拡大(2040年に原料比率を50%へ)を進めるにあたって、銅鉱石自身が発する酸化反応熱を最大限に活用して化石燃料使用量を最小化する「グリーンハイブリッド製錬」を推進しています。

更には、100%リサイクル電気銅の実現を目指す活動として「Cu Again (シーユーアゲイン)」プロジェクトを始動しましたが、ご推察の通り、これは電気銅(Cu)が、社会での役割を終えてスクラップとして戻り、リサイクルを経て繰り返し(Again)未来の社会を支えていくという願いを込めたチャーミングなネーミングとなっています。

これらの目標を達成するため、eCycle社の機能とネットワークを最大限に活用してリサイクル原料の集荷拡大に努め、少しでも社会に貢献できればと素敵なことだと考えています。

特筆すべきニュースはございますか。

従来、当社はENEOSホールディングスの100%子会社でしたが、本年3月に東京証券取引所への上場を果たしました。また、広告キャラクターとして芦田愛菜さんを新たに起用し、銅を始めとした金属素材の可能性で未来をときめかしたいとの願いを込めて「JX“キュン”属」をキーワードに、お堅いイメージの払拭に努めています(笑)。

ご出身はどちらですか。また、今までのご経歴についてお聞かせください。

神奈川県鎌倉市生まれの自称湘南ボーイですが、どういう訳か全く泳げません。5~9才までは父親の赴任に伴って英国ウェールズで育ち、その後は社会人になるまで千葉県で過ごしました。

1991年に最後のバブル世代として当時の日本鉱業(現JX金属)に入社し、2012年までは電子材料部門に所属して光ディスク・磁性材料用ターゲットや、オーディオ用高純度銅ケーブル等の営業を担当しました。その後は2021年までグループ会社であるパンパシフィック・カッパー社(PPC)に配属されて銅・貴金属・レアメタル・硫酸等の営業に携わった後、現在は金属リサイクル部門に所属しています。

その間に2回の大阪勤務、ジョイントベンチャーおよび同業社団体への出向、通算8年の海外勤務を経験しており、昨年からのトロント駐在によって34年の会社員生活のちょうど半分が東京(本社)以外での勤務となりました。

カナダ以前の海外駐在経験について、お聞かせください。

先ほど海外勤務8年と申しましたが、2006~10年までの4年間をシンガポール(電子材料の営業)、2015~19年までの4年間は上海(非鉄金属の営業)に駐在した後、昨年7月にトロントに着任しました(リサイクル関係)。

実は、最初のシンガポールと上海前半2年は息子たちも小さかったので家族4人で赴任しましたが、上海後半2年は子供の受験に伴い単身赴任、そして今回のトロントは、既に大きくなった息子らを日本に残して妻と2人で来ております。こうして振り返ってみると、家族帯同・単身赴任・夫婦2人とほとんどのパターンを制覇できました。

今までで印象に残っているプロジェクトは何ですか。

結局は実らなかったのですが、プロジェクトという意味では2010年からの2年間携わった太陽電池用シリコン原料製造のためのジョイントベンチャー(JV)への出向が印象に残っています。

当時はソーラー発電拡大の黎明期であり、需要が急拡大する主要原料の結晶シリコンをいかに安く大量生産できるかが業界の課題でした。そのため、当社を含めた3社がJVを設立して茨城県の鹿島に工場を建設し、それぞれが得意技術を持ち寄って他社が手掛けていない全く新たな製造方法での市場参入を目指したのですが、結局は世界の主要メーカーが先に従来製法での安価大量生産に成功してしまい、計画は中止となってJVも解散となりました。

当時、私は営業担当の第一号として着任してソーラー業界の市場調査や各電池メーカーへの製品PRに携わっていましたが、全く異なる業界・文化の3社から集まった多様なメンバーが同じ夢に向かって進むことが刺激的であり、とても新鮮でした。加えて、鹿島勤務が東日本大震災の発生直後であり、震災の傷跡が周辺の至る場所に残っていたことも、当時の印象を強烈なものにした一因だと思います。

お仕事を進める上で何を大切にされていますか。

人生はどんなに努力しても良いことも悪いこともありますが、結局、仕事も人と人の結びつきが中心だと思っておりますので、良い時期は皆で前向きに伸び伸びと、悪い時期も皆と困難を分かち合いながら少しでも前向きに楽しく仕事をするのが一番だと考えています。

従って、そのために自分に何が出来るかは常に考えるようにしています。特に、海外駐在期間は誰しも心に強く残るものだと思いますので、一緒に働くメンバーが少しでも思い出深い充実した期間だったと思える様にサポートしたいですね。まだまだ力不足ですが。

後は、オン・オフのスムーズな切り替えと、私は酒好きなので飲酒によるモチベーションと幸福感の向上(笑)、それと家族との時間の両立が大切だと考えています。

プライベートについてお聞きいたします。好きなスポーツや趣味は何ですか。

中学・高校時代とずっと陸上の中距離走を続けてきたので、今でもゴルフを含めて球技は不得手です(苦笑)。それもあって、今年の2月からはYouTubeを頼りに嫌がる妻を誘ってスケートにチャレンジ中です。きっかけは、冬場に忽然と家の前に無料屋外特設リンクが出現し、こんなチャンスに始めなければ一生スケートを知らずに終わってしまうと思ったのと、既に56歳ですが、「人生の中で今日の自分が一番若い」とのモットーに素直に従ったためです(笑)。

残念ながら、3月半ば以降は氷が溶けて屋外リンクはどこも閉鎖されてしまったので、今は営業中の屋内リンクを毎週末にネットで調べて遠くまで車で通っています。もちろん嫌がる妻も同行です。そんな訳で、皆さんと違って私は寒い冬が一日でも早く来て欲しいです(笑)。

skate link
我が家の前の屋外特設リンク
winter activity

アイススケートは日本でもされていましたか?

今回が全く初めての挑戦です。日本では家の前にスケート場がなかったもので…。

実は、滑ること自体は思ったよりも簡単でスピードも少々出せる様になりましたが、問題は急ブレーキをまだ修得していないので、自然に停止するのを根気強く待つしかないことです。お陰で負傷が絶えません。尚、滑っているうちにどうしても道具にこだわりたくなってしまい、1足目の娯楽用スケート靴を超クールなアイスホッケー用に最近買い替えたのですが、ブレードの形状が変わって上手く滑れなくなったのは痛恨事です。

-カナダ駐在中に挑戦したいことはございますか。

特に目的はないものの一度は北極圏に足を踏み入れてみたいですし、最近始めたスケートの延長でアイスホッケーにも挑戦したいですね。靴もありますし(笑)。それと、CNタワーに登って「視界が抜群の日にはナイアガラの滝が見える」という噂の真実を確かめたいです。実は、CNタワーまでは歩いてわずか2分の距離なのに天候を選り好みしているうちに1年が過ぎてしまったので。

CN tower
我が家自慢の窓からの景色
view
English breakfast
English Breakfast

あと、私は昔からイングリッシュ・ブレックファストが大好物なので、トロント中の有名店を全て制覇したいと思っています。このプランだけは妻も嫌がらずに付き合ってくれています(笑)。

いいお店がありましたら是非教えてください。最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いいたします。

「大切にしていること」の項でも触れましたが、偶然にも同時期にこのトロントに滞在している皆さんと仕事・プライベートを問わずに素敵な思い出を作れたらと思います。私は現在、通勤時間を全く考慮せずに景色を最優先してハーバーフロントに住んでいますが、近くにお住まいの方がいらっしゃれば、フィンチ会やミシサガ会に対抗(?)してハーバーフロント会を是非やりましょう!

本日はお忙しい中、ありがとうございました。