Hankyu Hanshin Properties Canada Corp
General Manager 中島主税 なかじまちから 氏

今回はHankyu Hanshin Properties Canada Corp 中島主税氏にお話しを伺いました。100年以上にわたり沿線開発を手がけてきた阪急阪神不動産の海外事業を担い、現在はカナダでの事業拡大を推進している同社。現地パートナーと連携しながらトロントで開発を進め、日本の住まいづくりの強みを北米市場に生かす挑戦を続けています。中島氏は日本で不動産販売を経験した後、インドでの研修やフィリピンでの事業立ち上げを経て、2025年からカナダに駐在。2026年度商工会理事を務めていただいております。
-御社の事業内容のご紹介をお願いします。
阪急阪神不動産は、阪急電車・阪神電車を母体とする鉄道系デベロッパーです。大阪・神戸・京都を中心に、100年以上にわたって鉄道沿線を中心とした不動産開発に携わってきました。2014年からは海外不動産事業にも本格的に取り組み、東南アジアでの展開を経て、現在は先進国にもエリアを拡大しています。
カナダでは2024年頃から市場調査を開始し、2025年1月にオークビルの分譲マンション事業、同年11月にトロント中心部の賃貸マンション事業に参画しました。現在は現地パートナー企業と連携しながら、トロントで2件の開発を進めています。
-現在進めている2つの事業は、どのような顧客を想定していますか。
1件目の分譲マンションは、主に個人のお客様向けの事業です。一方、2件目の賃貸マンションは入居者自体は個人向けですが、最終的には建物全体を投資家などに売却することも想定しています。
-御社の強みはどこにありますか。
当社の強みは、大きく3点あります。1つ目は、100年以上にわたり大阪を中心に不動産開発を手がけてきた歴史と実績です。沿線に長く住み続けていただけるよう、住まいの品質にこだわり続けてきた結果、お客様からの信頼とブランド価値の向上につながっていると考えています。日本では「Geo」というブランドを展開しており、一度ご利用いただいたお客様が住み替えの際にも再び選んでくださることが多く、これも当社への信頼の表れだと受け止めています。
2つ目は、商品開発力です。当社では、お客様の声や潜在的なニーズを丁寧にくみ取り、商品性の向上につなげる取り組みを継続してきました。たとえば、コンセントの高さやキッチンのシンク・コンロ・作業スペースの最適なバランスなど、日々の使いやすさに関わる細かな点まで検証し、試作と改善を重ねて実際の製品に反映しています。こうした積み重ねが、当社の大きな強みになっています。
3つ目は、海外事業の推進力です。鉄道系デベロッパーの中でも、当社は比較的スピード感を持って海外展開を進めており、事業エリアの広さやプロジェクト数の面でも高い水準にあると考えています。また、その推進力を支えている従業員の多くが、若手社員であり、今後彼らが更に成長した暁には、より強力な推進力を得られると考えております。
-今後、特に力を入れていきたいことや展望を教えてください。
まず、今後はカナダでの不動産事業をさらに拡大していきたいと考えています。進出から約1年が経ち、現地パートナーとの信頼関係も十分に築けてきました。今後は開発の初期段階からより深く参画し、建物や住戸のプランに当社ならではの視点や、日本の住まいづくりの強みを取り入れていきたいと思っています。
現在は、パートナーが策定した計画に後から加わる形が中心ですが、カナダの商習慣や市場ニーズへの理解も深まってきたため、次の案件からは企画段階でより積極的に意見を出し、日本の良さをカナダ向けにアレンジして反映していきたいと考えています。
もう一つは、カナダの不動産業界を日系企業としてさらに盛り上げていきたいということです。現時点では、カナダに進出している日系デベロッパーは当社のみですので、今後は他の日系企業にも進出を促し、業界全体を活性化していきたいと考えています。そのために、日系企業への情報提供や説明の機会も積極的に増やしていきたいと思っています。

-特筆すべきニュースや新事業、新製品のご紹介をお願いいたします。
現在進行中の案件は2つあります。1つ目は、オークビルの分譲マンション事業「Claystone(クレイストーン)」です。サウスオークビルのレイクショア沿いに位置し、湖にも近い、落ち着きと高級感のあるエリアに建つデザイン性の高いコンドミニアムです。7階建てで、総戸数は約140戸です。周辺には大型スーパーマーケットやおしゃれなカフェもあり、生活利便性の高い立地です。着工は2026年9月、竣工は2029年2月を予定しています。
現在はカナダ政府の方針により、2026年末まで外国人は不動産を購入できませんが、この規制が2027年1月以降に解除されれば、日本の方々にもぜひご検討いただきたいと考えています。
2つ目は、「241チャーチ」です。トロントのダウンタウン中心部に位置する賃貸マンションで、53階建て・総戸数591戸の大規模物件です。イートンセンターから徒歩約5分と、生活・交通の両面で利便性の高いエリアにあります。現在すでに工事が進んでおり、2027年末の竣工を予定しています。詳細は来年半ば頃にお知らせできる見込みですので、ぜひご期待いただければと思います。
-中島氏ご自身の経歴を教えてください。
1991年に神戸市で生まれ、育ちました。高校からアメリカンフットボールを始め、大学まで7年間続けました。2013年に新卒で阪急電鉄に入社し、不動産部門に配属されました。現在はグループ再編により阪急阪神ホールディングスに所属し、不動産部門に出向していますが、入社当時は阪急電鉄の社員としてキャリアをスタートしました。不動産部門への配属は、私にとって大きな転機だったと思います。もし別の部署に配属されていれば、今ごろは日本で鉄道事業に携わっていたかもしれません。
配属後の3年間は、日本でマンション販売を担当しました。先ほど申し上げた「ジオ」ブランドの物件で、京都・大阪・神戸エリアの販売に携わっていました。入社4年目には、阪急電鉄の海外研修制度に手を挙げ、インドで1年間の研修を受ける機会をいただきました。これも私にとって大きな転機でした。当時、不動産部門にはまだ海外事業の拠点がなかったため、グループ会社の国際物流会社に出向し、インドで研修を行いました。
研修終了後に不動産部門へ戻ると、ちょうど海外事業の立ち上げ期に入っており、部長、課長、私の3人で東南アジアでの事業可能性を検討するところからスタートしました。タイ、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシアへ毎月のように出張し、各国でどのような事業が展開できるかを調査しました。その後、フィリピンでの新規事業が決まり、2018年から現地駐在として立ち上げに携わりました。
カナダに来るまでフィリピンに駐在し、事業が軌道に乗った後、2024年からは北米・オセアニアの新規事業拡大も担当することになりました。その一環でカナダにも出張を重ね、2025年3月から正式にカナダ駐在となりました。以前から現地の事業環境や雰囲気に触れていたこともあり、特に大きな戸惑いはなく比較的スムーズに順応できたと感じています。
-フィリピンでの仕事や生活はいかがでしたか。
フィリピンは、私にとって世界で最も魅力的な国の一つで、日本と同じくらい好きな場所です。人は温かく、気候も一年を通じて温暖で、暑さはあるものの、とても居心地の良い国だと感じています。
-これまでで特に印象に残っているプロジェクトは何ですか。
フィリピンで手がけた最初のプロジェクトです。919戸の戸建て住宅からなる大規模事業で、敷地面積は11ヘクタール、約11万平方メートルに及びます。2017年に検討を始めた当初は、敷地全体が鬱蒼とした森に覆われており、全体像すら把握できない状態でした。そこからパートナー企業とともに造成工事を進め、木の伐採や整地を重ね、約1年半かけてようやく土地の全容が見えるようになりました。
その後、戸建て住宅の建設に着手し、事業を本格的に進めていきましたが、東南アジア特有の商習慣やスピード感への対応に加え、立ち上げ時は一人駐在だったため、孤独を感じる場面も多くありました。それでも、パートナー企業のオーナーが私を息子のように接してくださるなど、公私にわたって多くの支えをいただきました。コロナ禍も含め、さまざまな苦労がありましたが、プロジェクトは2023年に無事完了しました。この経験を通じて、人としても社会人としても大きく成長できたと感じています。
-仕事を進めるうえで大切にしていることは何ですか。
自分が一番得をしないことです(またそう見せないこと)。私は新規事業を担当しているため、アメリカやロンドンなど各地へ出張する機会が多く、周囲からは羨ましがられることもございます。ただ、その分しっかり成果を出し、誰から見ても「それだけの責任と努力を伴っている」と納得してもらえる働き方を心がけています。上司・部下との関係でも同じで、自分の立場に甘えず、相手や会社にとって何が最善かを考えながら、信頼関係を築いて良い仕事につなげたいと思っています。
また、最近特に重視しているのが、対面でのコミュニケーションです。デジタルでのやり取りが増えている一方で、不動産事業ではパートナー候補との協議や関係構築において、実際に顔を合わせることが非常に重要だと感じています。直接会って話すことで、相手の考えや雰囲気をより深く理解でき自分の意図も伝わりやすくなります。そのため、たとえ1泊2日や日帰りでも必要であればできるだけ現地に足を運び、対面でコミュニケーションを取るようにしています。
-お好きなスポーツや休日の過ごし方について教えてください。
好きなスポーツは、野球とアメリカンフットボールです。特にアメリカンフットボールは、北米では人気の高いスポーツですが、日本ではまだなじみが薄く、ルールが分かりにくいと感じる方も多いと思います。ご希望があれば、一緒に試合を見ながらルールや見どころをご説明できますので、アメリカンフットボールのファンが増えるとうれしいですね。
野球はもっぱら観戦ですが、昨年はトロント・ブルージェイズの試合を7〜8回ほど観に行きました。仕事柄、お誘いいただく機会も多く、シアトル・マリナーズ戦のような印象的な試合も観戦できました。その経験もあって、すっかりブルージェイズのファンになりました。休日は出張が多く、移動で終わってしまうことがほとんどです。トロントでの生活も1年ほどになりますが、今後は新しい趣味も見つけていきたいと思っています。
-カナダ駐在中に挑戦したいことはありますか。
私事ですが2026年2月に結婚しました。夏頃には妻がトロントに来る予定ですので、これから一緒にさまざまな場所を訪れ、旅行も楽しみたいですね。さらに、カナダならではの体験としてオーロラもぜひ見に行きたいです。
-最後に、商工会会員の皆さまへメッセージをお願いします。
今年から商工会の理事に就任させていただき大変光栄に思っております。日系デベロッパーでカナダに進出している唯一の企業として、不動産事業を通じて、日本のデベロッパーの品質の高さや、日本ならではのものづくりの丁寧さをカナダの皆さまに広く知っていただけるよう、日々努力していきたいと考えています。
また、これまでフィリピンやインドなど、さまざまな国で駐在してきましたが、駐在員は限られた任期の中でその土地に滞在する立場だからこそ、そこで出会った方々やコミュニティを大切にし、地域社会に少しでも貢献することが大切だと感じています。カナダで暮らす多くの方に日本人コミュニティは素晴らしいと感じていただけるよう、私自身も誠心誠意取り組んでまいります。
-本日はお忙しい中ありがとうございます。これでインタビューを終わります。