私のとっておき ミシュラン星付アジア庶民の味再構築⁈ aKin 佐々木美和

たこ焼き=ソース{焼き(たこ+生地)}? 
アジア庶民の味を因数分解して再構築するミシュラン一つ星「aKin」
佐々木美和(Reuters, Editor)

octopus
「たこ焼き」を素因数分解して概念だけを取り出し、もはや別の次元に昇華した一皿。

から揚げ、たこ焼き、焼きそば――。アジアの街角で誰もが気軽に頬張るソウルフードを、ミシュランシェフが料理したら。

2025年に一つ星を獲得したこの店で味わえるのは、アジア各地の屋台料理や家庭料理を出発点に、それを解体して新たな形で組み上げた食体験である。高級中華でもない。気取った和食でもない。ましてや、ありきたりな「フュージョン料理」という言葉では片付けられない。「aKin」は、むしろ「aKin」という独自のジャンルを生み出したと言った方が正確かもしれない。

メニューは季節によって変わる、約10品のブラインド・テイスティングコースのみ。一応のお品書きはあるが、記されているのは主要な食材だけ。次に何が出てくるのか分からないまま食事が進んでいく。

餃子、海南チキンライス、トムヤムクン、ベトナムコーヒー――。アジア各地で親しまれている料理が次々に登場するが、運ばれてきた瞬間にそれと分かる一皿はまずない。

foods on the table
キンパ(韓国風のり巻き)やサテ(インドネシア風焼き鳥)、パパイヤサラダをモチーフにした前菜の数々。

「これが本当にあの庶民の味なのかな?」と首をかしげながら口に運び、次の瞬間に「あっ、なるほど!」と膝を打つ。どの皿にもそんな驚きと、そして納得がある。まるでマジックショーだ。

まるで懐石の向付のような、フレンチのスープのような、この見た目で味はしっかりトムヤムクン。
ふたを取った瞬間、立ち上る煙の向こうに鎮座するのはラム肉餃子。玉手箱を開ける浦島太郎の気分で。
 

日本が世界に誇るコンビニの定番メニュー、子どもの頃に食べた屋台の味、旅先で出会ったアジアのローカルフード。その記憶を呼び起こしながらも、想定外の形で目の前に現れる料理の数々に、必ず歓声が上がるはず。

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お会計の伝票(鉢植え左端の丸めた紙)とともにもらえる(むしろ最後までもらえないと言うべき)お品書き。

「から揚げや焼き鳥がミシュランの舞台に立ったらどうなるのか?」
aKinはそんな突飛とも思える発想を現実化した、多文化都市トロントならではのレストランだと言えるだろう。少々値は張る。しかし、記念日や特別なお祝いの日なら、その驚きに対価を払う価値は十分にある。


aKin
51 Colborne St., Toronto, M5E 1E3
https://www.akintoronto.com/
TTC King駅より徒歩3分、予算1人あたり300ドル程度から