オンタリオで活躍する日本人に聞く



「トロント日本映画祭」仕掛人

 高畠  晶(Aki Takabatake)さん

今回は、2012年から開催されている「日系文化会館主催トロント日本映画祭」の仕掛人、高畠晶さんにお話を伺いました。トロントと日本を頻繁に行き来されるなか、やっとインタビューが実現しました。

 (伊東 “伊”)

初めまして。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。最初にお伺いしたいのは、どのようなお仕事をされておられるのでしょうか。

 (高畠 “高”)映画関係の仕事をしております。BC州のブリティッシュコロンビア大学に留学し、映画とフランス語を勉強しました。

 日 本に帰った後は、映画の買い付けをやりたいと思っていたところ、映画の配給会社に就職することができ、映画買い付けにかかわる業務をすることができまし た。当時、アクション系などの映画を扱い、その後韓国映画のブームが来て、アジアの映画を多く手掛けました。買い付け、配給、TV局への販売なども学ばせていただきました。

 (伊)それは日本でのお仕事だったのですね。カナダに来られたのは、どのような経緯ですか。

 (高)学生時代に知り合ったカナダ人の主人が日本に来てくれ、6年くらい日本で生活をしていたのですが、そろそろカナダに帰りたいと言い出しました。自分にとっても、ちょうどタイミングもよかったのでカナダに戻ってくることにしました。

 トロントに来てから、日系文化会館に映画祭をやりませんかと話をもっていったところ、話が進みました。

 (伊)なぜ映画祭をやろうと思ったのですか。

 (高) トロントにいて、日本人としてなにができるだろうかと考えたときに、日本での経験から日本の映画を紹介できる映画祭にかかわることかなと思い浮かびまし た。日系文化会館の館長ジェイムス・ヘロンさんが賛同してくれて、トロント日本映画祭という形で立ち上げることができました。この話を持ち掛けたのが2010年で、映画祭が始まったのが2011年ですので今年で9年目、来年は10年となります。

 (伊)毎年開催するにあたり、苦労していることはなんでしょう?

 (高)ゲストがなかなか決まらないところでしょうか。映画会社さんとの映画上映の交渉はすでにネットワークと実績があるので、それほど大変ではないのですが、ゲストを招聘するのに苦労しています。

 開催当初は、監督さんを招聘するのが精一杯でお二人ほど来ていただきましたが、規模も大きくなり知名度も高くなってくるにしたがって、監督さんだけでなく俳優さんも来てくれるようになりました。

 ただ、主演俳優さんレベルになると忙しく、来たいけどスケジュールが取れずに来れないというケースが多く、また決定までに時間がかかります。重複しては困るので、同時並行で多くの俳優さんにお声かけするわけにもいかず調整が難しいところです。

 (伊)日本の映画会社や配給会社にトロント映画祭での上映を交渉するときに、「なんでトロント?」というような反応はありませんでしたか。

 (高)それはあまりなかったですね。今は、いろいろな国、場所で日本の映画祭が行われており、珍しいことではなくなっています。

 (伊)日本の映画界におけるトロント日本映画祭の知名度はどんな感じでしょうか。

 (高)最初は10本くらいで始まったトロント日本映画祭ですが、現在は25本以上映する規模になり、相当知名度は上がっていると思います。上映する劇場の規模も、500名を収容できる日系文化会館の規模は大きい方で、観客の反応もよく、笑うところでは笑ってくれ、スタンディングオベーションもあり、ゲストの方も魅力を感じてくださるようです。

 昨年は、ワールドプレミア(世界初上映)を行うことができ、映画関係者の方にも一層知名度が上がったのではないかと思っています。

 (伊)今年2020年のトロント日本映画祭の上映映画はもう決まっているのでしょうか。

 (高)今時点(2月上旬)で、ほぼ半分は決まっています。1年前くらいから選考のため作品を観始めますので、結構長いプロセスですね。多くの人に喜んでもらえるように、映画を選びます。時にはこの映画を上映してくださいというリクエストをもらうこともあります。

 昨年Yahoo! Japanがクリエータープログラムという短編製作プログラムを始めているのですが、それに関わっているNHKのプロデューサーと親しく、優秀な作品を海外にも広めたいので、トロント日本映画祭で上映してくれないかと要請を受けました。そこで、昨年は5本上映しました。

 決まったのがぎりぎりだったので、プログラムにも載りませんでしたが、10分のドキュメンタリーで本編の前に上映したところ結構反響がよかったですね。Yahoo!さんの趣旨は社会問題を提起するような内容のドキュメンタリーを求めているようで、年間80本くらい製作されています。今回は私も企画として1作品携わることができ、今年もその作品を含めて何本か上映したいと思っています。

 (伊)トロント映画祭以外の仕事ではどのようなことをされていますか。

 (高)最近多くなっているのが、カナダの映画会社、制作会社が、日本で撮影、収録したいから通訳兼コーディネーターとして一緒についていってくれないかという依頼です。

 (伊)それは、日本のどのようなところを撮りたいという企画ですか。

 (高)それは、本当にまちまちですね。カナダにはフランス語圏があり、仏語のテレビ局からも依頼があります。最初は健康にかかわる番組で、いろいろなところに行き、多くの人にインタビューするものでした。

 そ の後は、水害に関するものもありました。防波堤とか、巨大な地下貯水講の取材や、水害の専門家の話を聞いたりするものでした。また、救急隊員の取材もあり ました。実際に救急隊員と一緒に行動したりするものでしたが、救急隊の車に同行させてくれるところを探すのがとても大変でした。

 (伊)そうした取材先は、どのように探すのですか。

 (高)大抵Googleですね。救急隊同行については、たまたま地元の知人従妹?が元救急隊員だったのでなんとかつないでお願いしてもらいました。東京などは救急車内の撮影はダメなんですが、地元の市ではOKでした。

 (伊)なんで日本なんでしょうかね。

 (高)こうしたテーマをいろいろな国で取材する中の一つが日本ということが多いです。また、日本特有のライフスタイルを取り上げるものもあり、田舎のかやぶき屋根の家などにカナダ人家族が旅行をするという企画で、今週からクルーと一緒に日本に行きます。

 (伊)そうした撮影は、何人くらいのクルーで行うのですか。

 (高)少ないですね、3人から5人くらいですね。カメラマン一人、音声一人という場合もあります。

 (伊)同行していて困ることはないですか。

 (高)TVクルーは旅慣れているのでそれほど困ることはありませんが、食事で困ることはありますね。カナディアンにはベジタリアンの人が結構いるので、そうした食事を見つけるのに苦労します。

 (伊)これまでに関わったお仕事で変わった内容や要求のあったものはありましたか。

 (高)カナダでサムライのドラマを撮るというのがあり、かなり大変でした。トロント郊外の自然の中での野外戦のようなシーンが殆どでしたが、役者さんはトロントダウンタウンに滞在していたので、4時起床、5時ピックアップ、6時現場到着、そして撮影というスケジュールはつらかったですね。

 (伊)仕事の依頼としては、日本からカナダに来る仕事と、カナダから日本に行く仕事とどのようか割合ですか。

 (高)カナダのクライアントがほとんどなので、カナダの制作会社からの依頼がほとんどですね。

 (伊)日本で撮りたいという依頼は増えていますか。

 (高)観光という面でも、オリンピックも行われるという面でも、日本への関心は高まっていると感じますね。

 (伊)日本の観光というと、温泉といったイメージを持つことが多いですが、カナディアンが興味をもつものにはどんなものがありますか。

 (高)食への関心は高いと思いますし、ディズニーやユニバーサルスタジオのような娯楽施設、また伝統的な文化に興味を持つ方も多く、非常に対象が広いですね。一定レベル以上のものが、なんでもあるのが日本の魅力なのかもしれませんね。

 (伊)今後やってみたいと思っていることがありますか。

 (高)映画祭だけでなく、配給という形でカナダの映画館で日本の映画を紹介していきたいと思っています。最初は小さくても良いので、トロント、バンクーバーでそれぞれ1劇場くらいの規模で、カナダ人が好みそうな映画を上映できたらと思っています。

 そのためには、劇場とのコネクションが必要ですね。日本の関係者に聞くと、劇場とのコネクションは自分でやれ、と言われました。これには時間がかかりそうですが、小さなインディーの劇場から始められたらと思っています。

 トロントでは昔からあった小さな劇場の多くが閉じてしまったのですが、最近再開した劇場もあるとの情報もあり、そうした地元密着型インディー劇場などにアプローチしたいと思っています。

 (伊)カナダの人が好きな映画のジャンルってなんですか。

 (高)アニメだと思います。映画祭などでも人気です。ただ、自分はあまりアニメに詳しくないので、自分の好きな映画を紹介していきたいと思っています。

 (伊)楽しみにしています。では最後に、高畠さんが思う映画の魅力とはなんでしょう。

 (高)2時間くらいの短い時間で感動できる世界だと思います。

 (伊)確かにそうですね。本日はお忙しい中、お時間をいただき興味深いお話をありがとうございました。