トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング 再訪  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント街角巡り連載を始めてはや5年。「ネイバーフッド」と呼ばれるエスニックタウンやローカルコミュニティの商店街の風景は、その間にも絶えず変化してきています。第二次世界大戦後に移住してきた世代の多くが商店街でのビジネスをリタイヤし、アジアや中東、カリブ諸国からの移民が増え、トロント市の人口は260万人を超えました。モザイク都市トロントの街角がそれぞれどんな風に変わってきているのか…再訪、再発見をレポートします。


 

第32回 ケンジントンマーケット再訪
フリーランスライター 三藤あゆみ

普段スーパーやモールでばかり買物していると、マーケットへ出かけるのはちょっとわくわくした気分になるものです。

ケンジントンマーケットは、100年以上の歴史を持つトロントダウンタウンで最も古い商店街のひとつです。長い間、生鮮食品や食料雑貨などの店と服の仕立屋や古着屋を中心に成り立っていました。

移民の歴史を反映しながら店の内容は少しずつ変化してゆき、学生や観光客もたくさん集まるようになりました。最近は、タコスやチュロスをはじめとしたメキシコや中南米系のストリートフードを出す店とカフェが急増し、ギフトショップや健康食品専門店も次々とオープンしています。

Augusta Ave、 Baldwin Ave、 Kensington Aveに店が集中しいつも賑わっていますが、かつてポルトガル系やカリビアンのグロサリーショップや飲食店だったところの多くをラテン系がとって代わったのは90年代終わりごろからです。

ケンジントン一帯は、19世紀にスコットランドやアイルランドからの移民が住んで露天や蚤の市が始まり、続いてユダヤ系、イタリアやポルトガル系、カリビアン、香港出身の中国人、80年代以降は、ソマリア、エチオピア、スーダン、ベトナム、イラン、メキシコからの人々が多く流れ込んできました。

現在この界隈の住人は、中国語を母国語とする人が一番多く、ポルトガル系、ベトナム系、スペイン語圏のラテン系と続くそうです。

ケンジントンの商店街も住民の移り変わりとともに変化してきましたが、グリークタウンやリトルイタリーなどが近年スタイリッシュで整然とした新しいエスニックタウンになる一方、ケンジントンマーケットの古い街並みやマーケットの雰囲気はあまり変わりません。

それは、ここがカナダの国定史跡に指定されているからです。店の内容や看板が変わっても、ビクトリア式建築の旧民家の建物や道路幅なども変わらないので、ごちゃごちゃしたマーケットの風景はだいたい残されていて味があります。

ケンジントンマーケットの街並みが国定史跡に指定される前、2002年にナイキのエアプレストショールームがオープンしたことがありましたが、発展途上国の工場での労働者の扱いに反発する人々や住民が集まって、スポーツシューズに赤いペンキを塗って店の外に吊るしたり激しいデモを行うなどして、結局ショールームはケンジントンでの営業を諦めるという事件がありました。

それほど派手でなくともメジャーなフランチャイズチェーンや、環境や人権に悪影響を及ぼすと取り沙汰されるビジネスがケンジントンマーケットに入ってくるのは今もとても難しいようです。ローカルたちから受け入れられないので、一般には美味しいと人気のベイカリーフランチャイズが開店しても、すぐに引っ越してしまいました。

カウンターカルチャーが根をはっているケンジントンには、大麻カルチャー、ホリスティックライフがテーマの店や、政治的思想色の濃い店もあります。今回のアメリカ大統領選挙での社会現象やもう準備が始まっているカナダの大麻合法化などの影響で、ケンジントンマーケットが一層注目を浴びるようになる気がします。

ケンジントンマーケットへ出かけたら、歩いて店先を眺めるだけではなく、店の中に入っていろいろ物を手に取って見てみるのがおもしろいと思います。古着屋やビンテージストアなどで掘り出し物があるかもしれません。

ネイバーフッド巡りの記事を書いているにもかかわらず、実は私はショッピングがあまり好きでなく、クリスマスが近づくとストレス最高値なのですが、何かちょっと気の利いた小さな物やパーソナルなギフトを送りたいときにはケンジントンに探しに行くと、必ず何か見つけられます。

特にBlue Banana マーケット(250 Augusta Avenue)はお勧め、ユーモアの利いたアイデアやデザインのガジェットや小物がいっぱいあります。必ず誰かにコメントされるであろうユーモアたっぷりのマグカップや、靴下、ビール関連のガジェット、中にはレトロ風でかわいいパッケージだと思ってよく見てみるとかなり下ネタ系ネーミングだったりする石鹸等々。

Toronto Popcorn Company(147 Baldwin St)、Casa Acoreana(235 Augusta Av)、House of Spice(190 Augusta Av)、Good Egg(267 Augusta Av)なども、お菓子、キャンディ、ティー、世界のスパイス、キッチン用品や本などマルチカルチャーなトロントらしい物がそろっています。

ケンジントンの店のリストはこちらです。
http://www.kensington-market.ca/default.asp?id=home&l=1

ところで、毎年12月冬至の夜にケンジントンマーケットの住民や、自然崇拝、多神教の信仰者やユダヤ教信者が集合してマーケットから近くの公園まで行進し、冬至の儀式が行われます。ローカルなお祭りですが、太陽神に仮装したり、仮面をつけてキャンドルやランタン持って歩くのでちょっとファンタジックな気分が味わえます。集合時間にマーケットへ行けばランタンを買って誰でも参加できます。

行進は、DundasxBathrustにある図書館の裏手のAlexandra Parkまで行き、焚火をして大きな像を燃やします。2016年は12月21日、行進はOxford x Augusta を夜7時に出発するそうです。ランタン販売など詳しい情報はいつも直前に掲載されるので、興味のある方は、Kensington Market Winter Solstice Paradeと検索してみてください。



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