トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


第27回 トロント島 Toronto Islands 



フリーランスライター 三藤あゆみ


ハーバーフロントから出発するフェリーで10~15分で渡れるトロント島。フェリーや島から湖越しに眺めるトロントダウンタウンの摩天楼は美しく、写真を撮るために島を訪ねる観光客もたくさんいます。

日本語では「トロントアイランド」と書かれることが多いですが、英語だと「トロントアイランズ」と複数形。橋で行き来できる15個の小さな島々で形成されており、センター島、アルゴンキン島、スネーク島など、それぞれの島に名前がついています。

フェリーが発着する島のひとつ Centre Island は、ファーム(Far Enough Farm)や遊園地(CentreVille Amusument Park)、そしてダウンタウンと反対側の南岸には砂浜のビーチが続くので、家族連れの週末ピクニックに人気の場所です。

島全体がトロント市の管理する公園ですが、ハイパークなどとの大きな違いは、公園内(島内)で暮らす人々がいること。

Algonquin島とWard's島には300軒の民家があり、現在約600人が住んでいます。小学校や幼稚園、デイケアセンター、教会や消防署もあります。

住宅のほとんどがコテージスタイルで、きれいな色でペイントされています。花いっぱいのよく手入れされた庭、水と緑に囲まれた、絵本にでてきそうな風景は、わずか10分先にあるダウンタウンの高層ビル街とは別世界です。

島にはスーパーやコンビ二、薬局などもないので不便な面もありますが、そんなのどかな都会のサンクチュアリーに住み、フェリーでダウンタウンの職場へ通うのに憧れる人も多くいます。でも、トロント島に部屋を借りたり、家を購入するのはかなり難しいのです。

家主は一年に最低でも220日はそこで生活し、自宅として使わなければならないという決まりがあり、一軒まるごと賃貸したり、長期サブレットしたりはできません。そのためアパートや貸し部屋などの物件はとても少なく、しかも借りるにも買うにも「島の住人が身元照会者であること」が条件なので、なかなかたいへんです。

家が売りに出ても、購入資格があるのはToronto Islands Residential Community Trustが管理する500名までのウェイティングリストに載っているうちの最初の100人のみ。リストは常にいっぱいなのに、“For Sale ”の家は毎年1、2軒ほど。土地は政府のものなので、家とは別にリースを購入するそうです。

そんなトロント島にも、野球やラクロス用のスタジアムやホテル、地元有力者の別荘が建ち並び、大きな遊園地(現在のビリービショップ空港のところにありました)、劇場や映画館などがあった時代もあります。19世紀後半、英国が先住民からトロントの土地を買い取った頃から、島のほうも区画整理が行われ開発が進みました。

かつて島にあった野球場は、当時のメジャーリーグチーム(インターナショナルリーグという名称でしたが)だった「トロントメープルリーフス」のホームでした。また、ベーブ・ルースがプロ野球選手として初のホームランを打ったところでもあります。ベーブ・ルースの第一号ホームランボールは、スタジアムの囲いを越えて飛んで行きオンタリオ湖へ落ちたそうです。

1956年、新しいメトロトロント政府がトロント島を管理し始め、古いコテージの取り壊しがはじまります。市は、島全体を市営の公園にするために、センタービルアミューズメントパークや動物ファームを建設し、マリーナをオープンしました。政府は、それ以来数回に渡って、島の住民を追い出そうとしましたが、そのたびにコミュニティの強い反対にあいました。

島の土地に関しては、「18~19世紀にかけて行われたトロントの土地買収に島は含まれておらず、お金を受け取ったという事実も無い」という先住民アニシナベ(ミシサガ族とオジブワ族)の訴えもありました。トロント島は、植民時代以前はアニシナベの人々の聖なる地、美しい水と緑の島は「メネシング」と呼ばれ、病気を治すために滞在する大切な場所でした。スピリチュアルな伝統ヒーリングも行われていたそうです。

いづれの問題も決着がついたのはほんの最近のこと。コテージの住民は市から土地をリースする形で島に住み続けることが正式に認められ、ミシサガ族の子孫は政府から支払いを受ける代わりに今後一切島の所有を主張しないことに同意しました。

そんな歴史を知ったうえで、トロント島を端から端まで散策してみるといっそう楽しいかもしれません。トロントアイランドには、自転車、ボート、カヌーレンタルもあります。

島の中の移動手段や、どこで長く過ごすかにより毎回少しづつ違った体験ができます。大人どうしなら、Ward’s Island行きのフェリーに乗り、コテージの並ぶ静かな道を散歩してからボードウォークを歩き、Rectory Caféでお茶か食事といったコースも都会の日常を離れたひとときがすごせると思います。

島へのフェリーは、クィーンズキーのJack Layton Ferry Terminal(ウェスティンハーバーキャッスルホテルの裏)から出ています。夏の週末はターミナルはかなり混雑しますが、船は一度に大勢乗れる上、今はインターネットでもチケットを購入できるようになっています。
フェリーの時刻と料金はこちら











戻る   「トロント街角めぐり」記事一覧へ