トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


第23回 ノースリバーデール North Riverdale
古い街並み、旧中華街、そして夕陽の美しい丘

前回、キャベッジタウン散策で紹介したリバーデールファームの横を抜けて、DVPドンバレーパークウェイに架かる橋を渡って遊歩道へさしかかると、大きな運動場と丘のあるリバーデールパークが目の前に広がります。公園の緑の斜面を登りきったところが、Broadview Ave。地下鉄Broadview駅から徒歩15分ぐらいの辺りに出ます。

丘の上のBroadview Ave.からの眺めはその名のとおり広大で、ドンバレーからキャベッジタウン東側の森、その向こうにそびえるCNタワーやダウンタウン金融街の摩天楼が一望できます。夕暮れの空は特に絶景です。

そこから少し南へ下ったGerrerd St. East ある小さな旧チャイナタウンあたりから、北はDanforth Ave.のギリシア人街までの一帯が、ノースリバーデール(North Riverdale)と呼ばれる地域です。

ノースリバーデールは、キャベッジタウン同様19世紀から続く住宅地。眺めのよい丘の上のエリアは、円柱とテラスが特徴のエドワード様式の大きな家が残っており、南に行くほど、植民地時代に労働者が寝泊りしたコテージを改装した家やビクトリア調のタウンハウスが多くなります。

いずれも今となっては貴重な歴史的建築物なので、家を改装するときには市の許可が必要となる文化財保護地区になっている通りがいくつもあります。

ノースリバーデールの住宅街にはトロントダウンタウンの他の地域とはちょっと違った雰囲気があります。ここもトロントの都市計画通り、中産階級、富裕層に加えて、貧しい労働者や生活保護を受ける低所得層の住宅が混在していますが、公営住宅の街並みが花と緑いっぱいの小さなコテージ村のようなチャーミングな風景なのです。

それは、Withrow Parkの西側にあるBain Co-opという公営住宅で、産業革命時代にイギリスのエベネザー・ハワード氏が提唱した労働者階級のための「田園都市計画」に影響を受けて、トロントのエデン・スミス氏が100年前に設計したものです。

日本の田園都市のイメージとは違い、オリジナルの田園都市計画は「労働者階級の小さな住宅にも美しい庭があり、近くに公園や森もあり、周囲は農地に取り囲まれている。不動産は賃貸し、不動産賃貸料で建設資金を償還するので、都市発展による地価上昇利益が土地所有者によって私有化されず、町全体のために役立てられる」といったコンセプトだったそうです。

Bain Co-opのアパートは、それをこじんまりと実現したような感じです。木々や花があふれる環境の中に、チューダー様式を模倣した建物や、レンガ造りに三角屋根のかわいらしいアパートが260件。バラのアーチや石畳の通路があったり、住民が利用できる家庭農園用の土地もあります。

ノースリバーデールには、ギリシア人街と旧チャイナタウンが含まれます。ギリシア人街は新しいレストランや店などが次々とオープンし盛り上がっていますが、旧チャイナタウンのほうは、借り手のつかない空き店舗が多いようでまだまだ発展途上中です。

旧チャイナタウンは、以前は小さなレストランや食料品店、漢方薬専門店などが狭いエリアにぎっしりと軒を連ねていました。夏になると生ゴミの悪臭がひどくなったり、英語がよく通じない店が多くあまり行ってみる気にもなりませんでしたが、コミュニティの人々に話を聞いてみると怪しくてちょっとおもしろいエピソードがたくさん。

70年代、80年代には、中国系の若者や男たちが明け方まで営業しているレストランに集まって麻雀をしていたり、リカーライセンスがない店でも深夜に行って「飲茶」を注文するとランチタイムの飲茶で出す中国茶のティーポットにビールやウィスキーを入れて出してくれたとか。レジでは密輸入したマルボロが2~3ドルで売られていたり、1500ドルで大学の卒業証書やドライビングスクールの卒業証書が手に入ったり・・・。

現在は市による衛生管理も取り締まりも厳しくなり、そんなビジネスを堂々とする人も減ってきました。また、再興がなかなか進まないといっても、最近は一般カナダ人にも人気のグルメなベイカリーや雑誌に取りあげらるようなベトナム料理店、フレンチレストランなどが少しづつ増えてきています。

ギリシア人街で食事をした帰りなどにノースリバーデールを散策する機会があったら、ぜひBroadvie Ave.からリバーデールパークを見下ろす丘に行って、トロントの摩天楼や美しい夕陽をカメラに収めてきてください。雪景色もまたなかなかのものです。そして、その絶景と美味しいコーヒーが売り物のRooster Coffee Houseをぜひ訪ねてみてください。



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