トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


第19回 ポルトガルビレッジ Portugal Village -美味しいシーフードを探しに -


トロントダウンタウンのリトルイタリーをCollege St. 沿いに西へ、Ossington Ave.を過ぎたあたりからイタリア系の店がフェードアウトしていき、ポルトガルビレッジと呼ばれるエリアに入ります。ポルトガルビレッジは、観光客が集まるような商業化された街並みではありませんが、周辺の住民もポルトガル系やブラジル系が多くエスニック色の濃い一角となっています。サッカーW杯開催中やUEFAチャンピオンズリーグの季節には、それが一目瞭然になります。

カナダには約22万人のポルトガル系が住んでいますが、約半数がポルトガル語を母国語とし、その多くがトロントに住んでいるそうです。

College St. やDundas St. West沿いにレストランやベイカリー、雑貨屋などが点在しており、ポルトガル伝統のシーフードリゾットや魚介類のシチュー、新鮮なイカやタコを茹でたりマリネしたものを出すレストランが数件あります。トロント郊外から美味しいシーフード目当てにわざわざこのネイバーフッドに足を運ぶ人も珍しくありません。

ポルトガル料理、特に魚介類の味付けは、ソースにはあまり凝らず素材の味やダシを生かしたシンプルなものが多いので日本人には食べやすいと思います。ポルトガル本土やアゾレス諸島から空輸された魚のグリルや、名物である塩漬けの干しダラを使った様々な料理、小イワシのフライなどもなんとなく親しみを感じる味です。

ブラジル式の肉料理、シュラスコ(シュハスコ)専門店もあり、特にパティオが開く夏にはあたり一帯にBBQのいいにおいが漂います。ローカルの間では、ポルトガル名物ピリピリソースで焼いたチキンが人気です。

「ピリピリ」はポルトガル語でトウガラシのこと。余談ですが、日本にトウガラシを持ち込んだのはポルトガル人で、16世紀に豊後国の大友氏に南瓜の種とともに献上したとの記録が残っているそうです。なので、日本語の「ピリ辛」も、ポルトガル語のピリピリが語源だと言われています。

ポルトガルビレッジで軽くお茶を飲んだり、カメラ片手にちょっとぶらぶらしてみようと思ったら、College St.とOssington Ave. の交差点あたりか、Dundas St. WestとSheridan Ave.の交差点あたりがよさそうです。お店の壁一面に、青空によく映えるカラフルなウォールペインティングが施されていたり、ポルトガルのエッグタルト(Nata)や、長崎カステラのルーツと言われる丸型ケーキ、パォン・デ・ロ(pao de lo)が手にはいるベイカリーやカフェもあります。

夜になるとバーやラウンジもけっこうあるのに気づきますが、このあたりのバーの客層は学生など若者が多く、落ち着いて過ごすのにはあまりむいていません。

ラテン音楽が好きな人は、Lula lounge(1585 Dundas West http://www.lula.ca/)なら、けっこう楽しめるかもしれません。日曜は家族向けのキューバ料理ブランチバフェとサルサダンスレッスンをやっていて、子供連れでも行けるところです。金、土の夜はディナーとダンスの夕べや、ラテン音楽やジャズライブのある日もあります。予算は一人50ドルぐらい、要予約です。

ところで、ポルトガルとは関係ないのですが、この界隈に私がトロントの古本屋で一番気に入っているちょっと変わった店があるので、それもついでに紹介しておきたいと思います。その名も怪しげな、The Monkey's Paw(1229 Dundas St. West)。イギリスの短編怪奇小説「猿の手」からきています。(あらすじは、こちら

ここにあるのは、ただの古本ではなく、店主がこだわり選びぬいた個性的な品揃え。20世紀前半に出版された本を中心に、昔のヘンなノウハウ本や、今では出版禁止用語になっている言葉続出の戦前の本、当時はまじめにかかれたはずが今読むと笑ってしまうような内容のものなど。かわいらしいアンティークの絵本もありますが、とにかく本棚に意外性がいっぱいつまった店です。

店内にあるビンテージデザインの自動販売機は、2ドル入れると古本が一冊出てくるアンティーク本自販機です。自分で本を選ぶことはできず、何が出てくるか開けてみてのお楽しみというわけです。古いものや変わったものに興味のある方はぜひ一度覗いてみてください。

ポルトガルビレッジの商店街は、まだまだ発展途上中なので散策して楽しむとような雰囲気の通りは限られていますが、実際入ってみなければ分からないような穴場スポットがいくつもあります。インターネットなどで情報を探してからレストランを予約して出かけるなど、ターゲットを絞って少し通ってみると、きっとトロントの中でも指折りの“お気に入りの一軒”が見つかることでしょう。


ローカルに人気のレストランをいくつか挙げておきます。
●Chiado
864 College Street
有名なシーフードレストラン。ポルトガルから空輸された魚など。少し予算は高めだが日本人からも高評価。

●Quinta Restaurant
1282 Dundas St. W
http://www.quinta.ca/
マグロを使った料理や、ホワイトワインとトマトベースでゆっくり魚介類を煮た“シーフードカタプラナ”が売り。

●Bairrada Churrasqueira Grill
856 College St
http://www.bairrada.ca/
シュラスコBBQとシーフード、ポルトガル料理を幅広く楽しめる。トロントエリアに 4店舗あるうちのひとつ。

●Churrasqueira Sardinha
707 College St. West
http://www.churrasqueiradosardinha.com/
テイクアウトが人気のシュラスコ専門店。好みで“ピリピリ”ホットソースをつけてくれる。 



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