トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


第14回 ロマネスク建築と緑が美しい都会のオアシスを歩こう トロント大学セントジョージキャンパス


都会の真ん中にこんなに心なごむ空間があったのかと思うような素敵な散歩コースがトロントダウンタウンにあります。71ヘクタールの土地に(東京ディズニーランドの総面積が51haです)、よく手入れされ青々とした芝の庭を抜ける小道、ネオゴシックやロマネスク建築のクラシックな建物が青空に映え、植え込みや木々の間をリスたちが走り回る、トロント大学のセントジョージキャンパスです。

大学の敷地は塀などで囲まれていないうえ一般道路がキャンパス内を通っているので、ぱっと見ではどこからどこまでが「キャンパス」なのか分かりにくいのですが、大雑把に言うとBloor St. WestとCollege St.の間、東西はBay St.とSpadina Ave.に挟まれたエリアです。校舎や新しいビルの間の小道を一歩中に入ると、歴史深い建造物や緑の多い庭に石のベンチと欧風デザインの街灯など風情ある景色が広がります。St. Gorge Streetの東側、 College St.の北側には1858 年から1929年にかけて作られた建物が特に多くあります。これら古い建築物を見てまわるには、Philosopher's Walkと呼ばれる小道を辿っていくのが最も分かりやすいと思います。

小道へはBloor St. 沿いのROM(ロイヤルオンタリオ博物館)とRoyal Conservatory of Musicの校舎の間にある門から入ることができます。昔、この小道はオンタリオ湖に流れ込むTaddle Creekという小川の一部だったそうです。トロントの工業都市化が進むなか小川は埋められてしまい現在その水は地下を流れていますが、かつての流れが作った地形を生かしながら小道と周りの風景をデザインしてあるそうです。

Philosopher's Walkを南に下って行くと、右手にチューダー様式のトリニティカレッジの建物が現れます。正面の入口に鍵がかかっていなければ、中庭に入ったりチャペルの中を見ることもできます。トリニティカレッジの前の通りHoskins Ave.を渡ると左手がクィーンズパーク(クィーンズパークの東側にもトロント大学の校舎や寮が続きます)、そして右手には芝のグラウンドが見えます。


グラウンドと校舎の間の道を南へ歩いていくと、有名なハートハウス(Hart House)の建物や、ソルジャーの鐘塔が見えてきます。ハートハウスの中も少し覗いてみましょう。ちょっと暗めで重厚な雰囲気のインテリアですが、いたってオープンで誰でも利用できるカフェや、会員登録さえすれば一般の人も使用できるジム、プール、映画編集スタジオ、ダイニングやミーティングルームなどの施設が入っており、ギャラリーグリル レストランではサンデーブランチを出しています(要予約。7、8月は休業http://harthouse.ca/gallery-grill/)。ここはまた、結婚式場としても利用できます。


隣接するユニバーシティカレッジはロマネスク様式の威厳ある建物です。上階のステンドグラスのある講堂や、夜のライトアップなどとても美しいのですが、実はここ、幽霊が出るトロントの10大スポットのひとつとしても知られています。建築作業中に、妬み深い同僚に殺され、長い間誰にも知られることなく校舎の床下に埋められていた石工の幽霊なのだそうです。


ハートハウス、ユニバーシティカレッジ、ドーム天井のコンヴォケーションホールなどのあるエリアはトロント観光ツアーのコースにもなっており、観光バスで団体客が訪ねてくることも珍しくありません。また、学生や大学関係者だけでなく大学周辺に住むローカルたちも、キャンパス内の小道やクィーンズパークを毎日のジョギングや散歩コースにしたり、暖かい季節には静かな中庭で読書や昼寝、持参したランチやコーヒータイムを楽しんでいます。これから夏にかけては多くの学生が帰省するので、キャンパスが少し静かになり、のんびりと散歩をするのにもってこいの時期です。

古い建物の中も覗いて見たい方は、土曜の昼間や金曜の夜9時前に出かけてみてください。また、週末でも土曜の昼間は大学の書店University of Toronto Bookstore(214 College Street)や、一部カフェテリアが営業しています。書店には学術書だけでなく、カナダやトロントに関する小説や歴史書、写真集などが豊富に揃っており、大学のロゴが入った文房具品、雑貨、Tシャツなどちょっとしたトロントみやげになりそうなものも売っています。そして散歩のゴールは、大学の南側にあるボルドゥインビレッジや、北側ならブロア沿いかヨークビルのレストランで食事というのも一案です。



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