トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


第11回 Yorkville
ヒッピーの溜まり場からグラマラスな高級ブティック街へ


トロントのヨークビル(Yorkville)は、高級ブランドが集中するカナダでは最も大きなショッピング街として知られています。ハリー・ローゼン、プラダ、ヴィトン、ティファニー、グッチ、バーバリー、シャネルをはじめとした数々のブティックや、Hazelton LanesやHolt Renfrewなどのショッピングセンターに加え、ここ数年では人気のカジュアルブランドやスポーツブランドの店も増えました。また、このエリアは、高級ホテルやラウンジなども多く、毎年9月に開催されるトロント国際映画祭の期間には世界中から有名な映画スターや業界の著名人たちが集まるので、商店や施設がますます洗練され充実してきています。

ヨークビルは、トロントではかなり古くからあるネイバーフッドのひとつで、現在のハイスケールなブティック街に落ち着くまでさまざまな変化を遂げてきました。トロント市内を東西に走るBloor Streetの名は、19世紀はじめにこのあたりに住んでいた実業家のジョセフ・ブルーア氏に由来しているのですが、ヨークビルはもともと、このブルーア氏が中心となって作ったトロント郊外の小さなコミュニティだったそうです。(ヨークビルやベイのあたりは今ではダウンタウンの一部といったイメージですが・・・)緑に囲まれたヴィクトリア調の家や、美しい庭園のある住宅地。住宅街の外側には、イエローブリックを作るレンガ工場と、ブルーア氏が経営するビール工場と、The Severn Breweryのビール工場がありました。

第二次大戦後から1960年代にかけて、ヨークビルのコミュニティは廃れてゆき、ボロボロの古い建物ばかりが残る、お金持ちには縁の無い地域と化していました。しかし、トロント大学の学生街に近いエリアは、ピッピーや芸術家たちのたまり場となり、新しいカルチャーが花開いていきます。ヨークビルにいくつかあったコーヒーハウスは、ジョニー・ミッチェルやニール・ヤングなどのフォークシンガーや、当時はアングラ作家として知られていたマーガレット・アトウッドらの拠点となっていました。また、ベトナム戦争に反対し兵役を逃れてきた「draft dodgers」と呼ばれるアメリカ人の若者たちもヨークビルに集まっていました。ヨークビルのコーヒーハウスの外では、LOVE-IN(平和を訴える若者たちが、瞑想したり歌ったりドラッグを使ったりして過ごす集会)や、詩の朗読会などが朝晩毎日のように行われていたそうです。

サンフランシスコのヘイトアシュベリーのようなところだったヨークビルが、再びがらりと姿を変えたのは70年代後半から80年代にかけて。コンドミニアムの建築ラッシュと共にいっきに商店街の高級化が進んだのがこの頃。ブティックの賃貸料が月何万ドルもするようになっていきます。現在は、ヨークビル周辺のブロア・ストリートは北米でもトップ3に入る賃貸料の高い商店街らしく、$300/square foot(約0.03坪)のところもあるそうです。


地下鉄Bay駅のちょうど上にある小さな公園(Cumberland St.沿い)は90年代の終わりにできたまだ新しいものですが、いつの間にか、ビクトリア調の建物と共にすっかりヨークビルの風景を代表するようになりました。中を歩いてみるとデザインに工夫が凝らされているのが分かります。待ち合わせ場所によく使われる大きな岩は、何億年も昔に形成されたというカナディアンシールドから掘り起こしたもので、おもわず手で触れてみたくなります(この岩の上で昼寝をしている人が必ずいますね)ハーブガーデンや、水のディスプレイも美しく、冬はクリスマスライトが加わって夜が素敵です。

ヨークビルは、夜出かけて行ってバーやクラブでゆっくりするのにもよいところです。学生、ビジネスマン、観光客、さまざまな客層が集まって、ビールやマティーニで盛り上がるヘミングウェイのような賑やかなバーもあれば、Intercontinental HotelやPark Hyattなどの ラウンジへ行けば静かでのんびりと過ごせる空間も。また、ヨークビルのカフェはたいていどこでも美味しいコーヒーやスイーツ、パニーニなどの軽食が味わえます。ヨーロッパテイストの店が多いので、北米流の「大味だけど量だけはたっぷり」なものや、砂糖の味しかしないドーナツや甘すぎるケーキに食傷気味となったときにふと立ち寄ったりすると、とても癒される感じがします。

トロントはこれから寒くなる一方で、街角散歩は暖かくなってから・・・なんていう声も聞こえそうですが、クリスマスの季節、夜のブロア−ヨークビルは本当にきれいです。寒ければすぐにどこにでも入れる通りなので、急に天気が変わってもへいきです。また、毎年2月中旬には氷の彫刻フェスティバルICEFESTが行われ、素晴らしい作品が展示されるので、ぜひ覗いてみてはどうでしょうか。2013年は2月23、24日です。(http://www.bloor-yorkville.com/icefest/


ヨークビルのお店紹介は、さまざまなガイドブックやネット上の情報ページに掲載されているのであえてここではしませんでしたが、やはり最後に二つだけ、あまりガイドブックに載っていないけれど、地元住民に人気の店を挙げておきたいと思います。

ひとつは、料理本の専門店、The Cookbook Store (850 Yonge St) 。小さな店内に、あらゆるテーマの料理本が棚にぎっしり。写真もきれいでセンスのよいレシピの本は、眺めるだけでも楽しいものです。世界各国の家庭料理、スターシェフのレシピ、パーティーフード、カナディアンフード、子供の喜ぶ料理、お菓子やパン、健康食、ハーブを使った料理、簡単で早くできるディナー特集、食材別など挙げればきりがないほど。

最近ここで見ておもしろいなと思ったのは『Eating Royally』。元イギリス王室のシェフで、後に故ダイアナ妃の専属シェフとして働いていた、Darren Mcgrady氏著。王室の普段の食事メニューや女王や王室メンバーの好物が写真入りで紹介されている本。レシピも出ていました。(もちろんここで見つけた本をAMAZONなどでも購入できます)


もうひとつは、ヘーゼルトンレーンズの中にあるスーパーマーケットWhole Foods。普段使う食材やテイクアウトフード購入以外にも、日本へのちょっとしたお土産やギフトを用意するのに便利なところです。お茶やコーヒー、ジャム類、お菓子などが豊富で高級ブランドやオーガニックブランドがたくさん揃っています。






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