トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。


新しくなったアパレル問屋街がおもしろい

The Fashion Districtファッションディストリクト

 

ハイエンドな品揃えのブティックや、洋裁、ファッション小物材料の問屋が集中する、ダウンタウンのファッションディストリクト。15年前のトロントしか知らない人が今とつぜんそこに舞い降りたら全くどこだか分からないだろうと思うぐらい、近年になって大変身を遂げた地区です。

80年代は、ティーンエージャー向けの“かわいいけれど安っぽい”流行モノを売る店や、古くからある布地屋さん、ホコリの積もった賞味期限切れ商品を並べたままのバラエティストアや、場末っぽい雰囲気のバーやコーヒーショップが目につく通りでした。現在は、トレンディなデザイナーショップ、テキスタイルの店、デニム専門店、テーラー、洋裁道具専門店、ファッション小物・輸入雑貨屋、靴屋などが60軒以上立ち並ぶクリエイティブで楽しいネイバーフッドとなりました。

 

このファッションディストリクトは、ダウンタウンのQueen St West を中心とした、Bathurst St University Aveに挟まれたエリアですが、特にSpadina Aveから西は、充実した問屋街となっており、ほとんどの店が業者以外の個人にも売ってくれます。手作りが趣味の人やファッション小物に興味のある人を連れて行ったら大喜びしそうなビーズ専門店、本格的なジュエリーメイキングの材料が揃う店も数軒あり、観光客も多く訪れます。世界中から輸入したさまざまなビーズ、ペンダントヘッド、クリスタル、チャーム、木製ビーズ、スワロフスキービーズ、チェーン、金具、製作用の道具などが売られており、以前、日本からのお客さんを連れて行ったら、多種類のビーズやエスニック風なアクセサリー材料に大興奮、数百個も買い込んでいきました。

これらの店には、子どもたちのアートプロジェクトに使えそうな材料も豊富にあります。手作りとはあまり縁のない私などでも見ているだけで楽しく、つい何か買ってしまうことも。地元では、Artonbeads http://artonbeads.net/)、The BEADERYhttp://www.thebeadery.ca/supplies.asp)、Bling Bling448 Queen St. West)などが有名です。週末一日を使ってジュエリーメイキング講座を開催しているところもあります。

 

この辺りは、1920年代ぐらいから毛皮、テキスタイル、服飾デザインのビジネスが集中していたそうです。当時はガーメントディストリクトと呼ばれ、ヨーロッパへ輸出する毛皮コートなども作られていました。50年代に入って、ユダヤ人移住者のコミュニティが現在のケンジントンマーケットを中心に栄え、Spadina Aveや更に南に下った地域にユダヤ系がテーラーや仕立て屋を次々と開業しました。個人や家族経営でこじんまりとはじめた店が繁盛すると、こんどは広いフロアの縫製工場が作られました。いま七十代、八十代ぐらいのヨーロッパ系や中国系の移民女性から「トロントに移住してきたばかりの頃、ガーメントディストリクトのユダヤ系服飾工場でお針子さんをしていたのよ」という話を聞くのも珍しくありません。

 

後に、服飾工場や毛皮・革専門店の多くが、郊外やトロント北部のほうに移ったため、問屋街とはいえ一時はすっかり寂れた感じになっていたのですが、昔ながらのレンガ造りの倉庫やビクトリア調の建物の空きスペースがたくさんあり、いつかは新しい世代のネイバーフッド開発を予感させる地区でした。

 

最近はファッション関係の店以外にも、トレンディなレストランやカフェバーが次々とオープンし、夜も昼も賑やかになりトロントを訪れる観光客にも人気のスポットとなっています。よい天気が続き、街の散策が楽しい季節、ロジャースセンターやイートンセンター方面に出かけた際には、ファッションディストリクトまで足を延ばしてみるのもいいかと思います。

 


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