トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。

第4回 コリアタウン
ハングル文字の看板の下、学生やボヘミアンが集う一角

City of Toronto BIA photo gallery よりPhotographer: Janet Kimber

マルチカルチャーなトロントのなかでも、ダウンタウンのトロント大学キャンパスを囲む地域を散策すると、数ブロックごとに違ったカルチャーに触れることができます。といっても、“移民文化”だけではなく、アカデミックコミュニティや、若者文化の発信地あり、また、ニューヨークのイーストヴィレッジやパリのモンマルトルのようないわゆるボヘミアンコミュニティなども存在します。

そんな雑多なネイバーフッドの端っこにあるのが、Bloor St. 沿い、Bathurst  St. Christie St. の間に形成される小さなコリアタウンです。韓国系ビジネスを中心とした商店街が約500メートルほど続いています。ハングル文字の看板があふれ、80年代のソウル下町を思わせる風景ですが、ここを韓国系ビジネス地区として発展させる正式な計画がはじまったのはまだつい最近、2004年のことです。Yonge St. ×Finch Ave. のほうにも、韓国人系商店街がありますが、ダウンタウンのコリアタウンの特徴といえば、大学キャンパスとその周辺で生活・活動するさまざまなコミュニティの人々が買い物や食事にやってくることでしょうか。また、韓国系商店街として盛り上がりはじめた80年代より前からこの界隈に住んでいた、中南米出身の人々の影響もまだまだ色濃く残っています。

Bloor St. を歩いていてコリアタウンにさしかかるとすぐに、レストランから焼肉のおいしそうなにおいが漂ってきます。韓国料理も焼肉だけではなく、石焼ビビンバや豚骨スープの鍋料理、麺類など、ここ20年ぐらいのうちにトロント市民の間でよく知られるようになってきました。学生たちも、寒い季節には栄養たっぷりで体の温まる、しかもたいへん安くボリュームのあるカムジャタンやチゲをめあてにコリアタウンのレストランに集まります。

コリアタウンには、また、韓方薬を中心とするハーブ専門店や、鍼灸治療院、マッサージ店、ベジタリアンご用達のスーパーマーケットや健康食品専門店も多くあります。スパダイナ方面のアネックス地区から続いて、自然志向やホリスティックライフにこだわる人々、また、菜食主義者の間で注目のショッピングエリアにもなってきています。

韓国からの移民の歴史は比較的新しく、連邦政府が各国からカテゴリーの異なる移民を積極的に受け入れはじめた1967年、多くの韓国人がカナダへ移住してきました。そして、1980年代に韓国からの移民の第二波があり、2000年前半には約5万人に達しました。カナダ国内の韓国系人口はトロントに一番集中しています。しかし、ダウンタウンのコリアタウン一帯に住んでいる韓国系は実際少ないそうで、コリアタウンはあくまでも韓国系の商業地区ということです。

コリアタウンで、韓国伝統文化に触れるよい機会は、毎年6月最初の週末に開催される、ダノフェスティバル(DANO FESTIVAL)です。「ダノ」というのは、「端午(たんご)」の韓国語読みで、旧暦55日の「端午の節句」のことです。端午のお祝いは、もともと紀元前3世紀の中国、楚で始まったとされる豊作を祈願する菖蒲の節句だそうですが、日本へ伝わると、男の子の成長を祝う「子どもの日」に変化していきました。いっぽう韓国では、年新たに始める農業が豊作であるよう祈願するお祭りとして定着し、大きな年間行事のひとつとなっています。赤や青などのカラフルな民族衣装をまとった端午の踊りや音楽、シャーマニズムの儀式が今に伝えられ、韓国の端午の祭りは、ユネスコの「人類口伝及び無形遺産傑作」に指定されています。伝統では、女性は菖蒲湯で髪を洗って清め、男性は菖蒲の根を腰につけて悪霊を追い払います。また、男性はシルムと呼ばれる相撲をしたり、女性はブランコで遊び、仮面劇などを上演して楽しむそうです。

トロントのクリスティピットで6月に行われるDANO FESTIVALでも、赤と青のきれいな民族衣装をまとった子どもたちが舞踊を披露したり、相撲ゲーム、端午に食べるヨモギもちの販売、タイコンドーなど韓国武道の演武、すごろく大会などが行われ、ユネスコ文化遺産にもなった祭事の内容を垣間見ることができます。地下鉄クリスティ駅の前にある公園クリスティピットが会場となっています。

*   *   *

さて、コリアタウンにある多くのレストランやショップから一部を選んで紹介するのはなかなか難しいのですが、トロントの日本人の間でよく話題になる店を少しだけここに挙げておきます。おいしいと言われるレストランはいずれも“こじんまりとした食堂”的なところがほとんどです。クレジットカードを受け付けないところもあるのでご注意ください。情報は20119月現在のものです。

コリアタウン名物くるみケーキ
Hodo Kwaja
656 Bloor St.W.
Tel. 416-538-1208

ホドクヮジャは、くるみ餡の入ったウォルナットケーキ。様々なメディアで紹介されていますが、もうお試しになりましたか?もみじまんじゅうをひとくちサイズにしてもう少し洋風にしたようなお菓子、アジア系のスーパーでも見かけますが、焼きたてのおいしさは格別。コリアンパンケーキというくるみの入ったパンケーキに黒砂糖とシナモンのシロップをかけたものや、あずきたっぷりのカキ氷も和風好みの甘党から好評。


豚骨スープのジャガイモ煮込み
Paldo Kangsan Korean Restaurant
694 Bloor St. W.
Tel. 416-536-7517

ここのカムジャタン(豚骨スープでじゃがいもなどを煮込んだ鍋料理)は、トロントの日本人の間でも好評。チヂミもおいしい。韓国ビールもあり。安い。地下鉄クリスティ駅から近くBloor St. 沿い北側、外の階段を上った中二階ぐらいのところにある店。

韓国冷麺
Mul Rae Bang-A
3 Christie St.
Tel. 416-534-6833

スープがおいしい。できたものをテーブルに持ってきてから、お客さんの前で麺をハサミでチョキ、チョキ。「切りますか?」と聞かれたら、やはり切ってもらわないと長すぎて食べにくいので、切ってもらいましょう。焼肉と冷麺、焼肉とチゲなどのセットメニューが人気です。

コリアタウンの老舗食堂
Korea House
666 Bloor St. West
Tel. 416-536-8666

30年代から続いているコリアタウンの老舗。石焼きビビンバ、カムジャタン、ブルゴキ、餃子・・・無難で親しみやすい味づけ。

最近の韓国家庭料理
Joons Restaurant
605 Bloor St W
Tel. 416- 538-2661

学生や近所の家族連れに人気の韓国家庭料理の店。 鶏肉とコチジャンキャベツなどの鍋に、好みで、麺、餅、チーズなどを選んで注文。  韓国焼酎(soju)のコーラ割りがカナディアン客に人気。

菜食主義、ヴィーガン専門店
Panacea Eco Shop
588 Bloor St W

ヴィーガン (Vegan) 完全菜食主義者向けの食品や日用品、服などを扱う店。ヴィーガンは乳製品、蜂蜜なども含む動物性の食品は一切摂らず、革製品など食用以外の動物の利用も避けるので、ミルクなど使わないアイスクリームやデザートなども販売している。

コリアタウンの店の一覧はこちら

http://www.koreatownbia.com/koreatown/directory/directory.html

ハングルのみで書かれた看板が多く、行ってみておいしい店を発見しても後でまた調べるのは意外と大変です。ここは!と思ったら、その場で住所や電話番号をメモしておくのがコリアタウン通になるコツのようです。

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