トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。

3回 リトルイタリー  Little Italy

リトルイタリーは、トロントダウンタウンの西側、カレッジストリート(College St.)沿い、バサーストストリート(Bathurst St.)とオシントンアヴェニュー(Ossington Ave)に挟まれたエリアです。ストリート名の表示がイタリア国旗と同じ赤白緑にペイントされているのが目印。ここもまた、暖かくなるとレストランやバーのパティオがいっせいにオープンする賑やかな通り。サッカーのW杯、ヨーロピアン杯があるときは、バーやカフェに集まって観戦するラテン系のトロントニアンたちでいっそう盛り上がります。

グレータートロントエリア(GTA)の都市圏内には、イタリア系コミュニティと呼ばれる場所が3つあります。他二ヵ所は、補習校からも近いセントクレアウェスト沿いのコルソイタリア、そしてもう一つは郊外のウッドブリッジ。この三つの中で、リトルイタリーが一番歴史の古いところですが、じつはここがイタリア系コミュニティの中心だったのはもう昔のはなし、1920年代から50年代にかけてのことです。

いまトロントニアンたちがリトルイタリーに出かける一番の理由といえば、本場のピザやパスタを求めてというよりも「友人どうしやカップルで飲みに行く」ため。トレンディーなマティーニバーやバンドの生演奏があるクラブ、ジェラートやスイーツがおいしいカフェなどが軒を連ね、週末は夜遅くまで賑やかです。リトルイタリーのレストラン事情は、老舗で評判のよいイタリアンレストランは今も健在ですが、年々多国籍になっきており、カレッジストリートを西へ行くほどポルトガル系の店が増えます(カレッジストリートの南、ダンダス一帯はポルトガルビレッジです)。

60年〜70年代ごろから、このエリアにはポルトガル人(アゾレス諸島出身が多い)が急増。近年では中国、ヴェトナム、中南米からの移住者が加わりました。ケンジントンマーケットからリトルイタリー、ポルトガルビレッジにかけての商店街や住宅地は、時代ごとの移民トレンドをよく映し出しています。

さて、地元のメディアによく取り上げられる店をいくつかご紹介します。

ギフトショップのRed Pegasus Gifts628 College St)。変わった小物やユーモアたっぷりのギフト、ちょっと気のきいた便利雑貨などが所狭しとならびます。グリーティングカードやラッピングペーパーなどもたくさんあります。Ziggys at Home794 College Street http://ziggysathome.com/)は、バスルーム雑貨、キッチングッズ、キャンドルやよい香りのエアフレッシュナー、お洒落な壁掛けメモボード、ハウス雑貨など、ショッピングモールではあまり見かけない品揃えです。

音楽好きの方には、CDショップSoundscapes572 College Street  http://www.soundscapesmusic.com/)。ワールドミュージック、ジャズ、フォーク、ガレージ、ブルース、ソウル、レゲエ、クラシック、R&B、ポップロック、エレクトロニックなどに加え、トロントのインディーズが多く揃っています。音楽好きのオーナーや店員の趣味を反映させたユニークでこだわりのあるコレクション。ウェブサイトでお勧めCDや店員たちのウンチクを読んでから行くと楽しいかもしれません。オンラインでCDを購入したり、ダウンロードすることが多くなった今、こういうタイプの店は珍しくなりました。何か新しい発見があったり、掘り出し物が見つかるかもしれません。

Balisi Shoes 668 College St. http://www.balisi.com/Store/Default.aspx)カラフルでヒップなデザインや、ジーンズやカジュアルでお洒落したいときによさそうな靴がいっぱいです。紳士靴、バッグなども。

レストランでは、老舗のCafe Diplomatico594 College St)、ピッツアが評判のIl Gato Nero(720 College St)Carpano(492 College St  http://www.carpano.ca)などのイタリアン以外に、最近話題になっているのがAcadia(50 Clinton St  http://www.acadiarestaurant.com) 。フランス系移民アカディア人の家庭料理を洗練された感じに仕上げ、和牛やシーフードなども食材に加えています。カナダの大西洋沿岸地域からアメリカのルイジアナ方面へ広がっていったアカディアンの歴史をテーマにシーフードやケイジャン料理が味わえます。

ポルトガル/ブラジル系のBBQチキン、ウィング、スペアリブの店も数件。シュラスコチキンが売り物のChurrasqueira Oliveira(898 College St)や、テキサススタイルのPhil's Original BBQ(838 College St http://philsoriginalbbq.com)のバーベキューは、テイクアウトしてビールのおつまみやディナーにするのにいいかもしれません。

数え切れないほどあるバーやクラブは、多種のカクテル、ショット、ワイン、ビール、ハードリカーを揃えています。たいていどこに入ってもスナックやドリンクにはずれはありませんが、店によっては音楽が大ヴォリュームで流れ皆のおしゃべりの声と合わさって叫ばないと会話もできないようなところもあります。奥のほうまで覗いて様子を見てから決めるか、夏はパティオ席に座ったほうが静かで気持ちがいいと思います。有名どころでは、Eat My Martini(648 College Street http://www.eatmymartini.ca)130種類のマティーニのほか、ワイン、ビールなど。トロントのベストマティーニ賞を受賞したカジュアルなバーです。PAAEEZ (569 College Street 416-537-0767)は、スタイリッシュでかなり照明を落とした店内、週末などハイセンスなお洒落をした人々やテレビドラマSATCに出てくるような女の子たちが集まります

週末など半日過ごすなら、近隣のケンジントンマーケットやチャイナタウン、トロント大学キャンパスあたりを散策したりしてから(カレッジ沿いスパダイナとバサーストの間には、コンピュータのディスカウントストアもたくさんあります)、リトルイタリー方面へ足を伸ばすのも一案です。

リトルイタリーにも毎年恒例の食がテーマのお祭り、テイスト・オブ・リトルイタリーがあり、たいてい6月中旬の週末に開催されます。BBQ、ピッツア、パニーニ、ジェラートやシシリア風アイスクリームなどの屋台が並び、夜は多くのクラブやバーでライブ演奏があります。

イタリア系カナダ人  ミニ移民史

最初にカナダに来たイタリア人は、15世紀に英国の探険隊に航海士として参加したベニス出身のジョン・カボット(ジョバンニ・カボット)です。現在のケベック州あたりへのイタリア人の移住は、わりと古くから始まっているようで、初期は英仏戦争で英国軍に加わり活躍したイタリア人たちが、土地を与えられるなどしてカナダへ移り住んだそうです。イタリア人移民の大きな波は1900 年から第一次世界大戦にかけてと、1950-1970年にありました。

第一次世界大戦前には、すでにアメリカに定住していたイタリア人の多くがカナダへ移動してきました。そして1950年代から70年にかけてはイタリア南部から、戦後の厳しい生活の中、職を求めてカナダへやって来た人が多数を占めます。50年代から70年代にトロントにやってきたイタリア人男性の多くが床屋やヘアサロン、ベイカリー、グローサリーストアなどを開き、女性は裁縫婦や服の仕立て業に就くというのが典型的でした。現在、イタリア系人口はカナダ全国で130万人。トロント大都市圏には40万人が暮らし、センサスの調べではイタリア語を母国語とする住民は20万人近くいます。

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