トロント街角めぐり ネイバーフッドホッピング  

第1回 グリークタウン Greektown on the Danforth

フリーランスライター 三藤あゆみ

トロント市内に点在するエスニックタウンやローカル色の濃い商店街を“ネイバーフッド”と呼びます。世界各国の料理が味わえ、輸入雑貨や食材があふれるエスニックタウンのほかに、アートコミュニティ、ファッションディストリクト、学生街、ゲイタウン、ビーチーズ地区など、商店街のビジネスオーナーたちのこだわりや住人のライフスタイルが反映されるネイバーフッドが30ヵ所近くあります。マルチカルチャーな都市ならでの醍醐味、週末を使ってそんな街角巡り、ネイバーフッドホッピングに出かけてみませんか。

第1回 グリークタウン Greektown on the Danforth

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ネイバーフッド ホッピング第一回は、ダウンタウンの東側にあるギリシア人街、グリークタウン・オン・ザ・ダンフォースをご紹介します。

グリークタウンには、地中海スタイルのシーフードや肉料理が美味しいギリシア料理レストランをはじめに、カフェ、バー、ベイカリーが軒を連ねます。また、ショッピングモールでは手に入らないような品揃えの専門店---靴、バッグ、水着や下着などのブティック、キッチン雑貨の店、ナチュラルヒーリンググッズ専門店などが集まっています。

地下鉄Chester駅周辺からダンフォース・アヴェニュー沿いに東へ、Donlands駅の少し手前ぐらいまでのエリアで、ここへ行くには駐車場や通りが混雑する週末などは地下鉄を利用するのが気楽ですが、車でもDon Valley Park wayからのアクセスが便利です。ダンフォースの北側に並ぶ店の裏手に沿って市営の駐車場もいくつかあります。ダンフォースの南北に広がる住宅街に車を停めてレストラン街まで5〜10分ぐらい歩くという手もあります。(駐車可能時間帯などの表示をよくご確認ください)

ギリシア人街で食べる

さて、ギリシア料理といえばスブラキ(ニンニク、ハーブ、オリーブオイル、レモンなどでマリネした肉の串焼き)にピラフとサラダ、ローストポテトの盛り合わせというのが有名ですが、グリークタウンでは、ギリシアの家庭料理や居酒屋料理、地中海風シーフード料理も味わうことができます。

居酒屋料理には、ナスやひよこ豆、チーズ、タラコ、などをスモークしたり焼いたものをすり潰してクリーム状にした数々のディップや、ブドウの葉でひき肉やご飯をくるんだ小さなロールキャベツのようなドルマディス(レモンと卵のソースをかけたものがお勧め)、蛸やイカのマリネやフライ、ミートボール、ホルタ(タンポポの葉またはホウレン草などを茹で、オリーブオイルとレモン、ニンニクで味付けしたもの)、マリネした小鰯などがあります。数年前『とりりあむ』の私とっておきの店コーナーに掲載したことのあるOUZERIというレストランについての記事で、これらの料理をいくつか紹介していますのでそちらも参考にしてください。http://www.torontoshokokai.org/trillium/200701/-omise_0701.html 居酒屋料理を味わえるレストランはこの他にもありますが、Messinihttp://www.messini.ca/

Mezeshttp://www.mezes.ca/)、Pantheonhttp://www.pantheonrestaurant.com/)などが有名で、味のほうも定評があります。

ギリシア本国のアテネなどで朝食や夜食に人気の軽食といえば、ほうれん草のパイ(スパナコピタ)やチーズパイ(ティロピタ)、ミートパイなどにコーヒーの組合せです。本場の味に一番近いと評判なのが、Athens Pastries509 Danforth Ave)。この店のパイは中身はしっとり、薄い生地が何層にもなった外側はパリッとした食感で、レストランで出されるものよりずっと美味しく仕上がっていると思います。また、中東やギリシアでよく使われる円形で平らなピタブレッドでスヴラキをくるんだサンドイッチやギロス(Gyros)サンドイッチも本場の味を体験できます。ピタサンドイッチには、肉、トマト、レタス、玉ねぎ、ヅァツィキ(刻んだキュウリとヨーグルトやサワークリームにガーリックを混ぜたソース)を一緒に挟むことが多いのですが、そこにカリッと揚がったフレンチフライを数本入れて食べるのがギリシア流。テイクアウトの店もいくつかありますが、レストランの中ではMessiniのピタサンドイッチが高得点です。

「食」のお祭り テイスト・オブ・ザ・ダンフォース

グリークタウンが一番にぎわうのは、毎年8月に開催されるテイスト・オブ・ザ・ダンフォースのお祭りです。ダンフォース・アヴェニューは車両通行止めとなり、道の両脇に屋台やレストランからの出店が所狭しと立ち並びます。道の真ん中には日本のビヤガーデンのようなものが登場し、数箇所に設置されたステージでギリシアの伝統ダンスやベリーダンス、音楽の演奏、トロントの地元アーティストや歌手によるパフォーマンスが行われます。年々盛大になるこのイベント、3日間で100万人以上といわれるすごい人出となります。平常時にレストランに行ったほうが落ち着いておいしいものが食べられるような気もしますが、真夏のお祭気分を味わい、トロントのマルチカルチャーな老若男女のピープルウォッチングをするには絶好のチャンス。カメラ持参で行けばおもしろい被写体に出会えること間違いなしです。

ダンフォース・アヴェニューとギリシア系カナダ人

グリークタウンが広がるダンフォース・アヴェニューは、18世紀の終わりというわりと早い時期に開発が始まり、クィーンストリートやキングストンロード、ブロードビューアヴェニューなどを結ぶ主要ルートとなっていきました。この通りの名前は、最初に建設を手がけたニューヨーク出身のアサ・ダンフォース氏の名前に由来しているそうです。ギリシア系がダンフォース界隈に住みはじめ、ビジネスを始めたのは1910年ごろから。70年代後半には北米で最大のギリシア人街が形成されます。

ギリシアからカナダへの移民は19世紀初め頃から始まります。当初はクレタ島やシロス島などエーゲ海の一部の島やスパルタで有名なペロポソス半島の貧しい村から職を求めて渡ってきた数十名のグループでした。そして第二次世界大戦後、ギリシア系人口はいっきに増加、2006年の国勢調査では24万人を超えています。現在は、約20万人がトロント都市圏(GTA)に住んでいるそうです。

ダンフォースのギリシア人街は、1981年以来トロント市のビジネス・インプルーヴメント・エリアに加わり、代々続くファミリービジネスや、若い世代が経営する小規模ながら個性ある飲食店や専門店が協力して少しづつビジネスを活性化させてきました。とはいっても80年代初めは、ギリシア正教の教会、ギリシア人が人生で一番お金を使うイベントとされる結婚式関連のブティックや店、味は良くてもなんとなく垢抜けないレストランと食料品店が目立つリトルアテネと呼ばれる商店街でした。しかし、90年代に入るとスタイリッシュな店が急増し、一帯は"Greektown on the Danforth"と正式に名づけられます。レストランもギリシア料理だけでなく、タイ、日本、インド、イタリア、ブラジル、メキシコ料理などバラエティに富むようになりました。今では観光客や地元のヤッピーが「美味しいもの」を求めて集まる主要ネイバーフッドのひとつに成長し、ますます盛り上がってきています。

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