オンタリオで活躍する日本人に聞く


yukasan

動物セラピスト
是枝由香さん


是枝由香さんは、近年カナダで注目を浴びはじめた「動物を癒すセラピスト」として、トロント首都圏の西端に近いオークビル(Oakville)を拠点に活動しています。
中学生のころ家族と一緒にカナダへ移住。多感な年頃に自からの意思や冒険心からではなく、別の文化圏へ移り住むのは決して簡単なことではありません。やは り引越してきた当時は現地の学校に馴染み言葉の壁を克服するのに苦労したそうですが、「今ではカナダがホーム」という由香さん、仕事もプライベートも自分 の好きなことを追求し続け、それを通じてバイカルチャー、バイリンガルの強みを生かしています。今回は、どんな方法でペットたちを癒すのか、どんなお客さ んがいるかなど興味深いお話を伺いました。(聞き手:三藤あゆみ)


動物を癒すというのは、具体的にどんなことをするのでしょうか?
ホリスティック療法や予防医療で動物を癒す仕事で、私は主に犬のマッサージ、それからペットのためのレイキやアロマセラピーが専門です。レイキとアロマセラピーのほうは人間のお客さんもいます。

「レイキ」は聞いたことがあっても馴染みのない方がまだ多いと思いますが、日本発祥のエネルギーセラピー、リラクゼーション法です。世界中に広まり、トロ ントの病院の一部や、有名なところではアメリカのイエール大学がんセンターやボストンのBrigham and Women's Hospitalで健康法、補完医療として取り入れられています。

「気」の療法は人間だけでなく、犬や他の動物たちをリラックスさせたり癒すのにも効果があるんです。

アロマセラピーについては、精油をペットに使うと危険だとか人が使う場合でも猫を飼っていたら注意しないといけない等の話も聞きますが。
catア ロマセラピーといえば単に香りを楽しむというイメージの人も多いかもしれませんが、エッセンシャルオイルつまり精油は、作用が強いので療法として使うなら 専門に勉強しておく必要があります。純度の高い良い精油を正しく使えば、アレルギーに効果があったり、ホルモンバランスを整えるとか、原因によりますが痛 みの軽減や不安症などにも効果があります。

動物に使う場合は、キャリアオイルと呼ばれるココナッツオイルやオリーブオイルなどの植物油でかなり薄めて使います。人間の子どもや赤ちゃんにも使える精油を、動物の種類や体の大きさ、年齢、体調に合わせて調合するんです。

動物の場合、どうやって精油を使用するんですか?
室内でディフューザーを使います。アロマを焚いた空気を吸い込むと、だいたい0.2秒で香り分子が鼻を通って脳に届き、脳内に変化が起きるとされていま す。純度が高くて良質な精油を選んで、症状や目的によって肌に直接塗ったり水や食べものに混ぜることもあります。市販のものでエッセンシャルオイル 100%と書いてあっても、質の悪い物もあるので注意してオイルを選びます。

ペットを癒すセラピストになろうと思ったきっかけは何ですか。
小さい頃から色々な動物を飼っていてもともと大好きなんですが、自然療法やホリスティックヒーリングに最初に興味をもったのは、最初は自分のためでした。大学時代に線維筋痛症になり、それ以来何年も痛みや眠れないなど辛い症状があったんです。

健康のためピラティスやヨガやダンスなどをしていましたが、友達に勧められたアロマセラピーや、レイキなど「氣を整える」というようなことをやっていくう ちに痛みが楽になり、睡眠障害などいろいろな症状が楽になりました。それまでは、痛みのために4、5種類の薬を飲み続けていたんですが、薬が必要なくなっ たんです。

三藤さんの開いていたレイキ・気功講座に参加したんですよね。それは人間向けでしたけど、動物にも効くというので自分のペットにしてみたらとても気持ちよさそうにしているんです。それで動物を癒すことにも興味を持ち勉強をしはじめました。

もともとは音楽が専門で、ウェストン大学のピアノ科を卒業してから長年ピアノ教師をしてたんです。その傍らヒーリングや健康法のコースをとって勉強をした り、施術したりしていました。ペットを癒すセラピストとして起業したのは約5年前です。結婚して二人目の子どもが生まれた時にピアノ教室はお休みしてその 間に始めました。

犬のマッサージやアニマルレイキはどこで勉強しましたか。
dog指 圧を含めたドッグマッサージを学べるプログラムはアメリカ、カナダ、いろんなところにあるんですが、テキサス州にある「Holistic Touch Therapy School of Canine Massage and Acupressure」とフロリダ州のDr. Angelique Barbaraの「Canine Myo-manipulative Functional Therapy」というプログラムを勉強しました。
 
レイキは「アニマルレイキ」というコースを取りました。やはり動物へのレイキもフロリダに有名な先生がいて、そこで勉強してオンタリオの田舎で開業してい るMichelle Kyle先生のプログラムで資格を取りました。講義を受けて、練習し、実習ではいろいろ違う種類の動物を手当しました。

カナダ全般やトロントではドッグマッサージやペットを癒すホリスティックヒーリングの普及具合はどうですか? 日本だと、「ペットを癒す」「動物のためのセラピー」などをネット検索すると、動物が人間を癒す「動物セラピー」ばかり出てきますね。
アメリカやヨーロッパはかなり進んでいて、地域によりますが普及しています。カナダは、特にトロント周辺で言えるのは、今注目され広まりはじめているとこ ろです。ここでは日本と比べれば人気はありますが、欧米のように資格が政府の管轄下にあったり、特別なペット保険を購入して使えるというのはまだまだこれ からです。

是枝さんのところにはどんなお客さんが多いですか?どんな飼い主さんでどんな種類の動物が来ますか。
犬が一番多いですが、猫、うさぎ、フェレットなどの小動物も。ダイビングやフライボール(flyball) など犬にスポーツをさせている飼主さんはホリスティックケアに興味のある人が多いです。それから職業犬など。

トレーニングした後に筋肉をほぐしたり、マッサージやカイロプラクティックで体を整えたり、アロマにも興味を持ってくれます。犬のスポーツ施設からの紹介で来てくれることは多いですし、飼主さんどうしで情報交換しているそうです。

最近はホリスティックヒーリングを取り入れる獣医さんも増えつつあって、獣医からアドバイスされたり情報をもらってくるお客さんもいます。

犬や猫も人間と同じように、年をとれば関節炎が多くなり、痛みも出てきます。なのでお客さんには「シニアのワンちゃん」、老犬が多いです。それから、シェルターから迎えたペットで、過去の経験やストレスで人間を怖がる動物たちもいます。

動物へはどういう場所で、どのように施術するんですか。
できる限り普段から慣れた環境で、動物が安心できる場所でするのが効果的なので、飼い主さん宅へお邪魔して施術します。部屋の床に一緒に座ったり、家の外でする場合もあります。アロマセラピーは室内です。馬や牛など大きい動物は普段いる小屋の中で。

ドッグマッサージをするときは、まず「ゲイトアナリシス」といって、歩き方や動きを観察してアセスメントをしてからマッサージや指圧をします。年齢や状態 に合わせて、やさしくスイスマッサージをする場合もあれば、指圧や筋膜リリースも行います。ストレッチ等もするんですよ。

レイキは直接触れなくても近くで気を送ると動物のほうから寄ってきて、1時間ぐらいじっとして受けてくれる場合もあります。猫だと最初は隠れたり、15分ぐらいしかさせてくれないときもありますが、動物の気持ちを尊重して自由にさせておきます。

仕事をしていて嬉しかったこと困ったこと驚いたことなど、印象に残る経験があれば聞かせてください。

interview年を取ったジャーマンシェパードで関節炎のお客さんがいました。その犬はずっと飼主さんと二階のベッドルームで一緒に寝ていたそうなんですが、とうとう階段も上ることができなくなってしまい飼主さんは悩んでいました。

マッサージとレイキ療法を4週間続けるとずいぶん良くなって、階段を二階まで上がれるようになったんです。そしてベッドの上にジャンプして乗れるようにまでなりました。元気な姿の写真を飼主さんが送ってきてくださって、とても嬉しかったです。

もう一つは、ハナちゃんという11歳のうさぎがいまして飼主さんが8年前にシェルターからもらってきたそうでとても大切に育て、家の一部屋をまるまるハナちゃんにあげているぐらいなんです。

でも過去のトラウマからか、怖がりで飼主さんが部屋へ入ると噛みついたり、攻撃してきてあまり近づけない。本当はだっこしたりもっと触れ合いたいのに8年間もずっとそのまま。でもちゃんと世話をしてたんですね。

アニマル レイキを試してみることになり、まずドアの外からしばらく気を送ってから部屋へ入りました。ドアの外の気配を感じていたと思います。ドアを開けるとハナ ちゃんが近づいてきて、私の手に鼻先を近づけてにおいをかぎました。攻撃することもなく、落ち着いた感じで奥へ戻って行きました。初回はそれだけです。

二回目は 40分間、気を送るセッションをしました。たいへん落ち着いてきてリラックスしたようです。それ以来、行動ががらりと変わり、飼主さんにだっこされたり撫 ぜさせてくれたりするようになりました。8年間ずっとダメだったのに。これはとても嬉しかった、忘れられない体験です。

さすがにそれはできない…というような依頼はありましたか。
「犬が噛みつくのを気で治せる?」というのですね (笑)。その場で落ち着かせることができたとしても、犬の場合はきちんとしたトレーニング、学習が必要です。

ちょっと変わったお客さんはありますか?
水槽で飼 われている魚。数匹一緒に入れて飼っているのが、一匹だけいつも暴れたり激しく泳いで困る、何とかできないかという依頼でした。レイキをしてみると、水槽 に手を当てたら、その暴れる魚だけがさっと手のところに寄ってきて、リラックスした感じでそこへ留まっていました。

それだけなんですが、飼主さんの話では、以来暴れて激しく泳ぐことがないんだそうです。気を送ると静かになる動物や鳥は多いです。ニワトリ小屋に近づいたら怒って騒ぐニワトリも、気を送り続けると静かになっていつのまにか目を閉じて寝てしまったこともありました。

面 白いですね。動物も人間も同じような反応をするんですね。是枝さんは、中学生の頃ご家族と一緒にカナダへ引越してきて、はじめのうちは英語を学ぶのも苦労 したとのことですが、今では日本語も英語もハイレベルを維持して素晴らしいです。今の仕事をするにあたって日本人のバックグラウンドがどのように影響して いますか。
たしかに移住してきた頃はたいへんでしたね(笑)。もう今ではカナダの方がホームというか安心して暮らせる場所になりましたけど、もちろん自分はやはり日本人だなと思うときもあります。

仕事で は、日本発祥の療法や、「気」のコンセプトや呼吸法、それから禅的な落ち着きなどは、子どもの頃やったお習字とか日本文化とつながっていて、自分のルーツ に帰るような、やっていて自分らしい感じがします。人間も自然の一部として自然や動物と関わるとか、禅的なコンセプトはカナダ人も興味を持ち、ポジティブ に受け入れられていると感じます。

今後の展望をお聞かせください。
今はまだ新型コロナで制限が多いですが、落ち着いたら、施術するだけでなく飼主さんにテクニックや健康法を教えるワークショップを開いて広める活動もしていきたいです。家庭で精油を安全に使う方法や、簡単なマッサージやレイキ講座を企画しています。

ペットも 家族の一員、人間と同じように、医療の恩恵を受けながらホリスティックな予防ケアもしていくということを普及させたいですね。老犬になって関節炎になって から獣医さんに通うだけではなく、若いうちから適度な運動をしてマッサージなどで整え健康を保つというようなことです。

質問やお問い合わなどあれば、ウェブサイトからお気軽に連絡ください。日本人、日系人のみなさんとも繋がれることを楽しみにしています。よろしくお願いします。

ペットの家族化が進み、最近は特にコロナ禍で家にいる時間が多くなり動物を飼う人が増えたこともあり、ペットのための予防医療や癒しはこれからさらに注目されそうですね。今日はありがとうございました。

<情報>
Oakville Reiki
Yuka Koreeda
ウェブサイト:www.oakvillereiki.com

インスタグラムやFacebookでも情報発信しています。
@oakvilleanimalreiki






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