「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第
215回>


Asahi Refining Canada Ltd.
President安田 昌平 

yasuda san
今回はアサヒリファイニングカナダの安田社長にお話を伺いました。鉱山由来の原料を99.99-99.5%の純金、純銀に精錬し「お客様にお返しする」という通常とは異なるビジネスモデルはとても興味深く、所々例を交えて分かり易くご説明いただきました。
ロジック、フェアネス、リーズナブルネスを大事にされ、多様な業種で様々なご経験を積まれた安田社長のご経歴や、マイアミでの買収事業のお話も必読です。安田社長は2020年3月にカナダへ着任されました。
(聞き手:酒井智子)

-御社の事業内容についてお聞かせ下さい。
弊社アサヒ ホールディングスのグループ事業のうち、日本国内のメインは、アサヒプリテック社が行うリサイクルによる貴金属精錬であり、業界では「セカンダリー」の精 錬(リファイナリー)と呼ばれることがありますが、私共北米の主な事業は、自然の鉱山の鉱石由来の原料から貴金属を精製しております。

鉱石を採掘す るのは鉱山会社ですが、輸送・精錬しやすい純度と大きさに加工して送ってきたものを、私共が99.99-99.5%のいわゆる純金、純銀に精錬し「お客様 にお返しする」というのがメインの事業です。金の原料を買いそれを「加工して売る」というよりは、原料を扱い「きれいにしてお返し」してその手数料をいた だくというようなイメージですね。これを、先程申しあげた日本のリサイクルの「セカンダリー」に対して、「プライマリー」の精錬事業といっております。

弊社のお客様は世界各地におり、カナダでいいますと、トロントにある世界最大級のバリックゴールドという会社は有名ですね。また金の産出国ランキングとしては、現在トップは中国ですが、弊社の主取引先としては米国、カナダ、ペルーなどが上位に入っています。

こちらの鉱山系の精錬事業は、2015年3月に、当地ブランプトンと米国ユタ州のソルトレイクシティにあった2拠点を私共の買収により獲得した事業です。

ソルトレイク の拠点は国が違うこともあり別会社となっておりますが、経営上はバーチャルで一社の会社とみなし、私は社長を兼任しております。規模的にもブランプトンと 概ね同じくらいですので、お客様のロケーションや、その時の需給状態に応じて最適配分をして処理をしております。

弊社は国営企業を除いたプライベート企業として、世界5大リファイナリーの一つと言われております。北米には一つしかありませんので、北米最大の精錬事業者になります。

-先程、写真を数点送っていただきましたが、精錬後あのようなかたちになるのですね。

gold
silver

そうですね。3種類あったかと思いますが一番大きいのものがいわゆる汎用品でして、お客様からお預かりした原料を、あのような形にしてロンドンの市場でお渡しするというのが基本的なビジネスモデルです。

-御社の強みについてお聞かせ下さい。
大きく分けると二つあり、一つは分析に代表される技術力とそれに基づく信頼です。これは買収以前からの強みでございます。具体的に説明しますと、まずお客 様から原料を受け取ったら、その一部を溶かし組成を調べます。例えば100g中に金が35g銀が45.89gと測定したら、その割合いを受け取った全量に 掛けて計算し、精製した純金・純銀相当量の決定をします。

それに基づいて多くは約一週間後に、何億、何十億円相当の決済を行うので、分析の誤差で物凄く金額がぶれるのです。その正確性というのが弊社の事業性にも 影響しますし、お客様との基本的な信頼がないと成り立ちません。そういった中で、分析力に代表される厳密な技術力と信頼ということは弊社の強みですね。

もう一つは、これは新経営になってからの強みと言えますが、日本の親会社をバックにした大きな資金調達力です。弊社親会社は今では東証一部にも上場してお り、時価総額千数百億円という会社となっております。北米では当地を拠点にファイナンスを行っていますが、いわゆるメガ銀行様含め、この規模の製造業とし ては結構大きな額をお貸しいただいていることと思います。

なぜ、沢山のお金が動くのか?ということですが、一週間程度という納期があるとすると、この時間内に出来ようが出来まいが、金をお返ししなければなりませ ん。普通のメーカーさんですと、物ができないと遅延・欠品ということになると思いますが、金というのは独特な面があり、出来なくても「借りて返す」または 「買って返す」ということが、一定の純度と一定の規格に達していれば可能なんです。

工程で問題があり期限内に出来ない場合でも、借りるまたは買って返すということが必要となってきます。あくまでお預かりしているものですので、売り上げの 計上はしませんが、貴金属は非常に高価なものですので弊社が年間で処理する量として、ブランプトンだけでも金だけで一兆円またはそれ以上となります。ソル トレイクも合わせますと、倍となります。

そのくらいの原料を扱い、一部のお客様には実質的に先払いをしたりしますので、莫大なお金が必要となるわけです。これを弊社の親会社も含めた資金調達力でまかない、また顧客ニーズにも応えているというのが、新経営になってからの一つの大きな強みですね。

-通常のビジネスモデルとは全然違い、とても興味深いです。先程だいたい一週間でお返しするとおっしゃっていましたが、こちらは契約ということですか。
そうですね、こちらは契約での一般的な期間です。クリーニング屋さんに洋服を預けて、1週間後に取りに来てください、受け渡しはロンドン市場で、というよ うな感じでしょうか。クリーニング屋さんと一番大きく違うのは、出来ていなくてもどこかで同じものを調達して「必ず返さなければいけない」ということで す。

一 方で、「今欲しいから今くれ」というお客様も結構いらっしゃるんですね。そうすると当然「今預かって今作る」という事は不可能ですので、必ず資金を当社が 借りて、とりあえず物を調達してお客様には代わりの金をあげ、その間に預かっているものを工場内でせっせせっせと精錬し、借りた金またはお金を返すといっ たようなことをやっております。

-説明がとても分かりやすく理解できました。聞けば聞くほど深いですね。では、今後注力していきたいことは何でしょうか。
金の産出量や精錬事業者の数は、良い意味でも悪い意味でも適温状態です。今後、弊社が大きくシェアを奪回するということは、別の買収でもない限りはあまり 期待できません。かつ、本業は結構薄利の商売で、例えば一万円分金を処理すると手数料はせいぜい2円、3円など0.1%にもなりません。よって、今後の飛 躍的な成長を目指すうえでは、上流や下流の事業も含めいかに幅だしを行うか、ということを経営重点課題として取り組んでいます。

-それではここで安田社長ご自身についてですが、ご出身、ご経歴をお聞かせください。
出身は鳥取県米子市です。東京の大学を卒業後就職した会社は現在豊田通商様に吸収され名前は残っておりませんが、トーメンという総合商社に入社しました。 今となっては風力発電や再生可能エネルギーといえば皆さんご存知かと思いますが、当時1990年代というのは、まだ風力発電というものが大きく世の中に出 ておらず、トーメンは80年代にアメリカ、90年代にはヨーロッパで世界に先駆けて風力発電を開発していました。

私が駐在したイタリアや英国、その他スペインなどでも当時その国最初の大型風力発電所を次々に設置したような会社でした。私はそこで風力発電事業を中心にした海外発電事業の開発運営・売買・ファイナンスに携わっておりました。

トーメン自体の再編もあり、その過程で風力発電事業が分社化、私も転籍したのが2003年ですね。ユーラスエナジーという会社で、それからしばらくは再生 エネルギー事業専業状態でしたが、2014年に違う事をやりたいと一新しまして、当時の日立化成へM&Aの主担当ということで転職しました。

その間、M&Aの事業売買と買収先の事業統合等を行っており、最後はタイの買収した会社のマネジメントを行っておりましたが、現在のアサヒに 2019年1月に転職しました。計4社で海外駐在はロンドン2回、ミラノ、バンコクと、昨年までのマイアミに続き現在のトロント近郊です。

私がアサヒに入社した直後の2019年2月には、現在のアサヒリファイニングフロリダ社の買収・立ち上げで米国マイアミに副社長としてきておりました。5 月には、当時のカナダ・ユタ州両社ローカル社長退社に伴い現職の社長を命ぜられ、その後、最初にいたマイアミとブランプトン、ソルトレイクシティの3拠点 を1週間とあけずぐるぐると10ヶ月間動き周りながら事業統合や再編検討などを行っていました。

最初に赴任したマイアミの再編がひと段落ついた2020年の3月に北米の本社機能があるブランプトンで腰を据えて経営に専念するということでカナダへ異動 しました。その後も何もなければ3拠点を周っていたかと思いますが、直後にロックダウンとなり、逆に一歩も動けないといった状況になってしまいました。

-多様な業種で様々なご経験をされているんですね。
そうですね。 前職の日立化成ではタイの買収した拠点へ行きましたが、そこは自動車のバッテリーを作っている会社で、現地で上場もしており従業員も1300名くらいいま した。そこでもタイ現地の旧オーナー経営陣がEXITをしたところに新たな経営を落とし込むということで乗り込んでいき約1年半、財務・管理責任者をやっ ておりました。

-そうなんですね。様々なご経験の中で、一番印象的だったお仕事についてお聞かせ下さい。
私の今までのキャリアを通じた主な業務が、会社や発電所の売買やファイナンスがメインでした。M&Aや事業の売買というのは修羅場に溢れていますので、思い出に残っていることは数え切れません。

アサヒに入社してからということで申し上げますと、2019年私が入社してすぐに携わったマイアミの買収ですね。米国に残る最後の弊社コンペティターが破綻し、米国独特のチャプター11という法律のもと、競売にだされました。

なかなか特殊 な形態で、日本の会社ですと手が出しにくい仕組みとなっておりますが、そのような中、破綻して残された事業所とアセットを買い、100名の従業員の採用面 接から始め、事業の立ち上げ・再編を、今でも同地社長として駐在している技術系駐在員と二人三脚でリードしていました。マイアミの同社は、今では写真右側 のコイン・小型バーの製造を主事業にしています。

私が入社したのは2019年1月ですが、2、3週間の研修後、すぐにマイアミに行ってくれと言われ、いきなりやったのがこの案件でした。買収手続も完了し、同年3月にマイアミの綺麗な青空のもと、開所式を行ったことを鮮明に覚えています。

-安田社長がお仕事を進める上で大事にされていることは何ですか。
個別の事業の 経験値があまりないなか組織を率いていくうえで、基本的なコミュニケーションの軸というのを大事にしております。ロジック、フェアネス、リーズナブルネス という3つを軸にして現場の皆さん、経営幹部の皆さんとコミュニケーションを密にしていくということを心がけております。これを自分のぶれない軸として 持っていれば、どこの国のどういう業界へいってもなんとかやっていけるかな、と自分の中で感じております。

-プライベートについても少しお聞きしたいのですが、スポーツ等はされますか
今はウォーキングなど最低限の身体を動かすということはしておりますが、どちらかというと食事に気を遣う方が健康上大事かと思っていますので、あまり運動はしていません。昔はヨーロッパのサッカーは熱狂的に応援してましたが、最近はあまり観戦していませんね。

-趣味についてお聞かせ下さい。
妻と一緒に旅 行と美味しいものを食べることですね。これも昨今のコロナで制限があるので、現状できないのが残念です。旅行先の美術館で絵画をみたり、オペラを鑑賞した りなど、特に欧州にいたときは、大きな楽しみでしたね。一番好きな場所はイタリアですね。ローマやフィレンツェなど有名な観光地も魅力的ですが、どこに 行っても美しく、それぞれの表情が出ているので飽きないですね。

-プライベートな写真もいくつか頂きました。奥様とても素敵な方ですね。もう1枚、犬を連れた写真がありますね。
yasudafamily私 ども子供がおりませんので、犬を子供のように可愛がっております。タイに行った時は一緒に連れていきました。フレンチブルドックという犬種で、非常に呼吸 器系が弱く、ほとんどの航空会社が輸送を受け付けませんが、タイ行きでは一社だけ引き受けてくれる航空会社がありました。

今回はマイアミということで航空会社もありませんし、必ず乗り継ぎもあるので、連れてこられませんでした。今は妻の妹に預かってもらっています。私も妻も溺愛しており、昨年5月に一時帰国して会う事を楽しみにしていましたが、コロナのため帰国ができませんでした。

dog
今 は日本から送ってくる写真をみたり、グッズを買ったりと会えるのを心待ちにしています。犬は年をとるのが早いですので、1年会えないと大きな成長を見られ ず心残りはありますが、事態が回復することを祈って、無理なく帰国できるようになったら妻に犬を会わせるというのが今の願いですね


-今後、カナダ駐在中に挑戦したいことはありますか。
ミーハーですが、オーロラやカナダ独特の自然を観に行きたいですね。また、比較的近いNYや米国の東海岸の美術館なんかへも足を運びたいです。ヨーロッパ駐在中に、ヨーロッパの主なものは概ね見ましたので、北米の美術館へもこの機会に行きたいと思っております。

-最後になりますが、商工会会員の皆様へメッセージをお願いします。
赴 任後早々にコロナのシャットダウンで、皆様にお会いする機会がなくて本当に残念です。すっと続くことはないだろうと言われながらもなかなか先が見えないの で、皆様大変かと思いますが、回復次第できるだけ皆様にお会いして交流を深めていきたいと思っております。1月には新たに2名の駐在員が着任いたしました ので、今後ともよろしくお願いいたします。
-本日はお忙しい中お時間をいただきまして、ありがとうございます。これでインタビューを終わります。







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