リレー随筆


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コロナ禍の育児と在宅勤務

東京海上日動火災保険カナダ支店 松田 亜未


リレー随筆を執筆する機会と共に、育児を伴う在宅勤務について、とテーマのリクエストを頂きました。子供の年齢や性格などを含めご家庭ごとに状況は異なると思いますが、パンデミックの一面として、少し書かせていただこうと思います。

3月11日のWHOによるパンデミック宣言の後、多くの会社で可能な限りの在宅勤務の指示が出されました。カナダの学校ではその翌週March break(春休み)の一週間の延長が発表されましたが、その後も学校閉鎖は延長を繰り返し、6月末の学期終了を迎えました。

COVID-19の感染拡大防止に努めながら、24時間子供が家にいる状況下では、共働きでない家庭も家族間の協力が必須です。育児を伴う在宅勤務の家庭では、例えば以下のような様々な策が講じられたことと思います。

- 就業時間の一部を子供の世話に当て、その分を子供の就寝後に行う。
- 共働きの場合、それぞれの仕事の時間をシフト制に調整する(片方が早朝から昼過ぎ、もう一方が昼過ぎから夜働く、等)。
- 子供の睡眠時間を調整する(子供を夜遅く寝かせ朝遅く起こすことで、早朝に仕事に集中できるようにする、等)。

こうした対応は所属する会社や組織の理解が不可欠であり、多くの会社で、就業時間の柔軟な変更、フレックスタイムの拡大、希望者への時短勤務やTemporary laid-offの導入などが行われました。

上司・部下や同僚間で、子供がいる社員にはビデオ会議の頻度や仕事の指示を控えてしまう、といった目に見えない配慮もあったかもしれません。社内外に迷惑をかけているという心苦しさを感じる人も多かったと思いますが、同時に「子供のいない従業員の4分の1が、子供のいる従業員と比べ不平等を感じている」という調査結果があったことも、見逃してはいけない事実です。

パ ンデミックが始まった当時、息子が2歳、娘が5歳だった我が家の実状をお話しま すと、通常の就業時間に仕事をしながら、娘のオンライン授業や宿題に対応し、15分に一回は来る子供たちからの遊びの誘いや工作の手伝いなどをできる範囲 でこなしつつ、ランチと2回のおやつの準備・片付けをするという、15分間集中することもままならないような状況でした。

私 は職場から理解ある声がけや配慮を頂き、また夫もフレキシブルな在宅勤務のため 早朝からお昼過ぎまでというスケジュールで勤務してくれていたので、午後はある程度仕事に集中することができました。そのような協力者がいない状況の人の 負担は計り知れません。また子供が就学前のため、教育機会の不足についてはあまり気にする必要がなかった点も、就学児を持つ家庭に比べ負担は軽かったと思 います。

子 供たちはこの生活に慣れるに従って、少しずつ2人だけで遊んでくれる時間が増え ましたが、いつの間にかiPadや携帯電話のパスワードを覚えてYoutubeを見ていたり、お菓子の入っている棚の開け方を覚えて勝手に食べていたり、 気づいたらスクリーンタイムの終了時間を1時間も過ぎていた、なんてこともありました。

それに後悔し厳しくするも、夫と同じ時間にビデオ会議などで手が離せない時は、静かにしてもらうために「携帯で遊んでいいよ」、「チョコレート食べていいよ」と言うこともしばしば。子供たちの中でも、矛盾が生じていたかもしれません。

息 子はある時から「You don’t play with me. I don’t want you to work any more」と毎日のように言うようになりました。同じ頃、日中の息子の相手として5歳の娘に頼りすぎてしまったのか、娘のほうは「Too much ○○君」と息子といる時間が長すぎると涙ながらに訴えてきました。

仕 事に100%で向き合えていない、それなのに子供にも十分な時間を費やせていな い、そして一人になれる時間もほとんど取れない。私自身もう少しマルチタスクをこなせると思っていたのにできないことが不甲斐なく、何もかもが不十分で余 裕がなく、家族全員がストレスを抱えている状態でした。child

た だ、当初はフルアテンションが必要だった2 歳の息子は、言葉が発達して意思疎通が取れるようになり、一人遊びができる時間が延びたり、トイレに一人で行けるようになったりと、頼もしく成長してくれ ました。娘も、アプリを使って友達や祖父母とオンラインでお絵かきや読書をしたり、日本の家族とおしゃべりをしたり、Youtubeを見ながら新しい工作 や科学実験を試したり、文明の利器のお陰で色々な遊びや学びを得ました。親にとっても、この期間が、子供の成長を側で見られる貴重な時間であったことは間 違い有りません。

日が延びてくると夕方以降も外遊びができるようになり、公園のプレイエリアが開放されるなどの緩和措置が進んだことで、子供も親も心身共に安定し始めました。9月中旬に学校が再開し、娘も息子もフルタイムで通園・通学をし始めたことで、負担はかなり軽減されました。

し かし、Toronto Public Healthの指示の下、登校前の毎日のスクリーニングは欠かさず、症状が一つでも出たら休み、症状次第では再登園・登校のためにPCR検査を受けて陰性 を確認しなければなりません。免疫の完成していない低年齢の子供は秋口に体調を崩しやすいため、我が家の子供たちは2人とも最初の2ヵ月間で3回ずつ検査 を受けました。結果はすべて陰性でした。10月には、娘のクラスで陽性者が出たためにクラス閉鎖し、濃厚接触者の娘は10日間(最終接触から14日間)の 自主隔離となりました。

娘が濃厚接触者になったこと、そして陽性者が接触者やコミュニティに与える影響を当事者として体験したことは、通 学のリスクを再確認し不安を増大させまし た。オンライン授業の検討もしましたが、パンデミック前に時折「学校に行きたくない、家で遊んでいたい」と言っていた娘は、今では1日でも休むと「学校に 行きたい」と言い、息子もデイケアで友達ができたことが嬉しいようで、毎日帰宅すると友達の話をしてくれます。

私達は環境が許す限り、家族全員の心身の安定を選択し、フルタイムで通園・通学させることにしました。ただ、各家庭の事情や考え方に応じて、通学、オンライン、ホームスクーリングなど、学習方法を選択できる行政と教育現場の対応は大変有り難いものです。

今 年は学校のコンサートやファンフェアなども含め様々なイベントが中止となり、屋内の遊び場は閉鎖され、友達を呼んで誕生日パーティーもできず、子供たち にとっては今まであった楽しみが少なくなってしまった年だったと思います。それでも子供たちは、我儘を言ったり悲観することは決してなく、子供なりにウイ ルスのことを理解し、感染防止に努め、限られた中で新たな楽しみを見つけています。人は状況に適応し、そこから好奇心や想像力を生み出し、成長ができるこ とを、子供たちが体現しています。

カナダの多くの地域で感染者数が過去最大で増え続けている現在、オンタリオ州全体でロックダウンが行わ れ、オンタリオ南部の学校では1月は全クラスがオン ライン授業で開始することが決定しました。ワクチン摂取が開始され明るい兆しも見えてきましたが、収束までは各自のもう一踏ん張りが求められています。私 たちも、家庭内外で得られるサポートに感謝して、以前の経験を活かし、成長を見せている子どもたちと協力しながら、乗り越えて行きたいと思います。




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