リレー随筆


COVID-19非常事態宣言期間のトロントにて
Finance Manager, Community Living Toronto
増田 朗子


今日は5月末日。3月半ばのあの日から、暮らしが、世界が一変した。

WHOがパンデミック宣言を出す前日、ヨーロッパから帰国した同僚が、「少し具合が悪い」とつぶやいたとたん、速攻で帰宅命令が出た。それが私にとってのCOVID-19の第一日目だった。
 
3月11日:パンデミック宣言。州政府から資金を受けて福祉サービス・介護をGTA全域に提供する我社であるが、フロントラインスタッフ以外は全員、在宅勤務令が出る。

3月14日:在宅勤務が長くなりそうなので、夫と二人で使えるオフィスデスクをIKEAへ買いに行く。マスクもせずに。今思うと無謀だった。

3 月16日~22日:オンタリオ州緊急事態宣言発令。フロントラインスタッフ不足が懸念されるため、インセンティブ提供など対応策についてのバーチャル会議 が続き、州からの限られた資金でいくらまで給与に上乗せできるか、どの職種にどれほどの期間提供できるかなどの試算であっという間に一週間が過ぎる。

肩 こり解消に行っているマッサージクリニックから休業の連絡とともに、20%OFFでギフトカード販売のメールが来る。これはお得とがっつり購入したけれ ど、閉鎖が終わったときにこのクリニックが倒産している可能性に突然気づき、愕然とした。観光、飲食業界のレイオフのニュースが相次ぐが、友人の会社でも 実際起こっていると聞いて、現実感が増す。

3月23日:オンタリオ州で、不可欠インフラ以外の閉鎖命令が出る。何が不可欠なのかは言及されず。見慣れたQueen Street Westがゴーストタウンと化している写真を友人からもらい、ショックを受ける。

3月24日:一日遅れで、詳細が州政府から発表される。我社のサービスは業務継続が決定する。

3月25日~4月6日:日本の家族・友人と頻繁にメッセージのやり取りをする。日本では通勤、外食などほぼ以前通りという。こちらとのあまりの温度差に、日本で爆発的感染がおきるのではという不安で、取りつかれたようにニュースを読みあさる。

新年度に予定されていたプロジェクトを全て保留、パンデミック対応にシフトする決断が出され、予算組み直し等で残業になるが、仕事で忙しい間はニュースを忘れられるのが本当に救いになった。

4月7日:日本もついに緊急事態宣言。少しほっとした。

4月半ば:オンタリオの宣言から一か月。マスクをしている人が急増し た。閉鎖しているTrailや公園が多いが、アクセスできるところを探しては運動不足解消に散歩をするこの頃。トロント市内にこんなに自然を満喫できると ころが、あちこちに隠れていたなんて!以前は見過ごしていたであろう野草の花があちこちで咲き始めたのに気づき、少し明るい気分になれた。

世界各地で野生動物が人間の生活区域へ出現しているとのニュース、トロントでもDVPの脇で鹿を発見!

トロント市内散歩で見つけた野草の花の数々



月 末:在宅勤務のなか、毎日がとぶように過ぎていく。各国、各州で業務再開の計画、実行が始まった。3月半ばからの医療崩壊、工場や介護施設での集団感染な どの生々しいニュースの数々が、悪夢かサイファイ映画で見たことのような非現実的感覚におちいることがある。何年か経って2020年の春を思い返すとき、 何を思うのだろうか。




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